クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍する若手クリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第24回のゲストは、俳優としてのみならず映画監督としても才能を発揮する須藤蓮×須藤蓮を中心とした多様な創作活動=FOLに参加するひとりで、須藤蓮が監督した映画『逆光』や『ABYSS』では撮影監督を務めた須藤しぐま。

Vol.24映画監督・俳優・須藤 蓮 × 撮影監督・須藤しぐま

  • 須藤 蓮
  • 須藤しぐま

「僕の“訳のわからんやり方”はAIには導き出せない」(しぐま)
「人間にしかできない、一見どうでもいいようで素敵なことがある」(蓮)

蓮さんにとって映画作りとはどんな意味を持つものですか。

「僕は映画がずっと好きだったわけではないんです。でも、しぐまさんやあやさんたち、僕が尊敬する人の多くが映画の人たちだったから。その人たちと面白いことをしたかった。それには映画がちょうど良かったというか」

今はFOLを通じ、映画製作の他にもショップをオープンさせたりと多様な創作をされていて。

「FOLは僕の中では、世の中に出ていなかった才能を形にする活動というところがあって。しぐまさんも、僕の映画で衣装を担当してくれている(高橋)逹之真もそうですが、すごく才能があるんですよ。“自分にしか見えていない”ものが確かにあるのに、そういうのってなかなか自分の力だけで形にするのは難しいですよね。そういう人たちを見ると環境を整えてその才能を世に現して、その価値に気付いてもらいたくなるんです。
例えば、しぐまさんの映像センスは『逆光』という映画にして初めて気付いてもらえたわけで。FOL SHOPをこの春オープンするのも、FOLの拠点にするためだけではなく、逹之真の才能を知ってもらう場所を作りたいと思ったから。僕はFOLの活動を通じてWeb3.0のリアル版、Real3.0を起こせたらと思っているんです。つまり、世に出ていなかった才能を形にすることで人々の認識を変え、パラダイムシフトを起こしたい。結果、その新しい世界は自分にとってもより居心地のいいものになると思いますし」

しぐま「FOLがあるから僕も成長できたと思いますね」

最後に、今おふたりが創作する上で大事にしていることを教えてください。

「囚われないことかな。例えば、絵コンテは描かないとか、一本の映画の編集に1年かけるとか。そういう、常識的ではないものの、自分に合った方法を選び、それを周りに納得させるよう努力するほうがいい創作になるのではないかと」

しぐま「一緒です」

「乗っかった(笑)」

しぐま「いや、真面目に(笑)」

「これまでずっとしぐまさんに“もっとちゃんとやれば?”って言い続けてきたんです。でもそれは間違っていたと最近気付きまして。今ではむしろ、しぐまさんは頭を使わないで作り続けたらいいと思っているんです」

しぐま「確かに最近そんなことを言われました。“しぐまさんは何をめざしているの?”と須藤蓮に聞かれ、“パルムドールやろ”と答えたら、“絶対にめざしてないやん!”って言うんです(笑)。確かに、例えば優秀なAIであれば、“パルムドール受賞が目標”と入力したら、それに向けてどう努力すればいいか、最適な方法をすぐに導き出すじゃないですか。僕にはそんなことはできないけれど、一方で僕の“訳のわからんやり方”も絶対にAIには導き出せない。“しぐまさんはこれからも適当にやらな”と須藤蓮に言われ、納得しましたね」

「人間にしかできない、一見どうでもいいようで素敵なことがあると思うんです。今の時代はむしろ、しぐまさんみたいなバカなやり方のほうが本当に価値のあるものを生み出せると思うんですよね」

しぐま「褒められている気がしない(笑)」

「好きなことを突き詰めていった結果、パルムドールに辿り着いたら最高だと思うし」

しぐま「それは確かに。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(’22)を撮ったダニエルズのふたりが“まさかこんなに評価されるとは。好きにアホみたいに作っただけなのに”というようなことを言っていて、まさしくこれやなと思って」

「そう言えばしぐまさんって、雰囲気ダニエルズ感あるね(笑)」

しぐま「決めました、ダニエルズをめざします(笑)」