SPECIAL ISSUEMUSIC
竹内夢、『ゴースト』へ懸ける思い

9年続ける“うたのおねえさん”と 夢のグランドミュージカル出演の間で
8月8日より上演されるミュージカル『ゴースト』で、ヒロイン・モリー役に大抜擢された竹内夢。
本作は1990年に公開された映画『ゴースト/ニューヨークの幻』を基に、ミュージカル版として誕生し、ウエスト・エンド、ブロードウェイから世界中を席巻。日本では2018年に日本オリジナル演出版として日本初演され、2021年に再演。そして5年の時を経て、再び上演されることとなった。主演サム役の浦井健治は初演再演からの続投。突然恋人のサムの命を奪われるモリー役にはWキャストとして元宝塚歌劇団のトップ娘役の星風まどかと竹内夢が初参加することとなった。
NHK Eテレで9年続けるうたのおねえさんを「天職」、グランドミュージカルへの出演を「夢」だと話す竹内。「誰も両立したことがないのであれば、自分がやりたい!」と見せる笑顔には、太陽のようなパワーが満ち溢れていた。取材が行われたのは稽古も中盤に差し掛かった7月上旬。稽古場のカンパニーの様子、竹内の思いを聞くほどに、その視線の先に見えているものを舞台で確かめたくなった。
取材・文/俵本美奈
楽しいと悲しいが交差する稽古場
──いよいよお稽古が始まって、いかがですか?
竹内 今で中盤くらいなのですが、すごく楽しいです。すごく悲しい役(モリー)を演じているので、すごく悲しいんだけど、すごく楽しくて。悲しいと楽しいの感情を行き来する、不思議な感覚です。
──“楽しい”は、演じる楽しさですか?
竹内 そうです。演出家のダレンが本当にいい人で、“どんな表現をしても、あなたの表現は間違いじゃない”と私たちを包み込んでくれるから、私たちも自信を持って演じることができるんです。私は自分の表現に自信がなく、“これでいいのかな”とか“この感情は間違いなのかな”とか思ってしまうのですが、例えば私が「曲に入り込めずに空っぽになってしまった」と言っても、「その表現もいいんだよ」と認めてくれたうえで新しい提案もしてくださるので、“いろいろ試してみよう”という気持ちになれる、とても有意義な稽古場です。
──だから挑戦が怖くないんですね。
竹内 どんなことをしても間違っていないんだと、自分を認めてあげられる稽古場で、本当にすごいなと思います。「あなたのことをリスペクトしているよ」といったことを毎日言ってくれて、「愛情のダレン」言われている意味がわかりました。

──お稽古場の雰囲気自体が、温かい空気になりますね。
竹内 そうなんです。誰かが誕生日だったりしたら、制作さんがアイスをたくさん用意してくれたり、辛い作品だからこそ、楽しくいられるように意識してくれているところがあります。あとはみんながグミをいっぱい持ってきてくれます(笑)。
──それは竹内さんがお好きだからですか?
竹内 最初はWキャストの(星風)まどかちゃんと私のふたりでおすすめのグミの話をしながら机の上に5つくらいグミの袋を置いていたんです。するとカール役の太田基裕さんが「やっぱりヒロインの機嫌を取らなきゃ」ってどっさりグミを持ってきてくれて、そこからみんなが次々と持ってきてくれて、どんどん増えました。みなさん優しいですね。
──Wキャストの星風さんから演技の面で刺激を受ける部分はありますか?
竹内 刺激を受ける部分はたくさんありますし、モリーの表現を引っ張ってもらっています。まどかちゃんの表現は、嘘がないんです。少しでも違うなと思ったことはすべて伝えて一つひとつ解決して進めていく姿勢が、本当にすごいなと思います。性格はよく似ていて、会ってまだ1カ月ほどなのですが、「もう半年くらい仲がいい関係みたいな気がするね」と先日話していたところです。
──おふたりの間で役の解釈が違う部分はありますか?
竹内 ディスカッションの時間をたくさん設けてくださっていて、ダレン対モリー、ダレン対メインキャスト、ダレン対カンパニーなど、たくさん話す機会があるのですが、まどかちゃんとは役の解釈については物語に書かれていないところまでよく似ているんです。ただこれまで通ってきた道が違うから表現が変わってくる部分があって、これがWキャストの面白さだなと思っています。
──ほかのキャストの方々の演技はいかがですか?
竹内 カール役のおふたりは演技が全然違って、それぞれのカールの解釈があるので、例えば手帳をモリーに渡しに来るタイミングが違ったりして、モリーも自然とその演技に巻き込まれてお芝居が変わってきます。Wキャスト相手に舞台をするのが初めてなので、それがすごく新鮮ですね。逆に浦井(健治)さんは、まどかちゃん演じるモリーと私が演じるモリーに対して演技が少し違うので、それもそれぞれの印象や性格に合わせて変えておられるんだろうなと思います。

──そこが観る側の醍醐味でもあり、演じるみなさんの醍醐味でもあるんですね。今作の見どころについても聞かせていただけますか。
竹内 モリーを追うと悲しい物語なのですが、オダ・メイとサムの掛け合いは、ミュージカルでは映画よりもコミカルに演じられていて、お客さんの心が緩む瞬間でもあるから、楽しみにしていてほしいなと思います。もりくみ(森公美子)さんも、その場の浦井さんとのセッションを楽しんでおられるから、すごく面白くって。笑っちゃいけないところで私も笑っちゃったりしています(笑)。
──悲しい物語だからこそ、気持ちが救われますね。
竹内 あと、たくさん出てくるゴーストそれぞれに、ゴーストになった背景やなぜこの世界にとどまっているかといったストーリーがあるんです。衣装のジェームズがディスカッションの場で、例えば「この野球のユニフォームを着ているゴーストにはこんな理由があるんだよ」とか、「病院のゴーストは奥さんがまだここにいて、迎えてあげたいと思っている」とか話してくださって。なかには楽観的に捉えているゴーストもいたり(笑)。生きている人間と生きていないゴースト、でもどちらも魂がそこにあるみたいなところはダレンが注意深くこだわっている部分でもあるので、ゴーストの生き方…? 死に方…? 存在の仕方はとても丁寧に描かれていると思います。そしてみんな歌がうまい! すごくきれい! 曲がいい! 見どころはたくさんあり過ぎて、話しきれないですね!
