CINEMASPECIAL ISSUE
スリリングでエモい“極限”映画

追い込まれた時、どう行動するのか 極限状態に置かれた人間を描く映画
砂漠、学校、内戦下のシリア、荒廃した近未来のアメリカ……。それぞれの場所で極限状態へと追い込まれる人間を描いた映画が続々公開へ。アイディア溢れるストーリーテリングに仰天し、絶望の先にある希望に胸を打たれる4本の“極限”映画を紹介する。
あまりの独創性に仰天
極上の音響と映像美、衝撃の映画体験 砂漠の真ん中、極限状態で試される人間

『ファイアー・ウィル・カム』(2019)を手がけたスペイン出身の俊英オリベル・ラシェが監督を務めるほか、サンティアゴ・フィジョールと共同で脚本も担当。砂漠のレイブパーティで失踪した娘を追う父ルイスと息子エステバンの旅の行方を、予定調和のないストーリーと脈打つダンスミュージックを融合させて描き出す。第78回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞するなど4冠を達成。さらに第98回アカデミー賞では国際長編映画賞と音響賞にノミネートされるなど映画各賞を席巻し、世界中の映画人、映画ファンから熱狂的に支持される傑作。スペイン出身の世界的名匠ペドロ・アルモドバルがプロデューサーに名を連ねていることも話題を呼んでいる。
タイトルの『シラート』とはアラビア語で“道”を意味する言葉。宗教的な意味においては、審判の日に天国と地獄の上に架けられる細い橋を象徴するとされる。娘を探す父親は息子と共にモロッコの山岳地帯から砂漠の奥地へ。砂漠の真ん中で人間たちは試されることになる。あっと驚く物語り方で生と死、人間という存在の本質を浮き彫りにする1本。予測不能×衝撃の映画体験がここに。

レイブパーティに参加したまま姿を消した娘を捜す父親、と聞いて想像したものとはまるで違う映画だ。入口からは想像できない出口へと連れていってくれる。次に何が起きるのか、その中で登場人物がどんな姿を見せるのか。これほど予測できない映画にはなかなかお目にかかれない。これまで数多くの映画を観てきて、さまざまな映画的手法・技法を知る人ほどショックを受け、感動を覚えるはず。発明レベルの独創的な物語り方と言っていい。
とりわけ、音の表現が印象的だ。時に耳をつんざき、時に体の奥深くまで響いてくる音響と音楽。絶えずリズムを刻み続け、脈打つような音に乗り、砂漠で極限状態に追い込まれた人間たちの恐怖、絶望、畏怖、祈りにも似た思いが響いてくる。そしてその“音”は、スピード感とスケール感、緊張感を兼ね備えた映像とも完璧に噛み合い、圧倒的な映画体験を提供してくれる。
事前に仕入れる情報量は少なければ少ないほどいい、という映画だ。ぜひ、まっさらな状態で映画館へ。鑑賞中は息を呑んでスクリーンに釘付けとなり、鑑賞後はしばらく放心状態に。新しい何かが生まれる瞬間を映画館で目撃したい。
『シラート』
http://transformer.co.jp/m/sirat
2025年/スペイン・フランス/115分/PG12
| 監督 | オリベル・ラシェ |
|---|---|
| 脚本 | オリベル・ラシェ サンティアゴ・フィジョール |
| 出演 | セルジ・ロペス ブルーノ・ヌニェス・アルホナ ほか |
| 配給 | トランスフォーマー |
※6月5日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国公開
©2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4
世界初!? 組体操が世界を救う SFサイコエンタテインメントが爆誕

商業映画デビュー作『みなに幸あれ』(2024)により世界中の映画祭で喝采を浴び、国内外でスマッシュヒットを記録した下津優太監督の劇場長編第2作。組体操という集団行動における人間の行動心理の根底にあるものを、コミカルかつシリアスに炙り出していく。家族に問題を抱える、引っ込み思案な高校生の主人公・愛を演じるのは山田杏奈。愛のクラスメイトであり、海外帰りで日本の学校の協調性を重んじる姿勢になじめない転校生の優を⻘木柚。不適な笑みを浮かべながら集団を導く校長をピエール瀧が演じる。
多様性が強調される今の時代に集団に埋没することの意味を問う、SFサイコエンタテインメントが爆誕。熱狂の果てに深く考えさせられること間違いない。

本作の構想をプロデューサーに説明しようとする時、下津優太監督の第一声は「組体操が襲ってきたら怖いと思うんですよ」だったという。“なんだ、それ!?”と思ったみなさん、ぜひ映画館へ。衝撃と歓喜がごちゃ混ぜになって体中を駆け巡り、やはり、“なんだ、これ!?”と思うはず。と同時に、“言葉ではうまく説明できないけれどすごいものを観た”という実感を得られるはずだ。
ちなみに、“迫り来る組体操”は日本体育大学の体操部と集団行動部の全面協力のもと、作り上げられている。生身の表現の迫力に勝るものはない。ひと目観たその瞬間、爆笑しつつ畏怖の念を抱くという、これまでにないリアクションをすることになった。
テーマも実は深い。突飛な展開に大いに驚かされ、笑わせられつつ、ハッとさせられる瞬間もたびたびあった。まさか、“迫り来る組体操”に現代社会の不条理さや問題を見出すことになるとは。それでもやはり、“なんだ、それ!?”と思っているみなさん、ぜひ映画館へ。問答無用で面白い1本に仕上がっている。
『NEW GROUP』
2026年/日本/82分/PG12
| 原案・監督 | 下津優太 |
|---|---|
| 脚本 | 下津優太 佐原百子 |
| 出演 | 山田杏奈 青木 柚 駒井 蓮 木下暖日 佐々木ありさ ロジャース歌乃 ピエール瀧 ほか |
| 配給 | KADOKAWA |
※6月12日(金)より全国公開
©2026映画「NEW GROUP」製作委員会
