FLYING POSTMAN PRESS

クリエイターを繋ぐ対談連載CREATOR × CREATOR

異なるフィールドで活躍する若手クリエイターふたりがモノ作りの楽しさや面白さ、大事にしていることなどを語り合う本連載。第28回のゲストは、シンガーソングライター、トラックメイカー、作編曲家などあらゆる顔を持つ原口沙輔と、シンプルであたたかな画風が人気のフリークリエイター・error403。

Vol.28ミュージシャン・原口沙輔 × イラストレーター・error403

  • 原口沙輔
  • error403

「名義を変えて明確に自分の中身を出すようになった」(原口)
「“純粋な退屈”から作ったものが一番個性的だと信じている」(error403)

書籍やカードゲームなど、エラーさんの絵はいろんな場所でお見かけします。

error403「平面表現であればなんでもやっているので、結局、創作が好きなんだろうなって思います。飽きないようにいろんな味を楽しみつつ続けています」

原口「わかります。僕もいろいろやっているので」

error403「『人マニア』のMVって沙輔さんが作られてますよね。グラフィックのセンスもあるし、すごいクオリティだなって」

原口「MVはほとんど1日で制作しましたね。構想はずっとしてて、完成像だけ頭にあったんですけど、<The VOCALOID Collection>の投稿締め切りがあったからどうにかして作らないとって。なのに、ほとんど使ったことのないソフトで作っちゃって。できないのに手を出してしまうのは、僕のいいところでもあり面倒なところでもあります(笑)」

error403「完成像が見えてるっていいですよね。『七曜日』もチラチラ見えてる完成像をいろんな角度から見て、“こっちからならいけるか?”みたいな感じで絵コンテを切ったり、一人で闘ってました。ノートPCで作ったのでマシンスペックの弱さもあったし、それと技術のなさをどうカバーするのかも含めて構想して。話を聞いていると、僕らは不慣れなことも面白くなり得るって考えが共通してるのかなって思います」

自分のための創作とクライアントワークで違いはありますか?

原口「僕はクライアントワークのほうが得意ですね。相手が求めるものと自分がやりたいことのバランスが取りやすくて、相手のことを調べ上げてから自分は何ができるか道を見つけていきます。逆に自分の作品だと“こうしてください”がないから、自分が好きだと思う音にする必要があって“じゃあ、やりたいことって何?”から始まるという。長い持久走をしているような感じで、完成までゼェゼェ言いながら作ってます」

error403「僕は自分のことだけ考えてモノ作りするほうが得意だなと思います。なんなら公開すらしなくてもいい。創作する上で誰に向けて作るかって重要だと思うんですけど、一番忘れちゃいけないのは、自分に向けて作ること。そこを軽視しちゃうと作るのが嫌いになっちゃいそうなので、自分のための創作を守ろうって気持ちは昔から強いです。だから持久走が得意なのかなって」

原口「僕は自分の作品に対してめちゃくちゃ厳しくて、なかなかOKを出してあげられないんですよね。そういう意味では、自分の活動を大切にしているのかもしれないです」

答えが自分の中にしかないと、ジャッジが大変そう。

原口「もともと自分のために音楽を作ったところもあって。いろんなジャンルを聴くうちに、聴きたいものが自分の中にしかなくなってしまったんです。だから最初は完成すればOKだったという」

error403「めちゃくちゃ共感します。僕はそれを“純粋な退屈”と呼んでいて、“もう面白いマンガないよなぁ、じゃあ描くしかない”みたいな。面白いものやいいものをたくさん見て、その上で退屈したいって今でも思ってるんですよね。退屈を生み出して、ひとり遊び的に作ったものが一番新しくて個性的だと信じているので、忙しい時とかは逆に焦るというか」

原口「退屈が創作に繋がるんですね」

error403「今は面白いコンテンツがたくさんあって一生時間を潰せるし、それが怖いと感じることもあるんですけど、それでも“なんでみんな、こういうの作らないんだ”って疼く瞬間があるんですよね。そして思い浮かんでしまったのであれば、やらなきゃいけないと思ってる部分があります」

原口「気が済まなくなっちゃいますよね。出さなくてもいいから自分で見てみたい」

error403「そうですね。閃いてしまうことって、実は呪いのような負の側面もあると思っていて。それが足枷になって自分の行動を妨げてしまうとか。例えばコンテンツのレビューで“こんなの俺でも思い付いたわ”みたいなコメントがあるけど、その気持ちが若干わかるんですよ。思い付いたけど形にできないのは辛いよねって。だから僕も沙輔さんも、完成まで持っていける力があるのはラッキーなのかもしれない」

原口「自分も結構思い付く人間だから、今の話は刺さりました(笑)。僕は思い付いたことを全部メモしています。文章で書いたり“こうしたらいいんじゃないか”と思ったものを写真に撮ったり。だからスマホで一番容量を食っているのが、メモなんですよ(笑)」

error403「珍し過ぎる(笑)。思い付いたことは、できるだけ作品の中で成仏させてあげたいですよね」