『マッドマックス』サーガを振り返る

　『マッドマックス』（1979）、『マッドマックス2』（1981）、『マッドマックス／サンダードーム』（1985）から成る『マッドマックス』初期3部作。 第1作では、暴走族による犯罪が横行する近未来を舞台に妻子を殺された警察官マックスの復讐を描き、「車輪のついた西部劇」「マックスは侍のよう」などと評されることに。黒澤明監督の時代劇で三船敏郎が演じる役柄のような“正義のアウトロー”を、近未来バイオレンス・アクションのヒーローとして描いた功績は大きい。

　ビジュアル面ではとりわけ、第2作に革新性があった。続編は前作をなぞらえるのが通常だが、『マッドマックス2』はその定石を覆す。第1作から引き継いだのは“妻子を殺された元警官”という主人公の設定のみと言っていい。第1作では近未来とはいえ、まだ社会というものが成り立っていたが、第2作では社会が完全に崩壊した終末世界に。荒廃し、砂漠ばかりとなった世界を改造車や改造バイクを暴走させながら、パンクな無法者たちがテンション高く襲いかかってくる。そんな『マッドマックス2』がビジュアル化した＜終末世界バトル＞は定型となり、その後数多くの作品に影響を与えることに。第3作『マッドマックス／サンダードーム』でもその路線を究めることとなった。

　『マッドマックス』伝説は3部作で幕を閉じたかと思われていたが、ジョージ・ミラー監督は30年の沈黙を破り、第4作『マッドマックス　怒りのデス・ロード』（2015）を世に送り出す。30年で技術が格段に向上し、ジョージ・ミラー監督の創造性にようやく追いついたのだろう。ノンストップのカー＆バイクアクションは異次元へ。またもや、世界の映画ファンの度肝を抜くこととなった。

　『マッドマックス：フュリオサ』は単体でも楽しめるものではあるが、これまでの4作と合わせて楽しむことでより深く味わえるのは間違いない。『マッドマックス』サーガ、その革新性に改めて感嘆すること請け合いだ。

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