FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍する若手クリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第26回のゲストは、シンガーソングライターおよびロックバンドWOLVEs GROOVYで活動する“ましのみ”×グラフィックデザイナー、アートディレクター、フォトグラファーとして活躍中の岡本太玖斗。

Vol.26ミュージシャン・ましのみ × グラフィックデザイナー・岡本太玖斗

  • ましのみ
  • 岡本太玖斗
岡本さんがWOLVEs GROOVYのMVを手がけた経緯は?

ましのみ「バンド1本目のMVとして、メンバーがちゃんと魅力的に映る、かつ、絵として捻りがあるものをいい塩梅で作ってくれる人はいないかなと考えていて。そんな時に太玖斗くんが監督した浦上(想起)さんのMVを観てピンときて、知り合いに紹介してもらいました。リファレンス(参考)が送られてきた時、自分の感覚とドンピシャで感動しましたね」

岡本「曲を聴いた時に撮りたい画が浮かんできたんですが、曲がかっこいいので、映像はちょっとふざけてるほうがバランスが取れるし、観た人がファンになってくれるかなって。あと3人にはかわいげの素質があるなと思いました」

ましのみ「あはは。太玖斗くんってプロデューサーの視点を持ってるんですよ」

岡本「自分も音楽が好きだから、どちらかと言うとリスナー目線ですね」

ましのみ「太玖斗くんとはめっちゃ感覚が合います。作るものに対する美学のバランスというか…心地良さと違和感のバランス」

岡本「そこは意識しているのでうれしいです。基本的に、他の人がやれることはやりたくないんですよ。映画でも、完全に伏線回収されてハッピーエンドで終わるよりも、何も解けないまま終わるものが好きで。一筋縄ではいかない部分は残さないといけないって思ってますね」

ましのみ「太玖斗くんの作品は俯瞰の視点が強く入っていると思っています。私も俯瞰した時の面白さに美学を感じるタイプで、そういう人って多くない気がしてて。出会えると“絶対に友達になりたい”って思う(笑)」

岡本「主観が入り過ぎた表現は恥ずかしいと自覚しつつ、冷静な視点を担保しながらやるべきだと思っていて。そういうのが滲み出ているのかも」

モノ作りで大切にしているのも、そういう部分?

岡本「それは根幹にあるかもしれないです。あと、基本的にグラフィックデザインの思考で作ってます。『BUG』のMVもカメラにマイクを付けて歌う画が面白いと思いましたし」

ましのみ「私は心地良さと違和感のバランス。あと言葉が大切なので、歌詞をいじられるのが無理なんですよね。クライアントワークでも“この言葉を変えたい”と言われると“じゃあ、この部分はまるごと考え直させてください“ってなります。シンガーソングライターというのが根っこにあって、自分の思想が一滴でも入ってないと(作品を)愛せなくなっちゃうんです。なので自分を混ぜるのは大事。というか、そうしないと作れないです」

岡本「僕も言葉は大事にしたい部分で、デザインや映像も言葉から考えることが多いです。グラフィックデザインのお題をもらった時に浮かんできた言葉を最初に書いて、それをもとに作ったり。だから言葉は正しく使いたいと思ってますね。ツイートで誤字するような人間にはなりたくないんです(笑)。Twitterはパブリックなものだと捉えているので」

ましのみ「最近のTwitterってパブリックみが強いしね」

岡本「でも、そうなると何も考えずにつぶやきたくなりませんか?天邪鬼ですけど」

ましのみ「そういえば私、小学生の時に天邪鬼ってあだ名をつけられて。その時から自分は斜に構えがちな人間なんだというスタンスが染み付いちゃっている気がするんですよ。だから太玖斗くんとわかり合えるのかな(笑)」