CINEMA
素敵に輝く女性たちを描いた映画

自分の物語を書く、常識を打ち破る これが私の生きる道、女性たちの物語
自分の物語を書くことで自己解放していく3人の女性の物語に、日本で初めてハラスメントにNOを突きつけた女性たちの姿に着想を得た物語。素敵に輝く女性たちに勇気をもらえる、2本の新作映画を紹介する。

沖田修一監督、長編デビューから20年 3人の“さとこ”たちの自己解放の物語
『南極料理人』(2009)、『キツツキと雨』(2011)、『横道世之介』(2012)、『さかなのこ』(2022)など、プッと吹き出さずにはいられない、どこか可笑しくてキュートな人間模様をあたたかな眼差しで描き続けてきた沖田修一。長編映画監督デビューから20年という節目の年に、監督と脚本を担って完全オリジナルの新作を送り出す。
初めての恋を持て余し、妄想が暴走していく15 歳の聡子。不倫も仕事もスランプ気味で迷走中の映画配給会社勤務、35歳の沙都子。子育てが一段落し、久々の自分時間で夢に目覚めた55歳の里子。年齢も育った環境も異なる3人の“さとこ”たちが“自分の物語”を書き始め、その人生が少しずつ交差していくさまを描いていく。
35歳の沙都子に有村架純、55歳の里子に石田ひかり、15歳の聡子にオーディションを経て約300人の候補者の中から選ばれた新星・姫野花春。個性的でありながら、どこか重なる3人の女性たちを、それぞれキュートにコミカルに演じている。
メインスタッフにも、撮影・芦澤明子、照明・菰田大輔、美術・安宅紀史ら、沖田修一監督作品を長年支えてきた一流の職人たちが集結。さらに沖田監督たっての希望で折坂悠太と柴田聡子が主題歌を担当。柴田は劇伴も手がけ、奇しくも4人目の“さとこ”として、やさしさとスパイスが混ざり合う音を生み出し、3人の“さとこ”の人生に寄り添っている。
3人の“さとこ”たちがいつしか同一人物に見えてくる独特の物語構成や、韓国ドラマや小説世界といった遊び心満載の劇中作品にも注目を。
point of view
世代の違う3人の“さとこ”たちを描いているが、同じ名前を持つ3人の女性たちによる友情物語、というものではない。“さとこ”たちはそれぞれの人生を歩み、それぞれ災難に遭ったり、運命的な出来事に直面したりする。一方で共通点もある。それは、人生のままならなさと格闘中ということ、そして、自分の物語を書こうとしていることだ。3人の“さとこ”たちの物語は微妙に影響し合い、いつの間にか、ひとりの女性の物語を観ているかのように錯覚してしまう。まるで、メビウスの輪に迷い込んだかのように。沖田監督作としては新鮮な構成で、観ながら軽く惑いつつ、どこか謎解きをするような楽しさもあり、深掘りしたくなるような作品に仕上がっている。
そして何より、3人の“さとこ”たちを好きにならずにはいられない。時にバタつき、時に突っ走り、時にしれっとやり過ごしながら、自分の物語を書くことで自己解放し、人生の決着をつけていく“さとこ”たち。その奮闘ぶりをニンマリしながら見守るうちに、観ているこちらもなんだか勇気づけられるはず。自由でみっともなくて愛おしい、3人の“さとこ”たちによる人生賛歌がここに。

『さとこはいつも』
https://happinet-phantom.com/satoko/
2026年/日本/139分
| 監督・脚本 | 沖田修一 |
|---|---|
| 出演 | 有村架純 石田ひかり 姫野花春 ほか |
| 配給 | ハピネットファントム・スタジオ |
※9月18日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
©2026「さとこはいつも」製作委員会

100%負けると言われたハラスメント裁判 勇気ある最初の一歩が、世界を変える
ディスコでミラーボールがきらめき、日本が好景気に沸いたバブル経済絶頂期。この時代、日本で初めて提訴された「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」に着想を得て、社会の“常識”や“ルール”に物申し、新たな未来を切り拓こうとする女性たちの姿を描き出す。
監督を務めるのは、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)など、社会的なテーマとエンタテインメント性を兼ね備えた作品に定評がある前田哲。困った人を放っておけず、お金にならない案件ばかり引き受けるお人好しでありながら、強い信念を胸に立ち上がる弁護士・朝日道子役に綾瀬はるか。上司からの執拗な嫌がらせに抗おうとする上原恵役にファーストサマーウイカ。朝日の事務所で働く新人弁護士・藤野栞役に松本穂香。さらに、峯村リエ、山田真歩、工藤阿須加、水川かたまり(空気階段)、鈴鹿央士、木村多江、筒井道隆らが裁判のキーパーソンとなる面々を演じ、物語を盛り上げていく。
100%負けると言われた裁判で、日本初の勝訴を掴み取ることはできるのか──。強い思いを胸に立ち上がった女性たちが一歩踏み出す勇気をくれる、スカッと痛快なリーガル・エンタテインメントが誕生した。
point of view
ハラスメントは問題であると、日本で初めて声を上げた実在の女性たちに着想を得て作られた本作。いわゆるOLが“結婚するまでの腰掛け”と揶揄されていた時代に、女性であるがゆえに理不尽に貶められ、キャリアを絶たれたひとりの女性は、勇気を振り絞って声を上げる。そんな女性の尊厳を取り戻そうと、ある女性弁護士と支援者たちは奮闘する。
綾瀬はるかが表現する朝日道子弁護士の人間味と愛嬌と力強さ、ファーストサマーウイカが体現する原告・上原恵の傷ついた心と覚悟。ふたりを取り巻く女性弁護士たちや女性支援者たちもそれぞれの思いを胸に戦い続ける。彼女たちの前に立ちはだかるのは、いわゆる社会の“常識”だ。「そういうものだから」とされていたものに対し、「それはおかしい」と“初めて”声を上げるのに、どれほどの勇気が必要だったことか、どれほど大きな犠牲を払ったことか。改めて、先人たちに頭が下がる思いだ。
30年以上経った今の世の中はどうだろう。だいぶ変わってはきたものの、“ハラスメント”は今なお、社会に巣食う問題として人々を苦しめている。まずは、女性たちの物語に泣いて笑って、たっぷり楽しもう。鑑賞後は自然と、今の社会を見つめ直すことになるはずだ。

『ファーストボイス』
https://movies.shochiku.co.jp/firstvoicemovie/
2026年/日本/105分
| 監督 | 前田 哲 |
|---|---|
| 出演 | 綾瀬はるか ファーストサマーウイカ 松本穂香 ほか |
| 配給 | 松竹/ワーナー・ブラザース映画 |
※10月2日(金)より全国公開
©2026「ファーストボイス」製作委員会
