CINEMASPECIAL ISSUE
上田誠監督×伊藤万理華×井之脇海
自分しか作らないだろう映画を作りたい
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──上田さんは伊藤さんと井之脇さんの俳優としての魅力をどう感じましたか。
上田 万理華さんがバレエをやっていたというのは知っていて。バレエは正確性を求められるジャンルという印象がありますけど、伊藤さんが出ている映像作品を観ると、正確にやっているというよりは自然体で。その瞬間出てくるものを、要は一回性を大事にされている印象があったんです。正確さと一回性と、そのバランスはどうしているのかなと思いながらリプリーでご一緒することになって。リプリーは本当に大変な劇で、万理華さんはすごく努力して全ステージ乗りきってくださった。鉄人のように正確無比にやってくださった感じがありました。ただ、僕は映像作品で観る万理華さんの感じ、プランを作り込んでやるというより、その時々の空気に身を委ねる感じも好きで、それを今回の映画では観たかったんです。実際に今回の映画の万理華さんは、とても自然に正確性と一回性の塩梅をとってくださったなと。僕は万理華さんのことを勝手にギミックエンヌと言っているんですけど。
伊藤 ギミックエンヌですか。
上田 ギミックがたくさんある作品の撮影はものすごく大変で、我慢強さと正確性が求められるんですよ。万理華さんはそれに耐えられる上、一回性にも身を委ねてくださる。登場人物が生きていないとこの映画はつまらないですから。“シナリオが決まっている中でいかに人物が躍動するのか”を描きたかったので、万理華さんにはそこの部分を強くお願いした気がします。海さんに関しては、映画オタクという印象を持っていました。こだわって作り込んでいく人という印象があり、リプリーを通してもその印象は変わらなかったですね。ただ同時に、海さんは意外とエモいんだなと。リプリーの千秋楽の挨拶でもエモいことを言っていて、“あ、エモい”と思ったんですけど。冷血人間と思っていたらエモかった、みたいな(笑)。
井之脇 なんか恥ずかしいです(笑)。
上田 カズマのパートでは海さんと僕とで協力してこだわりの作り込みをしつつ、カズマと一緒にバンドをやっているミコシバ(金丸慎太郎)がふたりで話す場面でどう感情を積み上げていくのか、そこは海さんに委ねたところがあって。実はエモい海さんだからこそ委ねられたというか。
井之脇 トリウッドの中でカズマとミコシバが話すところは完全に委ねてくださいましたね。公園でふたり話すところは、「もうちょっとエモくていい」と言われたのを覚えています。
上田 そういう海さんを僕が個人的に見たかったので。そこを全開に出してくださって、うれしかったです。

──伊藤さん、井之脇さんの印象的なシーンは?
伊藤 特に後半の超展開が大好きです。撮影していて、こんなにワクワクしたことはないというぐらいでした。普段は経験できないような超展開をみんなで本気になり、かつ楽しみながら1カットずつ撮っていき、ひとつのものを作っていく感じが最高に楽しかったです。ものづくりの中でもいちばん楽しいところだと思います。
井之脇 上田さんが書かれたリプリーの企画書に、『フィクショナルな世界を、演じ抜けば、それが突き抜けたコメディになる』とあり、それを読んで素晴らしいと思ったんです。リプリーに続いて今回の映画で上田さんとご一緒させてもらって、本当にそうだなと思いました。なんでもありの超展開になってから、今井(隆文)さんが演じるチンバラが急に説明台詞をたたみかけるくだりがあるんですけど。
伊藤 あそこ最高だった(笑)。
井之脇 今井さんは超展開な説明台詞を全力で、本気でやるんです。あの説明台詞を笑いに変えるって本当にすごいと思います。それこそ、上田さんの世界を信じてみんなが演じ抜いたということだなと思って。
伊藤 “なんでもあり”をできるのが映画なのだと、今作を通じて再認識しました。また上田さんの作品では、“なんでもあり”は日常にも潜んでいるのかもしれない、と思わせてくれるところが素敵だなと思います。
上田 こういう物語は“乗っかりきる”というのが大事で。みんながちゃんと全体重をかけて乗っかりきってくれたおかげです。
──上田さんにとって映画とはどんなものですか。
上田 僕は演劇人なので、映画の世界では外様です。でもだからこそ、自分がやれる映画をやらないと、やる意味はあまりないというか。面白い映画を撮れる人たちはたくさんいますけど、自分しか掘らないだろうな、という領域はまだあるような気がしていて。今回も、僕が掘らなかったら誰も掘ろうとしないだろうという領域を掘ってみたいと思った。そんな僕の企みに共鳴してくださり、乗っかってくださる人が意外と多かった。それが今回うれしかったことです。
上田 誠(うえだ まこと)
1979年生まれ、京都府出身。ヨーロッパ企画代表として本公演の脚本・演出を担当。外部の舞台、映画、アニメーション、ドラマの脚本も手がける。近作に脚本・演出を務めた舞台『四畳半神話大系』(2026)。脚本を手がけた映画『高校生家族』が2027年1月8日(金)より公開
伊藤万理華(いとう まりか)
1996年生まれ、大阪府出身。主な出演作に映画『サマーフィルムにのって』(2020)、『チャチャ』(2024)、『架空の犬と嘘をつく猫』(2025)、舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』(2025)、ドラマ『パーセント』(2024)、『いつか、無重力の宙(そら)で』(2025)『ミッドナイトタクシー』(2026)など
井之脇 海(いのわき かい)
1995年生まれ、神奈川県出身。現在は舞台『レディエント・バーミン Radiant Vermin』が上演中。8月7日(金)より映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が公開。9月21日(月・祝)より舞台『リア王 -King Lear-』の上演が始まるなど待機作多数

『君は映画』
https://www.europe-kikaku.com/kimiei/
2026年/日本/68分
| 監督・脚本 | 上田 誠 |
|---|---|
| 出演 | 伊藤万理華 井之脇 海 ほか |
| 配給 | TOHO NEXT トリウッド |
※6月19日(金)より全国公開
©ヨーロッパ企画/トリウッド 2026

