FLYING POSTMAN PRESS

初夏のトラウマ&ぶっ飛びホラー

『胸騒ぎ』でトラウマ必至
『告白 コンフェッション』でぶっ飛ぶ
初夏はホラー映画で震撼! “笑”撃!

 ラスト15分に震え上がる北欧発ホラーに、インパクト&パンチ力抜群の日本発ホラー。爽やかな天気が続く初夏に公開となる、1mmも爽やかではないホラー映画2本を紹介する。



何かがおかしい、彼らの“おもてなし”
世界を震撼させた最狂ホラー『胸騒ぎ』

 俳優としても活躍するデンマークの鬼才クリスチャン・タフドルップが監督と共同脚本を務めた最狂ホラー。全編を覆う不穏さ、トラウマ必至のラスト15分に映画ファンは騒然となり、第38回サンダンス映画祭をはじめ世界中の映画祭を席巻することに。大ヒットホラーを連発するアメリカのブラムハウス・プロダクションも本作に惚れ込み、すでにリメイクが決定している。

 映し出されるのは、善良なデンマーク人家族が過ごす悪夢の休日。イタリアでの休暇中に意気投合したオランダ人家族に招かれ、人里離れた彼らの家で週末を過ごすことになるのだが、その“おもてなし”は何かがおかしい…。不穏さと違和感は加速する一方、やがてデンマーク人家族は観客を道連れにして恐怖のどん底へ。“観たことを後悔する”と“観たことを一生忘れない”が並び立つ1本、善意が悪意を暴走させる様に震えあがるひとときを。


point of view

 休暇という非日常の中で出会った人と仲良くなるも、後日、日常を過ごす中で再会したら“あれ? 何か違う”と、夢から覚める。簡単に言ったら本作の入口はそれだ。何気ない会話や振る舞いの中に違和感ポイントがちりばめられ、居心地の悪さは次第にエスカレート。それでも善良な主人公家族は相手側の好意を無下にできず、週末の間だけ辛抱することを選択してしまう。

 本作を観る多くの大人たちが主人公家族の選択を理解できてしまうからこそ、全編を覆う不穏さと恐怖がリアルに迫り来る。クリスチャン・タフドルップ監督は、“休暇中に仲良くなった人の家で気まずい週末を我慢して過ごした”実体験から、この物語を着想したという。そのアイディアとプロットが秀逸な上、不穏さを映像と音、あるいは無音で増幅させる演出センスも抜群だ。

 鑑賞後には“観るんじゃなかった!”と思う人も多いかもしれない。でも同時に“忘れようにも忘れられない映画”とも思えるはず。ひとこと添えるならば、メンタルの調子が良い時に鑑賞を。


『胸騒ぎ』

https://sundae-films.com/muna-sawagi

2022年/デンマーク・オランダ/97分/PG-12

監督 クリスチャン・タフドルップ
脚本 クリスチャン・タフドルップ マッズ・タフドルップ
出演 モルテン・ブリアン スィセル・スィーム・コク フェジャ・ファン・フェット カリーナ・スムルダース ほか
配給 シンカ

※5月10日(金)より新宿シネマカリテほかにて全国公開

©2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures



原作×主演、強力なWタッグが実現
親友と雪山で遭難、密室で過ごす一夜

 日本マンガ界を代表するふたり、『賭博黙示録カイジ』の福本伸行が原作を、『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじが作画を手がけた同名マンガを原作に、山下敦弘監督が映画化。大学の山岳部OBのふたりが登山中に猛吹雪により遭難。死を覚悟した一方の男がある告白をするもその直後に奇跡的に命拾いし、ふたりは山小屋で気まずく壮絶な一夜を過ごすこととなる。

 舞台は密室、主要登場人物はふたり。生田斗真が“告白を聞いてしまった男”、『息もできない』(2008)を手がけた韓国を代表する映画人のひとり、ヤン・イクチュンが“告白してしまった男”を怪演する。気まずさと異様さに満ちた密室の山小屋、極限状態に追い込まれた男たちが行き着く先とは…? 74分間ドキドキしっ放し、恐怖の波状攻撃に息も絶え絶えとなること間違いない。


point of view

 これまでオフビートな魅力を持った映画を多く手がけてきた山下敦弘監督だが、本作の演出はひと味違う。インパクト大でエンタメな演出を多く取り入れている印象だ。系統で言ったら、『エクソシスト』(1973)を思い浮かべるとわかりやすいかもしれない。『エクソシスト』のディレクターズ・カット版における、“少女がブリッジで階段を降りるシーン”に近い、発明レベルのホラー演出を連発。そのたびに観客の心拍数は上がる一方、肌が粟立つと同時に衝撃を超えた“笑”撃が走ることとなる。

 主演の生田斗真、ヤン・イクチュンもそんな山下監督の演出に添い、エネルギッシュな演技を披露している。リアルというよりは“魅せる”表現に徹し、74分間観客を飽きさせることはない。日本発ぶっ飛びホラーを満喫したい。


『告白 コンフェッション』

https://gaga.ne.jp/kokuhaku-movie

2024年/日本/74分/PG-12

監督 山下敦弘
原作 福本伸行(原作)、かわぐちかいじ(作画)『告白 コンフェッション』(講談社「ヤンマガKC」刊)
出演 生田斗真 ヤン・イクチュン 奈緒
配給 ギャガ

※5月31日(金)より全国公開

©2024 福本伸行・かわぐちかいじ/講談社/『告白 コンフェッション』製作委員会