CINEMASPECIAL ISSUE
上田誠監督×伊藤万理華×井之脇海

シネマティック・マルチバースな超展開 上田誠&伊藤万理華&井之脇海が企んだ 新たなギミック映画『君は映画』の舞台裏
劇団・ヨーロッパ企画とミニシアター「下北沢トリウッド」がタッグを組んだ『ドロステのはてで僕ら』(2020)と『リバー、流れないでよ』(2023)に続く、オリジナル長編映画『君は映画』が6月19日(金)より公開される。脚本を書き下ろしただけではなく、映画監督デビューを果たしたのはヨーロッパ企画代表の上田誠。昨年上演された上田誠脚本・演出の舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』に続き、伊藤万理華と井之脇海が主演を務める。
下北沢に実在するビル「シェルボ下北沢」にあるミニシアター「下北沢トリウッド」、バー「グッドヘブンズ」、焼き鳥屋「三日月ロック」、古着屋「CHICAGO」などを主舞台に、“映画と映画が双方向で関連し合う”、いわばシネマティック・マルチバースな物語が展開される本作。新たなギミック映画を企んだ上田誠と、その企みに全力で乗っかった伊藤万理華と井之脇海に話を聞いた。
写真:小田原リエ 取材・文:佐藤ちほ 【伊藤万理華】スタイリング:和田ミリ ヘアスタイリング&メイクアップ:kika 衣装協力:タンクトップ 22,000円 スカート 33,000円(以上、すべてkotohayokozawa / ON TOKYO SHOWROOM/TEL03-6427-1640) ピアス 29,700円(ete/TEL0120-10-6616) イヤーカフ 13,200円 リング 28,600円(以上、すべてJouete/TEL0120-10-6616) そのほか、スタイリスト私物 【井之脇 海】スタイリング:坂上真一(白山事務所) ヘアスタイリング&メイクアップ:新宮利彦(VRAI)
ものづくりする人たちの物語
──みなさんは舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』(2025)でもタッグを組んでいますが、映画『君は映画』の企画は『リプリー、あいにくの宇宙ね』と関連して立ち上げられたのでしょうか。
上田 『リプリー、あいにくの宇宙ね』(以下:リプリー)の本番中、去年の5月頃に急遽、「映画を作ろう」ということになったんですけど、舞台の流れからの企画だったわけではなく、別で立ち上がった企画でした。実際いつだったら映画が撮れるのかと探る中で、同じ年の9月が空いているぞと。台本も何もない中、まず撮影時期と場所が先に決まった形ですね。『ドロステのはてで僕ら』と『リバー、流れないでよ』で組んできた下北沢のトリウッドで撮影できることになり、“それなら、映画を挟んでふたりの話にしたい”と。そこまで考え、“あ、今めっちゃいいふたりとやっている”と気づきまして。
伊藤・井之脇 気づいたんですね(笑)。
上田 そう(笑)。それでおふたりにオファーした、という流れです。ただ、リプリーも大きかったですね。リプリーを一緒にやっていく中でおふたりを非常に信頼していたので。
──おふたりの出演が決まってから脚本を書いたということですよね。となると、劇作家のマドカとバンドマンのカズマは当て書きですか。
上田 めっちゃ当て書きです。
──当て書きされたおふたりとしてはいかがでしょう。伊藤さんはマドカの人物像にご自身と通じるものを見出すことはありましたか。
伊藤 マドカは私というよりも上田さんご自身なのかなと感じるところがあって。脚本を読みながら、マドカを通して上田さんが伝えたいことを伝えているように思えました。なので、上田さんが演劇をやられていく中でどんな体験をされてきたのか、どんなことを経て今のヨーロッパ企画になったのかなど、そういったお話を聞くことがマドカという役へのアプローチになっていった気がします。自分と通じるものがあると思えたのは、マドカのものづくりに対する思いです。私自身もマドカと同じように、何かを作ることや、何かを作る人たちに好奇心を刺激されますし、マドカがある場面で“自分の劇団に所属するメンバーのために命懸けで脚本を書いている”というようなことを言うのですが、私も近いことを考えたことがあるなと思いました。
上田 万理華さんがチームでものづくりしているということは、リプリーでご一緒した時に聞いていたんです。その、万理華さんのチームを率いる面をなんとなく膨らませてマドカを書いた感じがします。そう言えば、万理華さんには映画に出てくるTシャツのデザインにもご協力いただいて。万理華さんにイラストを描いてもらい、それをTシャツにプリントしたいと思って相談したんですけど。
伊藤 クランクイン前、ギリギリのタイミングで急に、「1週間後にデザイン案お願いします」と(笑)。
上田 すいません(笑)。
伊藤 その時、私は別の作品に入っていて地方に行っていたんです。“え、今、1週間後って無理じゃん”と思いましたが、とにかく練りに練ってみました。その結果、私自身が描いたイラストでは違うような気がして。じゃあ、どうしたらいいのかなと考えるうち、“あ、海君”と思い出しました。リプリーの時、お互いの趣味の話をする中で海君が写真を撮る人だと知って。あと、リプリーの時に私が海君にTシャツを贈ったら、海君も私にTシャツを贈り返してくれたことも思い出しました。海君が自分で撮った写真をプリントしたオリジナルのTシャツだったんですけど。
井之脇 なんか恥ずかしい(笑)。
伊藤 その時も「恥ずかしい」と言いながらプレゼントしてくれました(笑)。映画の中に出てくるTシャツはマドカだけではなくカズマも惹かれたもの、という設定です。それもあり、海君にも携わってもらえたらと思ったんです。それで海君に事情を話し、これまで撮った写真を送ってほしいとお願いしたところ、すぐアルバムにして送ってくれたんです。その中から選んだ写真を私のおでこに投影しつつ、できれば海君の手も入れて写真を撮って、それをTシャツにプリントしたいなと。海君に空いている日がないか聞いてみたらたまたまあって、刺繍担当の友人と撮影担当の友人、海君と私の4人が集まって写真撮影をすることになりました。
上田 何気なくTシャツのイラストを発注したらビッグプロジェクトになった(笑)。
伊藤・井之脇 本当に(笑)。
上田 すごい映画ですよ。クランクイン前にものづくりが過ぎる(笑)。

──井之脇さんは、当て書きされたカズマの人物像に自分と通じるものを見出すことはありましたか。
井之脇 上田さんは当て書きだとおっしゃいましたけど、上田さんの井之脇海像ってほかの人が持つ井之脇海像とは違うんです(笑)。上田さんに「今回はハードボイルドなので」と言われた時には、「え、ハードボイルドですか……?」みたいな(笑)。
上田 これまでやったことのないような役を当て書きされて(笑)。
井之脇 はい(笑)。でも、ありがたかったです。僕にハードボイルドな役を当て書きしてくださるということは、自分でも気づかないハードボイルドさがあるのかもしれないと思えたので(笑)。自分と通じるものがあると感じたのは、やっぱり僕もものづくりする人としての部分ですね。僕も自主映画を作ったりしていて、その中でうまくいかないことはたくさんありました。カズマがバンド活動をする中で抱えている葛藤はわかるなと思いながら演じました。

