CINEMASPECIAL ISSUE
深川麻衣出演『逃げろお嬢さん』

ファンと“推し”に起こった小さな奇跡 映画『逃げろお嬢さん』で元アイドル役 深川麻衣が振り返る“想像を超えた瞬間”
吉田修一の短編集「逃亡小説集」の一篇を原作に、伊藤ちひろが監督と脚本を担って映画化。自分の人生を支えてくれた“推し”を信じ抜くことで守ろうとしたある男の奇跡の一日を描いた映画『逃げろお嬢さん』が、10月2日(金)より公開中だ。
偶然“推し”と出会った康太を演じるのは、King Gnuのヴォーカル兼キーボードとして音楽ファンを魅了するのみならず、近年は俳優としても活躍する井口理。そんな康太の“推し”である元アイドルの鮎川舞子を演じるのは、乃木坂46の1期生として活躍し、卒業後は俳優として着実にキャリアを積み重ねてきた深川麻衣。康太と舞子の対話が多くを占める本作において、ふたりは静かながらも濃密な言葉を交わし、観客を引き込んでいく。
映画公開日、映画を世に送り出したばかりの深川麻衣に話を聞いた。
写真:大塚雄太 スタイリング:山口香穂 ヘアスタイリング&メイクアップ:村上 綾 取材・文:佐藤ちほ
ファンが“推し”に向けるのは無償の愛
──伊藤ちひろ監督が手がけられた映画『逃げろお嬢さん』の脚本を読んだ際の感想から聞かせてください。
深川 ある勘違いをしながらも“推し”を守ろうとがんばるファンという設定が面白く、ページをめくる手が止まらず、あっという間に読み終わりました。また、全体的にユーモアがたっぷりなんですが、グッとくる台詞やドキッとする台詞もちりばめられていて。そういうところも素敵だと思いました。
──ご自身が演じた鮎川舞子の人物像はどう感じましたか。
深川 舞子は責任感の強い女性だと思っていました。元アイドルで、長年マネージャーさんと二人三脚でやってきて。もちろん、“自分がやりたいから”ということもあったとは思いますが、それ以上に、“誰かの期待に応えるために”これまでずっと走り続けてきた人なのかなと。そんな舞子にあることが起きて、“プラスじゃない”注目が向けられてしまう。周りは敵だらけで、自分のことを信じてくれる人がいなくなり、舞子の中ではいろんな思いが駆け巡ったと思うんです。“これまで私がやってきたことってなんだったんだろう?”と、自分で自分に問いかけてみたり。この物語が始まったばかりの舞子は、ひとことで言えば満身創痍の状態です。視線は落ち着かず、ふわふわとして地に足がついていない感じですが、偶然康太と出会って言葉を交わすうちに、ちょっとずつ呼吸の仕方を思い出していく。そういう感じなのかなと思っていました。
──深川さんは舞子同様にアイドルとしての経験をお持ちですが、康太と舞子が見せる“ファン”と“推し”の関係性に共感する部分もありましたか。
深川 ファンの方が“推し”に向けるもの、それは無償の愛に近いと私は思っていまして。例えば、今日は映画公開初日の舞台挨拶をしますが、こういったイベントがあれば遠方から足を運んでくださるというファンの方もいらっしゃると思うんです。応援の仕方は人それぞれですが、応援することって時間やエネルギーを使うし、決して当たり前のことではないと思っています。物語の中で康太が舞子に向けるものも、やっぱり無償の愛に近いと思うんです。自分が本当につらかった時、舞子のラジオ番組を聴いて救われた。そんな経験をしている康太にとっては、誰がなんと言おうと舞子は応援し続けたい存在で。また康太は、世間からどんな情報が入ってこようとも目の前にいる舞子を信じ続けられる、そんな強さを持っている人でもあります。追い詰められた舞子に康太がある言葉をかける場面がありますが、もしも私が舞子の立場だったなら、その言葉にどれだけ救われ、心強く感じただろうとも思いました。

──映画の中では、舞子がアイドルとしてパフォーマンスしている姿も映ります。久しぶりにアイドルしてみていかがでしたか。
深川 だいぶ緊張しました。楽曲のパフォーマンスシーンについて、監督からは「舞子のいちばん輝いていた時を象徴する回想シーンです」とお聞きしていたので、これは気合いを入れて臨まなければと思い、できる限りの猛練習をして撮影に臨みました。映画に映るのは楽曲の一部ですが、楽曲はフルで作っていただいて。その楽曲が本当に素敵なんです。また、アイナ・ジ・エンドさんが担当してくださった振り付けもとても素敵で。プレッシャーはたっぷり感じつつでしたが(笑)、がんばりました。撮影部さん、照明部さん、美術部さん、各部署のみなさんのお仕事が素晴らしく、みなさんのおかげで、アイドル時代の舞子としてキラキラと輝けたと思っています。
