CINEMASPECIAL ISSUE
夏はやっぱり、ホラー映画

愛、コンビニ、犬、儀式、スマホ 真夏に観たい、最新ホラー映画5選
豊かな発想力と確かな演出力が相まったホラーに、視点やアイテムを工夫して魅せるホラー。蒸し暑い屋外から冷房の効いた映画館へと避難し、“ホラー映画で肝を冷やす”。そんな真夏の1日を過ごしてみては。
発想力と演出力を兼ね備えた最新ホラー
若き異才が放つ新時代のホラー 最愛が“災愛”へと転じる悪夢の日々

第50回トロント国際映画祭をはじめ、世界各地の映画祭で話題となり、SNS上では予告映像の再生回数が1,700万超え。勢いそのままに公開されると、わずか75万米ドルの製作費ながら全世界興行収入は4億米ドルを突破(2026年7月現在)。今なお快進撃を続けており、口コミ主導型ヒットの象徴的成功例として注目を集めている。
本作で長編映画監督デビューを果たしたのは、新鋭カリー・バーカー。YouTube でスケッチ・コメディ動画を配信して多くのフォロワーを獲得し、ファウンド・フッテージ形式のホラー作品 『Milk & Serial』(2024)では 200 万を超える再生回数を記録。その手腕は、低予算ホラー映画界のカリスマ、ジェイソン・ブラムにも絶賛されている。
本作が描くのは、内向的な青年ベアと、彼が思いを寄せる女性ニッキーが辿る衝撃の道のり。主人公ベアをマイケル・ジョンストン、ニッキーをインディ・ナヴァレッテと、注目の若手俳優たちが演じ、高い評価を得ている。とりわけ、ニッキー役のインディ・ナヴァレッテのパフォーマンスは圧巻だ。
愛されたいという、誰もが持つ願いが、甘美さと狂気が表裏一体となった恐怖を生み出していく。刺激的でセンセーショナルなネオ・ロマンティック・ホラーが誕生した。

きっかけは、内向的な青年が思いを寄せる女性との距離を縮めるため、願いを叶えると言われる“ワン・ウィッシュ・ウィロー”のおまじないに手を出したこと。“彼女が僕を愛してくれますように”的な、よくあるおまじないだ。その願いが本当に叶ってしまったら──? 詳細は控えるが、そこには、想像の斜め上を行く展開が待ち受けている。
物語の内容を明かさずに本作の注目点を伝えならば、第一にカリー・バーカー監督のセンスが挙げられる。予定調和のない脚本、現代的でリアルな会話、意表を突きながらもスタイリッシュなカメラワーク、ロマンと恐怖を増幅させる音楽と音響。アイディアだけでは終わらず的確に具現化できる、腕利きの監督だとしっかり証明している。
ニッキー役のインディ・ナヴァレッテの演技も見ものだ。声色や表情を絶妙に使いこなし、時に振りきり、時に揺らぎながら、愛というもののひとつの真実を体現。観たことを一生忘れられない、強烈なヒロイン像を結んでいる。
オンラインカルチャー発の新たな才能、カリー・バーカー。その長編映画監督デビュー作は、ユニークな発想と確かな演出力の両方を備え、異彩を放っている。今“キテる”監督の、ヤバ過ぎる1本に熱狂したい。
『オブセッション 災愛』
https://www.universalpictures.jp/micro/obsaiai
2025年/アメリカ/109分/R15+
| 監督・脚本・編集 | カリー・バーカー |
|---|---|
| 出演 | マイケル・ジョンストン インディ・ナヴァレッテ クーパー・トムリンソン メーガン・ローレス ほか |
| 配給 | パルコ、ユニバーサル映画 |
※7月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
©2026 Focus Features LLC.
無限の空間“コンビニ”に飲み込まれる 88分間のコンビニエンス・ホラー

2022年に設立され、わずか数年の間にロッテルダム国際映画祭やクレルモン=フェラン国際短編映画祭、サンフランシスコ国際映画祭など、世界各地の映画祭に選ばれる作品を次々と生み出してきた映画レーベル「NOTHING NEW」。その実写長編映画第1作は、CMディレクターとしてキャリアを積み、短編『VOID』(2023)で注目された岩崎裕介が監督・脚本を務めるホラー映画。第 76 回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に正式出品され、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞している。
物語の舞台は、東京の片隅にあるコンビニ<エニーマート倉冨町7丁目店>。そのルーティン化された小さな社会で小さな歪みが生じたのをきっかけに、日常が静かに崩壊していくさまを描き出す。主人公のコンビニ店員・堺に染谷将太、新人アルバイトの小河に唐田えりか、オーナーに西村まさ彦、堺の同僚・室田にお笑いコンビ・令和ロマンのくるまら、多彩なキャストにも注目を。

コンビニはとても便利な場所だ。同時に、今の日本社会の映し鏡とも言える。働いている人たち、コンビニに寄って必要なものを買っていく人たち。確かにそこには“人”がいる。にもかかわらず、無機質な場所という印象を抱いている人もいるだろう。岩崎裕介監督はコンビニを、“均質化された日本社会のミクロコスモス”として捉えた。そして、コンビニという空間の無機質さを極限まで純化することで、新たな恐怖体験を提供している。テーマは明確だが、それを声高に叫んだりはしない。何気なくも本質を突いた言葉、巧妙に配した小道具や、不協和音やノイズを生かしたダークアンビエントな劇伴をもって、自然にテーマを浮かび上がらせている。
社会批評的ホラーと表現するのがしっくりくる1本だ。といっても、決して難解な映画ではない。ストーリーがどう転がっていくのか予測できずにずっと新鮮に楽しめるし、ブラックなユーモアがにじむ会話もクセになる。多くの現代人が抱いているだろう違和感を具現化したら、面白いホラーになった。そういうことなのかもしれない。
『チルド』
https://nothingnew.film/chilled_anymart/
2026年/日本/88分/R15+
| 監督・脚本 | 岩崎裕介 |
|---|---|
| 出演 | 染谷将太 唐田えりか 西村まさ彦 くるま(令和ロマン) 長島竜也 ほか |
| 配給 | NOTHING NEW |
※7月17日(金)よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田ほかにて全国公開
©『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)
