SPECIAL ISSUEART
「OTO MART」仕掛け人に聞く
ハイレベルな音楽を開かれたものにする
──子どももプロも同時に楽しめるようにしたいという思いは、どういった気持ちから生まれたのでしょうか。
Mashinomi 本格的な音楽づくりの体験なのに、みんなにも開けているものって世の中にあまりないかもしれないなと思ったんです。ちゃんとカッコよくてハイレベルなものがみんなに開かれていて、憧れのトラックメイカーも子どもも遊べるって最高だよね、という思いがありました。
小板橋 それにOTO MARTは教育的なものにもなり得ると思っていて、遊んでいるうちにいろんなことが学べているということも目指しました。

──企画の完成にいたるまでの背景を聞かせていただけますか。
小板橋 展示に来ていただく大人数の方が、同時に“音楽を作る”という体験を楽しめる場を作ることが、最初にぶつかったハードルでした。例えば音楽を作れるDJ機材を会場に置くとなると、機材を大量に用意して会場に並べる必要があり、場所も予算も莫大にかかります。そもそも音楽を作るという体験は、1カ所で作業するという体験になりがちで、回遊性がないため展示で行う意味が薄れてしまいます。
──確かに。
小板橋 来場者全員が音楽を作るということを同時に行っている状態を作り出すこと自体、無理なんじゃないかということになり、最初の2、3カ月は実現できる形が見つからないまま右往左往していました。
Mashinomi この企画の始まりは、さかのぼると2年ほど前なんです。NTTドコモ・スタジオ&ライブさんとCHOCOLATE Inc.で、公園で走り回って遊ぶような感覚で、無邪気に音と触れ合えて、音楽が楽しめるような体験が作りたいねというところから、昨年5月に、ビュッフェでお皿に料理をのせていくように楽曲制作ができる体験型イベント 「DISH JOCKEY」を完成させました。並べられた食品サンプルをビュッフェのようにお皿に取っていくと、それぞれの食品の中に音が入っていて、自分だけの音楽が作れるというものでした。
──わ、それは楽しそうですね。
Mashinomi そうなんです。物理的体験だからこそ、目で見て、触って、選んでいくと音楽ができるというのがすごく楽しくて。ただ、これは1回にひとりずつしか体験できないため、もっと持続的に体験していただくにはどうすればいいかというところから、今回の展示を考え始めました。

──そう考えると、今回の展示はデータ上だけの世界ではあるのに、ちゃんと物理的に触るような楽しさがありました。そこには、集められた音のユニークさやアートワークのポップさも大きく作用している気もします。
Mashinomi 音の選定においても、子どもから大人まで、音楽に詳しい人から詳しくない人まで、という点は大事にしていきました。例えばブラジル発祥のバイレ・ファンキやガムランという民族楽器の音など、プロも納得の音が入っている一方で、テニス部の人たちが雨の日にコートの水たまりをスポンジで吸う音が入っていたり。“こんな音があったらいいかな”というところはみんなでアイディアを出し合い、ペットボトルを潰す音やスナック菓子を食べる音、セリフなどはスタジオで収録したり、おばあちゃんの「いないいないばあ」の声などは知り合いのおばあさまに出演いただいたり、さまざまな方法で音を集めていきました。
