Vol.2モデル/シンガー・る鹿 × 映画監督・宮崎 彩
「感性をぶつけ合って心を開き合えば、きっといい作品になる」(る鹿)
もともと創作活動に興味があったんですか?
宮崎「私は18歳まで大分で育ったんですが、大分にいた頃は映画ってほとんど観なかったんです。映画館が遠く、観る機会があまりなかったというのが正直なところで。だから小さい頃は小説を読むのが好き、というぐらいでした。それが、たまたま映画の授業が多い大学に入ることになって。それまでの私は表現と言えば“文字”でしたが、“映像”という表現の手法を知ってこれは新しい文化だなと。それで勉強してみようと思ったのが始まりでした」
る鹿「私の場合、絵を描くお父さんの影響で小さい頃から絵画とかアートが好きになって。大学でも油絵を専攻していたんですけど、お洋服も好きで、ファッションのデザインにも興味を持っていたんです。またそれとは別に、日本のアニメやマンガがずっと好きで、日本語の勉強をしたくて中国から日本に来たんですけど、その時に偶然、“モデルをやってみない?”とスカウトされて。モデルはファッションに繋がっているし、表現する仕事という意味でも同じだしやってみよう、と。母国じゃない国で新しいことをすることで何かが生まれそうだし、それは楽しそうだなとも思いました」
実際、どんなところが楽しいと感じました?
る鹿「一番はいろんな人に会っていろんな話を聞けるところかな。刺激を受けるし、人生の栄養になる。出会いによって自分の人生が毎回変わっていくのも面白いなって」
宮崎「それは本当に思います。私、大学で映画始める前は交友関係がすっごい薄い人間だったんです(笑)。映画がないと関わることがなかっただろう人たちと一気に関わり始め、すごくカロリーを使うことになったんですよね。みんな思想や趣味が違うんですが、“作ろう”という一点のみで繋がっている。多種多様な人たちがひとところをめざすというのが面白かった。こんな人との関わり方もあるんだなって刺激的でした」
宮崎さんは撮る側としてどんな人を撮りたいですか? る鹿さんは撮られる側としてどんな人に撮られたいですか?
宮崎「例えば『グッドバイ』の主人公さくらは、脚本を書いている時に“あ、私はさくらを福田麻由子に演じてもらいたいんだ”と思いました。子役から活躍している彼女のことはずっと観ていて、自分の中にあった女優・福田麻由子像と、目の前で書いているものが完全にシンクロしたんです。また同時に、このさくら役で新しい彼女を見せたいとも勝手に思いました。新しい出会いに関しては、顔立ちが整っているとか、演技がうまいとかを超えて、“なんか目が離せない”と思ってしまう人っているんです。ずっと観ていたいと思えるような人が。言葉にするとそういうことですが、それは出会ってみての直感でしかないですね」
る鹿「撮られる側も、会って少しコミュニケーションを取ったらすぐにわかります。“この人は見たことのない自分を撮ってくれる人”ということは。それはもう相性というか、人間と人間のオーラで決まるものだと思っていて。相性やオーラが合わないとなかなか自分の深いところのものは出せないんですよ。自分の新しい扉を開いてくれる写真家さんに出会うと、人間って面白いなって思います。自分の知らない自分を発見できるばかりじゃなく、写真家さんの新しい部分も発見できたりもするし。だから、お互いにパワーを最大限に引き出せたらいいですよね。お互いの感性をぶつけ合って心を開き合えば、それはきっといい作品になる。世の中に残るものになるって思います」