FLYING POSTMAN PRESS

『チャレンジャーズ』、衝撃の愛

ルカ・グァダニーノ監督×ゼンデイヤ
テニスプレイヤーたちの三角関係
価値観を揺さぶる<0(ラブ)ゲーム>

 『君の名前で僕を呼んで』(2017)を手がけたルカ・グァダニーノ監督が、『スパイダーマン:ホームカミング』シリーズ(2017~)、『デューン 砂の惑星』シリーズ(2021〜)でおなじみのゼンデイヤをキャストに迎えて贈る衝撃の愛の物語『チャレンジャーズ』が6月7日(金)から公開へ。スウィートなラブストーリーを期待していると、手ひどいしっぺ返しを食らうこと必至。予定調和は一切なし、観る側の価値観をも揺さぶるチャレンジングなラブストーリーが誕生した。



よくある三角関係ラブじゃない

 『チャレンジャーズ』の主要キャラクターは3人のテニスプレイヤー。そのうちのひとりであるタシ・ダンカンは圧倒的なテニスの才能とカリスマ性、すべてを巻き込む強さと激しさを持ち合わせていた。同じく才能あるテニスプレイヤーで親友同士のパトリック・ズワイグとアート・ドナルドソンはそんな彼女に魅了され、瞬く間に恋に落ちる。親友同士のふたりは恋のライバルとなるワケだ。

 タシはその後、試合中の怪我により選手生命が絶たれてしまうが、新たに情熱を捧げられることを見出す。それは、彼女の虜となったパトリックとアートを愛すること。誰よりも聡明なタシは、自身の影響力を熟知した上で鮮やかにそれを行使。そして彼女の言葉や行為は時に媚薬、時に刃となり、パトリックとアートを揺さぶっていく。

 そんな3人の愛の物語が時系列に沿わず非直線的に描かれるのも面白い。本作で初めて映画脚本を手がけたのは、劇作家として高く評価されるジャスティン・クリツケス。<怪我によるタシの転機><タシとアートの結婚、娘の誕生><夫婦がすべてを考え直すきっかけとなるパトリックの存在><アートとパトリックの二度の運命的な試合>という要素を、過去と現在を行き来しつつ組み合わせていくのだが、“構成が複雑過ぎて観る側の集中力が途切れる”といったことはない。なぜなら3人の精神的な繋がりは常に明確にされ、テーマは揺るぎなく提示されているから。またその脚本と、ルカ・グァダニーノ監督の知的で勢いのあるストーリーテリングの相性は抜群だ。

 ストーリーを要約すると、ひとりの女性テニスプレイヤーとふたりの男性テニスプレイヤーの10年にわたる愛の物語、というところだろう。それだけ聞くと“ひとりの女性を奪い合うふたりの男性”という、よくある三角関係ものを連想する人も多いはず。確かに、タシを巡ってパトリックとアートは争うことになるのだが、それと同時にパトリックとアートの間に友情以上の何かが存在していることも浮き彫りに。それぞれが自分以外のふたりに対して特別な感情を持っている、という印象を受ける。

 そんな3人の愛は常識や倫理で測れるようなものではない。意表をつかれる展開も多く最初から最後までスリルが持続し、毒っ気あるユーモアも効果的にちりばめられている。観る側の安易な先読みや共感など寄せつけない、挑戦的で刺激的なラブストーリーに仕上がっている。


ピタリとハマッたキャスティング

 タシ、パトリック、アートを演じるキャストがそれぞれ魅力的だ。タシ役は世代を代表する俳優としてのみならず、ファッション・アイコンとしても注目されるゼンデイヤ。タシの精神的&身体的な強さと激しさを見事に表現しつつ、時にはもろさも露呈。セックスアピールも際立つその姿はこれまでになく新鮮で、ひと皮むけた印象を受ける。

 パトリック役は『ゴッズ・オウン・カントリー』(2017)や『帰らない日曜日』(2021)で頭角を現したジョシュ・オコナー。自信家で色気があって人を引きつけるものの、同時に自分をコントロールするのは苦手でキャリアはどん底。その事実を自覚しつつもナルシスティックに覆い隠す姿が人間味に溢れている。

 アートを演じるのは『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)のリフ役で注目を集めたマイク・フェイスト。アートはパトリックとは対照的で、落ち着いていて内向的で思いやりがあるが、理性が強過ぎて行動に移せないこともしばしば。矛盾を抱えた人間として、その心の動きを繊細に的確に表現している。

 3人には共通点がある。テニスに情熱を捧げていること、そして、生粋の勝負師であること。そんな彼らが、タイブレークにもつれ込むテニスのゲームさながらに息もつかせぬ恋のゲームを繰り広げる様を満喫したい。


テニスの映画的描写、勢いある映画音楽

 本作ではたびたび、タシ、パトリック、アートの愛の物語の比喩としてテニスの試合シーンが映し出される。撮影監督は『君の名前で僕を呼んで』でもルカ・グァダニーノ監督と組んだサヨムプー・ムックディプローム。本作は“テニス映画”ではないが、テニスの映画的描写を追求したそのカメラワークは必見だ。洗練されていてスタイリッシュ、加えてプレイヤーの葛藤や湧きあがる怒りを見事に伝えるものとなっている。

 さらに、音楽が素晴らしい。担当したのは『ソーシャル・ネットワーク』(2010)、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)、『ソウルフル・ワールド』(2020)などを手がけ、オスカーの獲得経験もあるトレント・レズナーとアッティカス・ロス。「今までに経験したことのないような勢いがある音楽が欲しい」というルカ・グァダニーノ監督のリクエストを受け、トレント・レズナーとアッティカス・ロスはテクノとエレクトロミュージックを音楽の基盤とすることに。絶えずリズムを刻み続ける心臓の鼓動のような音楽、とでも表現すればイメージしやすいか。生き生きと脈打つ音楽に乗り、登場人物たちの情熱、競争心、嫉妬、劣等感、愛情が届けられる。革新的な音楽にもぜひ注目を。


『チャレンジャーズ』

https://wwws.warnerbros.co.jp/challengers

2024年/アメリカ/131分/PG-12 

監督 ルカ・グァダニーノ
出演 ゼンデイヤ ジョシュ・オコナー マイク・フェイスト ほか
配給 ワーナー・ブラザース映画

※6月7日(金)より全国公開

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