CINEMASPECIAL ISSUE
『シサㇺ』主演・寛一郎は考える
考え続けることで人生が豊かになる
──FLYING POSTMAN PRESSのコンセプトは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>です。カルチャー作品に触れて人生が豊かになったという経験はありますか。
寛一郎 映画や本が徐々に視座を高めてくれるというのは、たびたび経験してきました。なかでも、僕の場合は本の影響が大きいかもしれません。例えば、哲学者のソクラテスについて弟子のプラトンが書いた『ソクラテスの弁明』。23歳の頃にこの本を読み、かなり影響を受けました。ソクラテスが提唱した理論のひとつに問答法というものがあって。ひとつの事象に対し、「それはなぜですか?」と質問を重ねていくことで、その質問を受けた相手がより深く考えるように促すというものです。なぜそうしたのかと聞かれ、「それは言葉にできないよ。無意識でやったから」などと答えてしまえば、そこから先はないわけじゃないですか。問答法に出会う前の僕はそんなふうに、考えることを放棄して投げてしまうことが多かったと思います。でも、この本を読んで問答法を知ってからは一つひとつ、なぜそうしたのかと考え、言葉にしてみるようになった。それを繰り返すうちに、相当深く思考できるようになったんです。問答法は僕の人生はもちろん、役作りの過程も豊かにしてくれたと思います。ただ、ひとつだけ難点がありまして。問答は一度始めたら止まれないんです。それで眠れなくなることもあるぐらいです(笑)。
──映画やドラマを世に送り出す側としてはいかがでしょう。どんなことを大切にしていますか。
寛一郎 作品を観る側の立場で言うと、観て思考が促される作品が好きです。でも、“こうあるべきだ”と押しつけるような描き方はあまり好きじゃない。テーマを難しく伝えるのではなく、物語を楽しんでもらいながら自然とテーマを感じ取ってもらい、何かを知るきっかけになったらうれしい。そんなふうに思いながら日々取り組んでいます。
──『シサㇺ』もまさに、知るきっかけになる映画かと思います。
寛一郎 そうですね。『シサㇺ』は第一に、エンタテインメントとして楽しんでもらえる作品になっていると思います。楽しんでもらって、その上でアイヌについて知る入門編になっているのかなと。僕は、今起きている問題は放置するのではなく、一人ひとりがその問題を模索し、完全に解決するとまではいかなくても、未来のために何かしら努力しないといけないと思っています。そのためにも、まずは知ることが大切なのかなと。『シサㇺ』は“知る”を知ってもらえる映画になればいいなと思っていましたし、実際にそういう映画になったと感じています。
寛一郎(かんいちろう)
1996年生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に、映画『せかいのおきく』『首』(いずれも2023)、『身代わり忠臣蔵』『プロミスト・ランド』『ナミビアの砂漠』(いずれも2024)など。待機作に映画『グランメゾン・パリ』(2024年冬公開予定)、米・スカイバウンド×フジテレビ共同制作ドラマ『HEART ATTACK』(2024秋以降配信予定)がある
『シサㇺ』
2024年/日本/115分/PG-12
監督 | 中尾浩之 |
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出演 | 寛一郎/三浦貴大 和田正人 坂東龍汰 平野貴大 サヘル・ローズ/要 潤/富田靖子/緒形直人 ほか |
配給 | NAKACHIKA PICTURES |
※9月13日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
©映画「シサㇺ」製作委員会
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