FLYING POSTMAN PRESS

「OTO MART」仕掛け人に聞く

「MART」の言葉で企画が一気に前進

──会場には500種類以上の音が展示されています。音の準備の面で大変だったことはありましたか?

Mashinomi ジャケットを見て“聴いてみたい”と思っても、その音を単体で聴いた時に満足できるかどうかがひとつめのハードルで、次に、それを演奏に混ぜた時に一つひとつの音が楽器として機能するかどうか。例えばバスケ部のドリブルの音はビートとして、卓球の音はパーカッションとして、音を楽器としても捉えて編集しているんです。

──そうか! 確かにそうなってました! 想像以上に気の遠くなる事前準備が、あの場のすべてに詰まっているんですね。

Mashinomi そうなんです(笑)。編集し過ぎてしまうと“これはバスケの音じゃないな”となってしまうので、バスケ部の時の空間の記憶を呼び起こしながらも、ほかの音と組み合わせた時に音楽にもなるという両方を叶えるのが難しいところでした。

──制作過程で、企画が大きく前に進んだ瞬間などはありましたか?

小板橋 最初はそれほど世界観もなく、“音の展示”というだけで企画を進めていたんです。当初はもっとスタイリッシュな黒い空間に、サンプラーのように音が蛍光色に光るパネルで大量に並べられているようなイメージで。

──今とはまったく違うイメージですね。

小板橋 その後、展示タイトルをどうしようかと考えて、「OTO COLLECTION」や「OTO MUSEUM」などの言葉が出てくる中で、「OTO MART」という言葉が見つかったことで、今のようなスーパーマーケットをモチーフとした空間で、レコードジャケットが並べられていて音を集める体験にしたらどうだろうと、次々と世界観が完成していきました。アートディレクション、デザインを担当していただいた東東京京さんなど、協力いただいく方々ともイメージを共有しやすくなり、一気に企画が広がった瞬間でした。

Mashinomi 音がたくさんあっても、ただ並んでいるだけだと、聴いて終わりみたいになりかねないというのが大きな課題でもあったので、レコードショップで次々とレコードをディグりたくなるような感覚になれる並べ方はなんだろう、という話をし始めたところから見つかったコンセプトでした。ここから一気にみんなの熱が強まりましたね。

──改めて、それだけの紆余曲折とみなさんの粘り強い熱意で実現したこの展示をどんな気持ちで迎えておられますか?

Mashinomi 私はもう、感無量ですね。音楽を作るとか、音楽について話すことのハードルがまだ高く思われがちだなと感じるなかで、知識があることももちろんカッコいいけど、その場で感じて自由に楽しめることも音楽の良さなので、老若男女、みなさんが目の前にある音を楽しんでくださっている空間を作り出せたことが本当にうれしいです。

小板橋 今までになかった遊びの形を作りたいと思って取り組んできたのですが、皆さんに本当に楽しんでいただけるかどうかは不安なところがあったので、まずは楽しめるものになって良かったなと思っています。今はまだジャンル分けもされづらいというか、「展示に行こうよ」なのか「OTO MARTに行こうよ」なのか、よくわからない体験だと思うのですが、これから活動していくなかで、例えば「カラオケ」くらい一般的な遊びの形になっていけるかもしれないし、音楽の可能性を広げそうだなと感じています。

──OTO MARTは今回限りの展示ではなく、広がっていくプロジェクトにもなるのでしょうか。

小板橋 そうですね。機会があれば巡回だったり、教育機関で展示させていただいたり、いろんな形を探っていきたいなと思っています。音楽イベントって、人によってはちょっと敷居が高い印象があったりもするかなと思うのですが、音の展示というこれまで音楽にあまり触れてこなかった方にこそ楽しんでいただきたいものになっています。17日(日)まで開催中ですので、ぜひお越しください!

Mashinomi(ましのみ)

プランナー/シンガーソングライター。1997年生まれ。TBS系ドラマ『死にたい夜に限って』の主題歌『7』が話題に。幼少期からディズニー音楽やネオ・ソウルに影響を受けてきた一方で「リズム天国」や「太鼓の達人」など、直感的に「最高」と思った音楽を同軸で楽しむ自由さを持つ

小板橋瑛斗(こいたばしあきと)

体験作家/プランナー。2003年生まれ。2020年よりCHOCOLATE Inc.で活動。「体験を設計すること」を思考の中心に、分解・研究を重ねながらイベントや店舗などを企画している。2025年には現役大学生でありながら、体験型展示『あの職員室』を手掛け、大きな反響を呼んだ

<体験型展示「OTO MART」>
開催日時 開催中〜2026年5月17日(日) 11:00〜21:00(最終入場20:30)
会場 PLAT SHIBUYA(東京都渋谷区神宮前6-27-8 エムズ原宿B1)
料金 [平日]大人1500円 子ども1000円/[土日祝]大人1800円 子ども1200円(すべて税込)
※未就学児無料
ご持参いただくもの 充電したスマートフォン、イヤホン(推奨)

https://oto-mart.com/