FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍する若手クリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第30回のゲストは、曲作りや映像制作など多岐にわたる表現をするシンガーソングライターのa子と、大学に通いながら創作活動を行う新鋭イラストレーターのテナテル。

Vol.30ミュージシャン・a子 × イラストレーター・テナテル

  • a子
  • テナテル(ArugaUtena)

「十代の頃の経験や感じたものが創作の根本」(a子)
「作品を作ると昔の自分が救われるような気がする」(テナテル)

制作時は何からインスピレーションを得ていますか?

テナテル「私は日常生活で感じたことからストーリーやキャラクターを作って文章を書いて、その挿絵みたいな気分で絵を描くことが多いですね」

a子「私は実際に感じたことを歌詞にしたり、映画を観たりしています。あと、音楽を聴く、MVやライブ映像を観るとか。MVで何も湧かない時は蔦屋書店に行って片っ端からクリエイティブなものを見ますね」

テナテル「a子さんの世界観って素晴らしいですけど、やっぱりストック量ですよね? アンテナを常に高くして生きるとか」

a子「プラス、昔の貯蓄ですね。22〜23歳ぐらいもめちゃくちゃ貯まるけど、一番は十代の頃。経験やトラウマ、見てきたもの、なんでもいいんですけど、そこが根本になるのかなって。そこに新しく好きになったものや今ディグってるものを組み合わせて、インスピレーションを掛け算していく感じです」

テナテル「ポーンって、無から湧いてくるものじゃないですよね」

a子「無理無理(笑)。たまに風呂に入ってる時に降ってくることがあるけど、基本降ってこないです」

テナテル「今回のMVで私は中学の頃の感情を元にしていて、そこがa子さんと重なったんですよね。自分が感じたことや経験の大きさで勝負が決まることもあると思うので、辛いことも率先してやろうという心構えがあります」

a子「中学の時の辛い経験って大事。2作目のEP『ANTI BLUE』までは当時のコンプレックスや考えていたことがもとになっているし、今作からは恋愛のことや新しい出会い、上京してからの経験が入っているんですけど、そこにも“生きるとは”“人生とは”って中学の頃に思っていたことが絡んでいるから」

テナテル「わかります。作品を作っていると、昔の自分ではどうしようもなかったことを今の私が解決してあげるというか、昔の自分が救われるような気がしていて」

a子「そうそう。“こういう答えを今の自分なりに出したけど、どう?”って、ちょっとだけ希望を書くのはやっちゃう。何がしんどいかとか解決策は人それぞれ違うけど、自分の作品を聴いた人が“こういう考え方もあるんだ”と思ってくれたらうれしいですね」

モノ作りで大切にしていることを教えてください。

テナテル「答えが決まっているものじゃなくて、自分が感じた感情をできるだけ生のまま伝えるというところで、歪みや不自然さや違和感を大事にしたいと思っています。ただ、技術的にできないから歪みの表現になってしまうのと、表現できるけどあえてそうしているのとでは受け取られるものが違うので、技術磨きもがんばりたいです」

a子「私は“妥協しない”を大事にしてまして。めざしてるところがすごく高いので、精一杯のラインまで絶対に妥協しない。過去の作品を見返すともう恥ずかしいんですよ(笑)。でもその時の自分は妥協してなくて、当時の自分がいいと思うものが凝縮されているんですよね。そこはずっと大事に持っているし、変えていきたくないですね」