FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍するクリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第20回のゲストは、日本にルーツを持つキャスキー兄弟を中心としたオーストラリアのバンド、Last Dinosaursのロクラン・キャスキー×バンド結成20周年を迎え、11月には3度目となる武道館公演を行ったBase Ball Bearのボーカル、小出祐介。

Vol.20ミュージシャン・ロクラン・キャスキー(Last Dinosaurs) × ミュージシャン・小出祐介(Base Ball Bear)

  • ロクラン・キャスキー
  • 小出祐介

「極めてドメスティックな音楽だと思っていたものが海外へ届き、今対談をしているのが不思議な感覚」(小出)

ロクランはBase Ball Bear(以下、BBB)のファンだと聞きました。

ロクラン「バンドを始めた頃にBBBをよく聴いていて、影響を受けました。初めて聴いた時に、僕らがやりたいジャンルの音楽だと思ったんです。インディー系のギターロックサウンドで、そのサビがすごくうまい形で展開されていた。父がYouTubeでいろんなバンドのMVを見せてくれた中のひとつにBBBがいたんです」

小出「ありがとうございます。僕らの音楽は海外に向けた意識はなく、極めてドメスティックな音楽だと思っていて。それが図らずも海外へ届き、それを聴いてくれていたロクランがバンドをやり、今対談をしているというのが不思議な感覚というか(笑)。今、海外で聴かれている日本の音楽について興味深いことがふたつあって。ひとつは、日本のシティ・ポップが海外で広まっている現象。もうひとつはアニメ音楽。アニメのテーマ曲を作っているアーティストには、少し前の日本人アーティストに影響を受けた人たちも多く、ドメスティックな作品が多い。逆に僕らや少し上のバンドは、’80〜’90年代のUK、USの音楽に強く影響を受けています。そういう僕らの曲を聴いてロクランがいいなって思ってくれたというのは、もしかしたらその辺のエッセンスが関係するのかなって」

ロクラン「BBBのレガシーは間違いなく後世にも伝えられていくと思います。そして日本は基本的に内向的な文化というか、非常にユニークでスペシャル。ドメスティックなものを作っていますが、時にそれはまったく予想外に意図したところから離れ、僕らがBBBを聴くようになったみたいな現象がいろんな国で起きているんだと思います」

とても面白いお話ですね。では、お互いに聞いてみたいことはありますか?

ロクラン「BBBは20年というバンドキャリアをお持ちですが、今もバンド、音楽制作を楽しんでいますか? それともまったく別の視点から見ていますか?」

小出「インディーズ時代はお客さんが全然いなかったので、どこへ向けて音楽をやっているのかわからなかった。メジャーデビューしてから一気に人に見られるようになり、そこからの数年間はもっと自分たちを知ってもらおうと思って音楽をやっていたんですが、だんだん自分は何が楽しいのかわかんなくなってきて。音楽のエンタメという側面が強くなり過ぎていたから。俺がやりたいのは作品作りだと気付いたのが、デビュー7、8年後かな。今は自分たちがやりたいことに、すごくキッズな気持ちで挑めてます。しかも年々その気持ちが加速。ギターをジャーンと弾いて、デカい歪んだ音が出るだけで楽しくしょうがないというか(笑)。今のモチベーションはそこにありますね」

ロクラン「それはとても興味深い道筋ですね」