Vol.7水墨画家・CHiNPAN × 音楽家・Daoko
「私にとって“表現する”という行為は、自分自身を救うこと」(Daoko)
おふたりには先日、現在、東京都美術館で会期中の<Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる>に足を運んでいただきました。展覧会はいかがでしたか?
CHiNPAN「“障壁を超えて表現する”という展覧会のテーマに共感する部分がありました。なかでも、写真家・増山たづ子さんの作品にはかなり心動かされましたね。これまで、どちらかと言えば生活感のある写真というものにあまり興味はなかったんですが、“失われていくもの”を撮り続ける中に、悲しさと生きる希望みたいなものを強く感じて。これから私が生きていくにあたっての道標を見せてもらった気がしました。私も写真を撮るんですが、家族しか撮らなくて。そういった部分でも、“こういう作品の在り方でいいんだな”ってたづ子さんの写真から教えてもらった気がします。作り込んだり、考え抜いた構図というより、“あるがままを記録する”ことが大切なんだと改めて感じました」
Daoko「個人的には、学芸員の方からそれぞれの作家さんの背景を聞きながら鑑賞できたことが大きかったです。さまざまな障壁を乗り越え作品を作り続けた5人が集まってひとつの大きな作品、展覧会全体の強く美しいテーマが伝わってきました。そして、“生きる糧としての芸術”という部分にも共感しました。私自身も音楽を中心としながら、もともと絵も描いたり、詩を書いたりします。その“表現する”という行為は、自分自身を救うことなんです。この作家さんたちも自分自身を救い、生み出した作品を観た人たちがそこに光を感じ、受け取る光の連鎖があると思いました。また、今の世の中の流れ的にも、全体主義、資本主義の時代から、“個の情熱”がより大切になってくる時代へと変化していると感じているので、そちらへの架け橋なのかなとも思いました」
さて、今回はCHiNPANさんからDaokoさんへと対談のご指名がありました。
CHiNPAN「はい。もう長い付き合いなのに、ふたりでちゃんと話したことなかったので今回声をかけさせていただきました」
Daoko「ありがとうございます。光栄です(笑)。CHiNPANさんとの最初の出会いは、私が15歳ぐらいの頃かな。インディー・レーベルのオーナーがCHiNPANさんと知り合いで、私の衣装を一緒に探してくれないかと頼んだことが最初だったと記憶してます。もう10年ぐらい前かな(笑)?」
CHiPAN「ラフォーレとかに一緒に行ったね(笑)。当時、そのオーナーさんのところで私がたまにお手伝いをしていたこともあり、Daokoちゃんを紹介してもらいました。その後は、仲のいい友だちの古着屋さんに一緒に行ったりとか、普通に友だちになりました」
お互いの印象、作品について教えてください。
CHiNPAN「出会った時から今も、印象はほとんど変わってなくて。もちろん成長、変化してる部分はあるけど、コアな部分、繊細さと内面の美しさは変わらず。Daokoちゃんは、例えば人に良く見られたいとか、すごいと思われたいとかよりも、“個”を大切しているのをとても感じる。だから彼女が生み出す音楽の美しさは、彼女自身の鏡のようです」
Daoko「昔から知ってくれている人にそう言っていただけるのは、ありがたいですね。先ほどお話したように、私にとって音楽制作は、自分自身を救うことに繋がります。そして、また最近になってより音楽が大好きな気持ち、表現することで心のモヤモヤが昇華されるという芸術の素晴らしさを感じているので…そうですね、昔から変わってないですね(笑)」
CHiNPANさんについてはいかがですか?
Daoko「“カッコいいおしゃれなお姉さん”としてまず出会って、作品を拝見したのは仲良くなってからです。直接お話すると明るくて天真爛漫な人柄ですが、作品は妖怪や龍などをテーマにしたり、また違った世界観で。普段お話している時には見えない、私の知らないCHiNPANさんが、作品の中では見られる。明るい人柄とクールな作品、どっちも大好きです」