CINEMASPECIAL ISSUE
橋本愛主演のエンパワーメント映画
それぞれの人生に刺さるような映画
──本作はラブストーリーであり、女性たちの群像劇という観方もできる映画だと思います。
橋本 そうなんです。原作小説はまさに女性たちの群像劇になっていて、映画もそうなったらいいなと思っていました。タイトルは『早乙女カナコの場合は』ですが、映画を観るとちゃんと“それぞれの場合”が描かれているように感じられて。ちゃんと群像劇として立ち上がっていたのがうれしかったです。
──群像劇を演じる難しさはどんなところにあるのでしょうか。
橋本 この映画で考えると、お互いがエンパワーメントしないといけない。カナコとしてちゃんと麻衣子や亜依子をエンパワーメントできているのかという不安は常にありました。あと、原作小説でもそうでしたが、映画でもやっぱりカナコはアンカーで。麻衣子と亜依子は途中途中ですがすがしい表情を見せます。自分らしく生きやすくなったという、ある種のハッピーエンドに映画の途中で辿り着いている。でも、カナコはアンカーだから最後までモヤモヤしているんです。最後まで何か引きずりつつ、でも同時に輝いてエンパワーメントしないといけない。そういうところも難しかったです。
──出演オファーを受けた際、本作に携われることに喜びを感じたと。完成した今はいかがですか。この映画に携われて良かったと思う、いちばんのポイントは?
橋本 この映画の核の部分にはフェミニズムの精神があると思っています。そこを表立って描いているわけではないんですが、自然と根づいているというか。フェミニズムは女性だけのものだと勘違いされやすいですが、そんなことはないと思うんです。この映画の中でも、“男社会を生きているからこそ苦しんでいる男性の姿”もちゃんと描かれます。本来は女性だけではなくて、男性にとっても生きやすい社会をめざすのがフェミニズムなんですよね。すべてを包括するものだということを、この映画を通して自然と感じ取っていただけるのではないかと。そういう映画になったことがすごくうれしいです。あと、この映画では10代、20代、30代と、それぞれの年代の葛藤がちゃんと描かれています。だからこそ、観ていただいた方、それぞれの人生に刺さるような映画になっていたらいいなと。お客さんに届くのはこれからなのでドキドキしていますが、今はそう期待しています。