FLYING POSTMAN PRESS

映画が描くミッション、挑む人々

砦死守、サッカーチーム制覇、税金徴収
ミッションに挑む人々を描いた映画

 難しいミッションに挑むのは、罪人たちと剣術道場の道場主、自閉症の息子とその父親、真面目な公務員と7人の悪い奴ら。感動の人間ドラマも合わせて楽しめる3本の新作映画を紹介する。



集団抗争時代劇、新時代の幕明け

 『仁義なき戦い』(1973)などを手がけた名脚本家・笠原和夫が60年前に書き上げるも映画化には至らなかった幻のプロットをもとに、白石和彌監督が映画化。1868年、旧幕府軍vs新政府軍の戊辰戦争が起こる中、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟の一員だった新発田藩が裏切ったことで戦況は一変し、新政府軍の勝利へと一気に傾いていった。この史実に着想を得て、罪人たちが新発田藩の命運を握る砦死守作戦に臨み、死闘を繰り広げる様子をスケール感たっぷりに描き出す。

 妻を手籠めにした侍を殺した罪で捕らえられ、任務を果たせば無罪放免という条件で決死隊に駆り出された政を演じるのは山田孝之。新発田を守るために罪人たちと共に任務を遂行する剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎を演じ、キレ味抜群の殺陣を披露するのは仲野太賀。さらに、決死の任務を遂行する罪人たちに尾上右近、鞘師里保ら、鷲尾と共に罪人たちをまとめる決死隊隊長に野村周平。暗躍する新発田藩の家老・溝口内匠に阿部サダヲ、新政府軍参謀の山縣狂介に玉木宏が名を連ね、映画を盛り立てていく。

 日本映画が得意とするジャンルのひとつ、集団抗争時代劇の最前線がここに。刀、鉄砲、爆弾を組み合わせながら展開する迫力と意外性に満ちたアクションシーンに加え、決死の戦いに臨む人々のドラマにも胸が熱くなる。

罪人たちが砦の護衛作戦に挑む

 迫り来る新政府軍から新発田の地を守るべく砦を守る、というのが表向きの戦う理由だが、その実は新政府軍への寝返りを成功させるための時間稼ぎ。つまりは、新発田藩カーストの最上位にある者が最底辺にある者たちを最前線へと送り、捨て駒にしようというもの。罪人たちは“砦を守り抜けば無罪放免”という条件を信じ、たった数人の藩士と共に多勢の新政府軍と死闘を繰り広げることとなる。

 罪人たち+数名の藩士しかいない新発田藩側からすると、兵の数も武器の威力も大幅に上回る新政府軍には敵うわけがない。だが、足りない分は知恵と心意気で補い、思いがけず善戦することになる。定石を覆す一手で多勢の新政府軍を翻弄していく様子は痛快だ。さらに、クセ者揃いの決死隊のバラバラだった心が次第にひとつになっていく過程も丁寧に描かれ、スリルばかりではなく情感も満ちた物語となっている。

 集団抗争時代劇、復権。時代劇に追い風が吹く今こそ映画館で楽しみ、その独特の熱さを体感したい。


『十一人の賊軍』

https://11zokugun.com/

2024年/日本/155分/PG-12

監督 白石和彌
原案 笠原和夫
出演 山田孝之 仲野太賀 尾上右近 鞘師里保/玉木 宏/阿部サダヲ ほか
配給 東映

※11月1日(金)より全国公開

©2024「十一人の賊軍」製作委員会