FLYING POSTMAN PRESS

橋本愛主演のエンパワーメント映画

社会的責任を持って役を演じられるか

──FLYING POSTMAN PRESSのコンセプトは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>です。橋本さんの人生を豊かにしてくれたカルチャー作品と言うと?

橋本 『エンドレス・ポエトリー』(2016)という映画です。その中の台詞に<愛されなかったから、愛を知ったんだ>というものがあり、青天の霹靂でした。“満たされないことによって何かが満たされるっていうことがあるの?”と衝撃を受けて。人生では後悔することもあるし、何かを失うこともあるものですよね。それでも、そこから何かを得られるんだと思えたら大きく変わります。すごく生きやすくなりました。『エンドレス・ポエトリー』を撮ったアレハンドロ・ホドロフスキー監督の姿勢も、私はすごく好きです。ホドロフスキー監督は世界中のさまざまな宗教をリサーチし、その中から自分にとって良いと思える思想や言葉を見つけてはつぎはぎし、自分が生きやすくなるためのヒントにしているところがあります。私も、何かひとつのものに傾倒するのではなく、いろんな世界を見渡しながらヒントを見つけられたらいいなと思っていて。そうすることでどんどん人生は豊かになり、生きやすくもなると思っているので。

──映画やドラマを世に送り出す側として、今、大切にしているのはどんなことですか。

橋本 俳優は企画の立ち上げからかかわっているわけではなく、ある程度できあがったところから参加して、それをさらに豊かにしていくという仕事だと思っています。創作のすべての段階にかかわっているわけではないんですが、ただ、この作品は誰のためにあるのか、この物語によって救われるのは誰なのか、ということは俳優の私もすごく考えます。もちろん、映画ひとつで社会全体を変えるなんてなかなかできることではないのはわかっています。でも、どうしてもその目線は捨てられないんです。奇跡が起こるかもしれないですし。社会的責任を持ってその役を演じられるかどうか。そこはこれからもちゃんと考えていきたいと思っています。


橋本 愛(はしもと あい)

1996年、熊本県出身。近年の出演作に映画『熱のあとに』(2023)、『ハピネス』(2024)、ドラマ『新宿野戦病院』(2024)。現在は大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』が放送中。4月5日に放送される、村上春樹の連作短編を原作としたドラマ『地震のあとで』の1話に出演する

『早乙女カナコの場合は』

https://www.saotomekanako-movie.com

2024年/日本/119分

監督 矢崎仁司
原作 柚木麻子『早稲女、女、男』(祥伝社文庫刊)
出演 橋本 愛 中川大志 山田杏奈 臼田あさ美 中村 蒼 ほか
配給 日活 KDDI

※3月14日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開

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