FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍するクリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第20回のゲストは、日本にルーツを持つキャスキー兄弟を中心としたオーストラリアのバンド、Last Dinosaursのロクラン・キャスキー×バンド結成20周年を迎え、11月には3度目となる武道館公演を行ったBase Ball Bearのボーカル、小出祐介。

Vol.20ミュージシャン・ロクラン・キャスキー(Last Dinosaurs) × ミュージシャン・小出祐介(Base Ball Bear)

  • ロクラン・キャスキー
  • 小出祐介

「個性豊かなメンバーからアイデアを持ち寄って独自のサウンドを生み出すこと。それをとても楽しんでる」(ロクラン)

小出「Last Dinosaursが音楽を作る時の意識は英語圏内、世界規模だと思うのですが、その場合、どこに視野を向けて音楽制作をしているの?」

ロクラン「目標にしてることは、個性豊かなメンバーからサウンドのアイデアを持ち寄って、僕ら独自のサウンドを生み出すこと。それをとても楽しんでる。僕らはオーストラリアのバンドですが、アジアとも深い繋がりがあり、アメリカともメキシコとも繋がりがある。ここ最近は数曲スペイン語で歌詞を書いたりもしています。僕と兄が日本人とのハーフなので、オーストラリアのオーディエンスからすれば普通の国内バンドとは違うだろうし、それがインターナショナルなアピールとなり、他のバントとは違うユニークさを楽しんでいる状況ですね」

小出「世界的なサウンドのトレンドとの距離感はどう考えてますか? 日本の現行の音楽は、2000年以降の日本の音楽に影響を受けたアーティスト、あるいは現在の世界的な音楽のトレンドへの意識が強いアーティストのふたつが主軸だと感じています」

ロクラン「さっき話したことにも通じるかもしれませんが、僕的にはトレンドというものがもうあいまいになってきてる気がします。僕らは’60年代、’90年代の音楽にも目を向けるし、’80年代のブリティッシュロック、The CureやThe Smithsにも影響を受けてきました。でも今はインターネットの急速な普及により、どんなジャンル、スタイルでもありというか」

小出「世界的に見ればそうですよね。国ごとのサブスクのチャートを見ても、どの国でも聴かれてるアーティストと、各国内のアーティストが混ざっている国が多い。だけど日本は国内アーティストがほとんどを占めてしまう。そこの乖離を常に感じてます」

ロクラン「でも、それこそが日本を日本たるものにしているというか。日本は独自の文化があって、他国を必要としてないような部分がある(笑)。逆にそれがすごく面白いなって思います」

小出「(笑)。それはシティ・ポップの話にも繋がると思うんです。そもそも“シティ・ポップ”という言葉自体が日本で発生したもの。アメリカのフュージョンやAORなどに影響を受けた同時代的な音楽でありながら、それ以前の日本の歌謡曲の香りも残っていたりする。そこに面白さを感じたのか、この15年くらいで海外のDJが和モノをプレイしたり、ネットではヴェイパーウェイヴが発生して、という」

ロクラン「その流れは初めて知りました。日本は海外のものを日本独自のものに変えていくことに長けていて、より良いもの、ユニークなものにしていきますよね。そのシティ・ポップが今、欧米やアジアに影響を与えているのはすごく面白い」

小出「なんだか小難しい話をしちゃいましたが、本当は好きな食べ物の話なんかもしたかったな(笑)」

ロクラン「いや、それはそれで複雑な質問だよ。食べ物に関してはいろいろと語るべきことがある(笑)」