FLYING POSTMAN PRESS

笑える&泣ける“アンデッド”映画

配達人の地獄の一夜、父と娘の愛の物語
“アンデッド”ムービーの最前線へ

 普通の配達人の恐ろしくツイてない一夜を描いた1本に、ゾンビ娘を愛し抜く父親を描いたハートフルな1本。センスの良いユーモアや感動的な瞬間がちりばめられた、“アンデッド”ものの新作2本を紹介する。



ある医療品をラクーンシティの病院へ
普通の配達人が過ごす地獄のような一夜

 『WEAPONS/ウェポンズ』(2025)を手がけたザック・クレッガーが監督を務めるほか、シェイ・ハッテンと共に脚本も担い、自身もファンだというカプコンの人気サバイバルホラーゲームを完全新作映画として再構築。“もしゲーム『バイオハザード』の世界に放り込まれたらどうなるか?”をコンセプトに、“ある医療品”をラクーンシティに届ける仕事を引き受けたことから始まる、配達人のブライアンの地獄の一夜を映していく。

 主人公のブライアンを演じるのは、『WEAPONS/ウェポンズ』でザック・クレッガー作品を経験済みの俳優オースティン・エイブラムス。いつものシフト勤務のはずが、否応なしに壮絶なサバイバルを繰り広げることになる“普通の人”を人間味豊かに演じている。

 次々ととんでもない危機が迫り来る中、“普通の人”ができることはただひとつ──逃げることだけ。信じられない光景を目にし、信じられないものから追われる地獄のような90分。果たして主人公は無事に逃げられるのか、“ある医療品”を届けられるのか? 観る側も『バイオハザード』の世界に入り込んだかのような気分になれる、没入型の1本に仕上がっている。


point of view

 ミラ・ジョヴォヴィッチが主演を務めた映画『バイオハザード』シリーズ(2001~2016)の主人公は、悪の企業に戦いを挑む凜々しい女性だった。一方、ザック・クレッガーが手がけた本作の主人公は、どこにでもいる普通の男ブライアン。職業=配達人で、戦う訓練を受けたこともなければ、後ろ盾もない。恋人の思いがけない報告に動揺する姿には、大人になりきれていない未熟さも窺える。そんな普通の男が突然、人間が次々と“アンデッド”と化していく世界に放り込まれたらどうなるのか。経験も心の準備もまともな武器もないまま強制的に“プレイヤー”となったブライアンは、華麗な技でアンデッドたちを倒すなんてことはできない。むしろ、焦ってミスを連発したり、ボヤきまくったりするのだが、その様子が本作の見どころのひとつになっている。完全無欠のヒーローではなく、欠点だらけの人間らしい主人公だからこそ、リアクションの一つひとつが共感度満点だ。恐怖と衝撃の波状攻撃に心拍数が急上昇するだけではなく、主人公の人間性がにじみ出る言動にフッと笑ってしまう瞬間もたびたび。ザック・クレッガーのホラーとコメディの塩梅が見事だ。

 観る側が肩入れできる主人公はビジュアルや音楽と同じぐらい、本作の没入感を支える重要なピースに。ブライアンに親近感を抱きつつ展開に一喜一憂しているうちに、いつのまにか物語の深部へと至っていた。そんな感覚を味わうことになるはずだ。

『バイオハザード』

https://biomovie.jp

2026年/日本/94分/R15+

監督 ザック・クレッガー
脚本 ザック・クレッガー シェイ・ハッテン
出演 オースティン・エイブラムス ザック・チェリー カーリー・レイス ポール・ウォルター・ハウザー ほか
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

※10月9日(金)より全国公開

ゾンビとなった娘に父の愛は届くのか
家族の絆を描くハートフル・ムービー

 2025年に韓国で564万人の観客を動員し、同年の韓国映画No.1の興行収入を記録した大ヒット作。韓国発の縦型デジタルコミック「WEBTOON」として人気を博した漫画を原作に、『人質 韓国トップスター誘拐事件』(2021)などを手がけるピル・カムソンが監督を務めて映画化。ゾンビウィルスが蔓延する韓国を舞台に、最愛の娘がゾンビになってしまった父親の奮闘を描き出す。

 主人公の父親ジョンファンを演じるのは、『PILOT -人生のリフライト-』(2024)などに出演するチョ・ジョンソク。ゾンビになってしまった娘・スアに新星チェ・ユリ。父娘をサポートする祖母のバムスンに、名バイブレイヤーのイ・ジョンウン。ジョンファンの初恋の人で中学校教師、国家公認のゾンビハンターでもあるヨンファを、『パラサイト 半地下の家族』(2019)のチョ・ヨジョン。ジョンファンによる“ゾンビ娘”訓練に協力する親友のドンベを、映画にドラマにと幅広く活躍するユン・ギョンホ。個性と実力を併せ持ったキャスト陣が、父と娘の愛の物語を盛り立てていく。

 もしも最愛の娘が世界で最後のゾンビになってしまったら? そんな究極の問いを投げかけられた父親の選択と奮闘ぶりに泣き笑い必至。可笑しく愛おしい父と娘を応援したくなること間違いない。


point of view

 ゾンビを目の前にした時、人はどうするか。普通はゾンビをぶっ倒して生き延びようとするだろう。では、目の前にいるゾンビが最愛の存在だったら? 本作の主人公ジョンファンは最愛の娘スアがゾンビになるも、娘にわずかばかり人間の心が残っていることに気づき、ゾンビ撲滅をめざす世界から隠し通そうとする。“ゾンビ娘”を生活に溶け込ませるという、前代未聞のトレーニングを行いながら。

 情に厚く真っ直ぐな父親ジョンファンと、凶暴さとかわいらしさを併せ持つゾンビ娘のスア。そして、ある意味最強のおばあちゃん・バムスン、美しきゾンビハンターのヨンファ、気のいいジョンファンの親友ドンベ。父娘と彼らを取り巻く人々が過ごす日々はだいぶ変わってはいるが、娘がゾンビであるという事実以外は、“愛し合う家族と愉快な仲間たちの日々”と聞いてイメージするそのままだ。娘がゾンビになったとしても愛し抜く覚悟を決めたジョンファンの思いに周囲の人々も突き動かされ、愛の輪が広がっていく様子に心が動かされる。ゾンビを描きつつも、仕上がりは王道のハートフル・ムービー。笑って泣ける人情味豊かな1本が誕生した。

『世界で最後の愛しい娘!』

https://klockworx.com/movies/sekamusu

2025年/韓国/113分

監督 ピル・カムソン
出演 チョ・ジョンソク イ・ジョンウン チョ・ヨジョン ユン・ギョンホ チェ・ユリ ほか
配給 クロックワークス

※11月13日(金)より新宿バルト9ほかにて全国公開

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