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青木柚が語る松居大悟監督と映画館

『不死身ラヴァーズ』では最高の親友に
青木柚が松居大悟監督と映画館を語る

 5月10日(金)より公開となる松居大悟監督の最新作『不死身ラヴァーズ』は、“好き”を全肯定する無防備なラブストーリー。主人公・長谷部りのが運命の相手である甲野じゅんに何度も出会い、そのたびに恋に落ち、全力で“好き”と伝える姿を映している。

 本作で青木柚が演じるのは、主人公りのを見守り続ける親友の田中。絶妙な距離感と温度で主人公に対峙し、主人公のみならず観客の頭の中まで整理してくれるような存在となっている。

 <松居大悟監督との仕事>と<演じる際の距離と温度>をテーマに青木柚にインタビュー。さらに、カルチャーというものが青木自身にとってどんな意味のあるものなのか、その作り手として何を大切にしているかも尋ねた。

写真:小田原リエ スタイリング:小笠原吉恵 ヘアスタイリング&メイクアップ:亀田 雅 取材・文:佐藤ちほ 衣装協力:ジャケット(PLUG/plug1982.com) そのほかスタイリスト私物



松居大悟監督作にはエネルギーがある

──『不死身ラヴァーズ』の物語に最初に触れた際の感想を聞かせてください。

青木柚(以下:青木) 映画の脚本を読み、合わせて原作マンガも読ませてもらって最初に感じたことは、“まぶしいなぁ”というものでした。「好き」を伝え続ける主人公があまりにピュアで突き抜けていて、すごくまぶしく感じたんです。同時にふと自分が10代だった頃を振り返り、“自分も考える前に好きという衝動的な感情は多かったかもしれない”と懐かしくなったり。今の自分の視点だけではなく、ふと昔の自分の視点でもこの物語を受け止めていることに気づき、面白いなと思いました。りのとじゅんがたくさんの時間を重ねていく中では、切ない瞬間も増えてきて。放課後に疲れ果てるまで遊んだ後の帰り道のような。あの思い返すとどこか締めつけられるような時間を、この作品に感じました。

──物語に自身の経験を重ねてみる、それはほかの作品でもよくしていることですか。

青木 そうかもしれません。例えば、脚本を読んでグッときたとして。“どうして今、自分はグッときたんだろう?”と、その理由が知りたくなる時があるんです。それで、昔のことを思い返してみたり、“誰かこんな人が近くにいたかもしれない”と似ている人を探してみたり。そういうことはよくあります。ただ、グッときた理由をあえて言葉にしたくない時もあって、そういう時はそのままにしておきます。でも基本的には、映画で描かれることをよその物事だとは思わず、自分が生きている世界の物事だと思って受け取ってみたい。そういう感覚は割と持っていたいなと思います。

──例えば、SF映画の脚本だとしても?

青木 SFでもそうだと思います。SFってまったく違う世界の話のようでいて、実は自分たちの世界と地続きにあると感じられる瞬間が多いと思っていて。僕が素敵だなと思うSF映画は、壮大な設定や世界観の中に垣間見える人の生活感というか。きっとどんな物語にも自分たちが身に覚えのある感情や、生きていく中で抱く違和感みたいなものが含まれている。あとはそれをどう人の目に触れさせるか。いろいろなアウトプットの形があって面白いですよね。

──松居監督とは映画『アイスと雨音』(2017)でも一緒に仕事をされていて、その作家性もよくおわかりかと。松居監督がこの物語を撮るイメージはすぐに浮かびましたか。

青木 タイトルとあらすじだけを最初に聞いた時には、“こんなにピュアなラブストーリーを撮られるんだ!”と少し驚きましたが、脚本を読み進めるうちに“あ、これは松居監督が撮る作品だ”と思える雰囲気を感じて。これまでの松居監督作品では男の子が突っ走るイメージが強くありましたが、今回突っ走るのは女の子のほう。でも、芯の部分は変わっていない気がして。僕は松居監督の作品を観ると、理屈ではなく湧き上がってくる人間のエネルギーみたいなものを大切にされているんだなといつも感じます。今回の映画もまさに、整理されていない生命力みたいなものに満ちていると感じられるものでした。

──『アイスと雨音』は74分間全編をワンカットで撮影され、映画ですが演劇的な作り方だったかと思います。『不死身ラヴァーズ』の作り方はまた違っていたのでは?

青木 確かに全体の進み方は違っていましたが、松居監督の居方はまったく変わっていなくて、そこが僕としてはうれしかったです。松居監督はリハーサルから現場まで、ずっと近い距離にい続けてくださる方です。特にリハーサルの時の監督の居方が印象に残っています。りの役の見上愛さん、りのが恋する甲野じゅん役の佐藤寛太君、僕の3人が集まって本読みと立ち稽古をする日が1日だけあって。3人のバランスや空気感を3人で共有する時間だったのかなと思います。松居監督は僕ら3人がお芝居しているのをものすごく近くから、靴も脱いで裸足で座って見ているんです。「え、近っ!」って言いたくなるぐらい(笑)、体感としては松居監督に覗き込まれているようでした。“松居監督は今、僕らの何を見ているんだろう?”と興味が湧きましたし、同時に“ああ、『アイスと雨音』の時も松居監督はこうだった”と懐かしくて。改めて、自分にとって信頼できる方で、役の近くにもいてくれる監督だと思いました。