FLYING POSTMAN PRESS

『シサㇺ』主演・寛一郎は考える

今日と繋がる時代劇を作りたい

──寛一郎さんのキャリアを振り返ると、20代後半の俳優としては群を抜いて時代劇への出演が多い印象があります。

寛一郎 そうかもしれません。特にここ数年は時代劇への出演が多かったです。『ナミビアの砂漠』を撮っていた時、自分でも“現代劇、久しぶりだな”と思ったぐらいです(笑)。

──演じる身としては、時代劇の面白みや難しさをどう言い表しますか。

寛一郎 正直に言うと、演じる身としては面倒なものではあります(笑)。というのも、作品ごとに時代背景を学び、さらにその時代ごとの倫理規範というか、その時代に生きた人々の精神性も知っておかないといけないわけですから。また難しいのが、歴史上に実在した人を演じる場合。歴史を描いた作品は、時代考証を徹底すればするほど、今日の価値観からズレてしまうものがあると僕は思っています。なので必然的に、こういった多くの観客の方々に届けられる時代劇というのは、今日の価値観をベースに作られるものだと感じています。これは脚本に限ったことではなく演じる身としても同じで、敬意を払って時代背景や演じる人物の人生を勉強しつつ、実際にドラマや映画で演じる際には、どこかで現代と混ぜ合わせて、時代性と現代性のバランスを取っていく。その塩梅は時代劇を多く経験させてもらう中で学んだことのひとつです。

──自分とはかけ離れているはずの物語が身近に感じられる。本作もまさにそういう映画かと思います。

寛一郎 そう言っていただけてうれしいです。『せかいのおきく』という映画でご一緒した阪本順治監督がおっしゃっていました。「過去を描きながらも、その物語が過去のものとだけ思われないようにしないといけない」と。僕も本当にそう思います。時代劇が描いているのは過去のことです。でも、どこかで今日と繋がっている。そういうものでないといけないと思っています。