CINEMA
2月公開:アカデミー賞ノミネート作
長編アニメーション賞の頂点に立つのは
プログラムを超えて生きていく 心が芽生えたロボット・ロズの愛の物語
数々の名作、ヒット作を生み出してきたドリームワークス・アニメーションの最新作。ピーター・ブラウンの同名児童小説を原作に、『リロ&スティッチ』(2002)や『ヒックとドラゴン』(2010)などを手がけるクリス・サンダースが監督と脚本を務め、事故に遭って無人島で起動してしまった最新型アシスト・ロボットのロズが、野生動物たちとかかわり合い、偶然誕生の瞬間に立ち会ったひな鳥を育てるうち、心が芽生えていく様子を描き出す。ディズニーの古典映画や宮﨑駿監督作品から影響を受けたというクリス・サンダースは、伝統的な手描きアニメーションと革新的なCG技術を融合させ、印象派のモネがスタジオジブリの世界に命を吹き込んだかのような映像を作りあげることに成功。第97回アカデミー賞では長編アニメーション賞、作曲賞、音響賞にノミネートされている。
主人公のロズの声を担当するのは、『それでも夜は明ける』(2013)のルピタ・ニョンゴ、その友だちになるキツネのチャッカリには『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024)のペドロ・パスカル、ロズが育てる雁のキラリには、Netflixシリーズ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』(2022〜)で注目されたキット・コナー。日本語吹き替えキャストも、ロズに綾瀬はるか、チャッカリに柄本佑、キラリに鈴木福と、魅力的な面々が集結している。
映像がユニークかつクオリティが高い。1カットごとの情報量の多さや丁寧な仕上げ、躍動的で大胆なカメラワークはドリームワークス・アニメーション作品ではいつものことだが、これほど“手描き感”を感じられるものはなかったように思える。最先端のテクノロジーと絵画的なタッチを巧みに組み合わせたアニメーションが見ものだ。
そして何より、ストーリーが素晴らしい。無機質なものの代表格であるロボットが、有機的なものを象徴する自然や野生動物に触れ、影響され、変わっていく。とりわけ、仲間の力を借りながら雁のひなを育て、“食べる”“泳ぐ”“飛ぶ”という、渡り鳥にとって必要なことを手探りで教えていったその経験がロボットを変えた。成長した雁が飛び立つ姿を映すシーンがあるが、そこでロボットが浮かべる表情は“母親”そのもの。ロボットは心が芽生え、プログラムを超えて生きていくことになる。
生きる上で大切なことがこの物語には詰まっている。自分以外の誰かを思いやること、逆境においては助け合うこと、時にはルールを破って柔軟に対応すること。まさか、ロボットにこんなに心を動かされることになるとは。100%機械だけれど、繊細で表情豊かなロズを好きになり、感情移入しながら物語を満喫できるはずだ。
『野生の島のロズ』
2024年/アメリカ/102分
監督・脚本 | クリス・サンダース |
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原作 | 「野生のロボット」(福音館書店刊) |
声の出演 | ルピタ・ニョンゴ ペドロ・パスカル キット・コナー ほか |
配給 | 東宝東和 ギャガ |
※2月7日(金)より全国公開
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.