FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍する若手クリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第29回のゲストは、12/1に映画『朝がくるとむなしくなる』の公開を控える映画監督・石橋夕帆×『子供はわかってあげない』『水は海に向かって流れる』を手がけ、現在はモーニング・ツーで『みちかとまり』を連載中のマンガ家・田島列島。

Vol.29映画監督・石橋夕帆 × マンガ家・田島列島

  • 石橋夕帆
  • 田島列島

「描くうちに無意識に大事にしているものが出てくる」(田島)

今回の対談は石橋監督のリクエストで実現しました。

石橋「田島先生の大ファンなので、本当にうれしいです。2014年に『ぼくらのさいご』という短編作品を自主制作で撮ったんですが、撮影後すぐに20年来の友人から田島先生の『子供はわかってあげない』を猛烈に勧められ、読んでみたんです。そうしたら本当に素晴らしくて。世の中の多くの人にとっては“取るに足らない”と思われそうな出来事や感情をバカにせず、丁寧に掬いあげている作品だと感じました。あと、全体を包み込むユーモアとテンポ感も魅力的で。私が『ぼくらのさいご』でやりたかったのは、こういうことだったんだなと思いました」

取るに足らないと思われそうな事柄を掬いあげて描く、というのは意識されるところですか?

田島「いや、私は特に描きたいものとかないんです。“売れるものを描こう”というところから始まって設定を決めて描いていくうちに、自分が無意識に大事にしているものが出てくるだけだと思います」

石橋「そうなんですね。私は映画を撮っていますが正直、小さい頃からマンガばかり読んできたので。自主制作で短編を撮っていた時は自己投影して物語を作るのではなく、自分がマンガから受け取ってきたフィクション的な欲求、つまり、“こういうものを見たい”ということをイメージしながら作っていたところがあって。でも、実際に作っていくうちに“これは自分の中で大切にしていた感情だったんだ”って、後から繋がることは多かったですね」

石橋監督はマンガ家になりたかったのでしょうか。

石橋「そうなんです。でも自分はマンガ家に向いていないなと早めに自覚して。踏ん切りをつけようという思いもあって、実は大学受験の前に一回、講談社の別フレ(※別冊フレンド)にマンガを投稿したこともあります」

田島「私も小さい頃はマンガ家になりたかったんですが、高校の頃に北野武監督作にハマり、多摩美術大学の映像演劇学科に入ったんです。映画監督になりたかった時期があって。でも、結局はマンガ家になったという逆の流れです」

石橋「私、田島先生オタクなのでその情報は知っていました(笑)。この機会にいろいろお聞きしたかったんですが、田島先生のマンガには随所にクスッと笑えるところがあって。ニュータイプの親父ギャグというか(笑)。あのギャグのセンスは何かから影響を受けていたりするんですか?」

田島「多分、今まで読んできたいろんなマンガからの影響なのかなと思います。あと、父親が結構冗談を言うタイプなので、その影響もあるのかも。それと、お笑いも好きですね」

石橋「ニュータイプの親父ギャグとは言いましたけど、親父ギャグとは全然違うんですよね。例えば『みちかとまり』で言ったら“別人28号”とか、大好きです(笑)。田島先生の作品は台詞の音感が独特だと感じます」

田島「音でコマとコマを繋げるとか、そういうことは普段から割と考えていて。多分、音に対する意識はあるんでしょうね。そういうのがギャグにも出ているのかもしれないです」