FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍する若手クリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第5回のゲストは俳優として活躍するのみならず、映画監督として『海辺の金魚』で長編デビューを果たす小川紗良×メジャーデビューアルバム『Moving Days』をリリースしたHomecomingsの福富優樹。

Vol.5映画監督・小川紗良 × ミュージシャン・福富優樹(Homecomings)

  • 小川紗良
  • 福富優樹

「自分が書いたものが変化して広がっていく、その一連が楽しい」(福富)

おふたりがモノ作りを始めたきっかけは?

福富「小さい頃から本を読むのが好きだったんです。それで小学4年生頃に音楽より先に物語を書くことから始めました。星新一さんのショートショートを読んだりしていて、なかには3~4Pの本当に短い物語もあって。それで多分、“このぐらいの量ならできそう”と思ったんでしょうね(笑)。家にあった埃を被ったワープロでひと文字ずつ打ち、印刷して。実は一度、インストアライブの時にその印刷したものをコピーして配ったんです。その後、誰も感想をつぶやいたりしてくれないので、どう受け止められたかはわからないんですが(笑)」

小川「私も俳優業や映画作りを始める以前に、物心付いた時から何かを作って人に見せるということが好きでした。自由帳にマンガのようなものを描いてみたり、劇を作っておばあちゃんに披露してみたり。その延長線上で高校時代に文化祭や宿泊行事の中でドキュメンタリーを撮る機会があって。また同時期にお芝居するほうにも興味を持ち出し、事務所に所属して役者業も始めました。小さい頃からモノ作りが好きだった気持ちが、たまたま高校時代に映像とお芝居というものに結び付き、仕事になっていったという感じですね」

福富「僕もまずは何か作ってみたいという衝動があり、その後、音楽を好きになって当たり前の流れでギターを練習し出して…という感じでした。遊びの延長線上としての創作を小さい頃からやってきて、自覚的にモノ作りするようになったのはバンドを始めてからですね」

ふたりとも、物語を書くところから始まったというのが興味深いです。

福富「多分、何も用意しなくても思い付いたらすぐに書けるっていうインスタント感が良かったんだと思います。勉強机でそのままできる感じというか」

小川「私の場合、言葉というものが昔から好きで。役者業や映画作りって、人と一緒にモノ作りするということで。それはそれで楽しいんですが、じっくりとひとり部屋で“言葉作り”に没頭できる時間も私にとっては大切なんです。普段いろんな人と関わってモノ作りしつつ、時々ひとりに立ち還ってじっくり物事を考えてみる。そのバランスを取っていきたいと思っていて」

福富「僕の場合、ひとりでモノ作りを完結する、みたいな感覚はあまりなくて。例えばメインのHomecomingsの音楽のほうでは、僕は歌詞だけを書いています。それをメンバーに投げ、ボーカルの(畳野)彩加さんがメロディを付けてくれ、そこからアレンジしていって…と、自分が書いたものが変化して広がっていく、その一連が楽しいんです。感覚で言ったら、自分は脚本家みたいな。この詞をどう歌ってくれるかなどと想像しながら詞を書いたりするので」

小川「私も学生の頃は自分で脚本を書いて監督し、出演もしていたんですけど、途中から監督と脚本を務める時には出演はやめるようになりました。自分で書いて演じるところまでやるとどうしても自己完結して終わり…という感じがあって。他の役者さんの手に委ねたりと、人の手が加わることで自分の想像を超えたところにあるものを見つけられたら面白い。そういうのはすごくよくわかります」