CINEMASPECIAL ISSUE
深川麻衣出演『逃げろお嬢さん』
現場で生まれるものを大切に

──舞子の人物像や、康太と舞子の関係性について、撮影前に伊藤監督とそのイメージを共有する機会はありましたか。
深川 舞子の人物像に関しては、共通認識として持っていなければいけないことだけは撮影前にお話をしながらすり合わせていきました。例えば、アイドル時代に舞子が着ていた服の感じから、舞子はどんなアイドルだったのかなと監督とお話ししたり。今の舞子が自分で選んで着ている服の感じから、人物像を想像したり。衣装合わせの際の監督とのお話が、舞子の人物像を考える上でヒントになったという実感があります。ただ、康太と舞子の関係性については、そこまで監督とお話しすることはなかったです。そこは本当に現場で、お芝居を合わせてみて、でしたね。井口さんとも「ここはこういうシーンにしましょう」とか、「こう演じたいです」とか、具体的に話し合ったりはしなかったです。その場でお芝居を合わせた時生まれるものを大事にしたいなと思っていました。
──俳優としての井口さんはどんな印象でしたか。
深川 井口さんは監督と丁寧に話し合いながら役を作っていらして。おふたりでどんな話をされていたのか、その内容はわからないのですが、常にそうされていたのが印象に残っています。きっと、音楽の現場でもこんなふうに丁寧にものづくりされているんだろうなと。とても繊細に真摯にものづくりされる方、という印象です。
──クライマックスシーンの井口さんの演技は、とりわけ胸を打つものがありました。
深川 撮影の時は本当に井口さんに助けられました。康太の行動を舞子が見ている、というカットを撮影する時は、当然ながらカメラは舞子向きになっていて、康太のほうに向くことはありません。舞子向けのカットを撮影する時には、実際にその視線の先に康太がいなかったとしても大丈夫ではあるんです。私が舞子として目の前で起こっていることを想像して演じる、ということで成立はしますから。でも、井口さんは自分が映らないカットを撮影する時も、ずっと私の視線の先に立って演じ続けてくれて。私ひとりのためにその姿を見せてくださった。おかげで、とても気持ちを入れやすかったです。あのシーンは康太の不器用さとやさしさが詰まっているシーンだと思います。舞子も気持ちは決まっていたとは思いますが、いざとなったら揺らいでしまうことってあると思うんです。舞子は、あの康太の姿を見て本当の意味で覚悟ができたんだろうなって。これから先の舞子に対して少し希望を抱けるシーンでもあり、私もとても好きなシーンです。

