CINEMASPECIAL ISSUE
映画が描くミッション、挑む人々
自閉症の男の子とパパの週末の旅
自閉症の息子の“推しサッカーチーム”決めるため、父と息子は週末ごとにドイツ国内の全56サッカーチームを巡る旅に出る。そんな実在する親子の姿を軽やかなユーモアを交えつつハートフルに描き、本国ドイツで大ヒット。監督を務めるのは、第55回ベルリン国際映画祭で銀熊賞、最優秀監督賞、最優秀女優賞を受賞した『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』(2005)を手がけたマルク・ローテムント。『100日間のシンプルライフ』(2018)などに出演するドイツの実力派フロリアン・ダーヴィト・フィッツが父のミルコを、新星セシリオ・アンドレセンが息子のジェイソンを好演。さらに、ミルコの妻でジェイソンの母ファティメを『7500』(2019)などに出演するアイリン・テゼルが演じる。
ドイツ国内の全サッカーチームを巡る中、さまざまなトラブルを乗り越えながら心を通わせていく父と息子を応援したくなること間違いなし。加えてスポーツ観戦気分も味わえる、秋にぴったりな1本に仕上がっている。
全サッカーチームを見て推しを決める
父ミルコと自閉症の10歳の息子ジェイソンのミッションは、ドイツのブンデスリーガ1部、2部、3部に所属する全56のサッカーチームのスタジアムを週末ごとに巡り、ジェイソンの推しチームを見つけること。毎週末にサッカー観戦できるなんて楽しそう、と思う人もいるかもしれない。だが、その実は楽しいばかりではない。自閉症のジェイソンの生活は独自のルーティンとルールに支えられ、そのうちのひとつでも守られないとパニックを起こしてしまう。“一般的にこういうものだから”という対処の仕方はご法度。ミルコは常にジェイソンに注意深く目を向け、息子の胸のうちを察し、その時々で対処していく必要がある。とは言え、ミルコ>ジェイソンという一方的な力関係で描いていないのが本作の素敵なところ。自閉症の自身にとっては困難だらけとわかっていても、勇気を振り絞って挑戦し続ける息子の姿に父は心動かされ、息子に積極的にかかわってこなかったこれまでの自分を省みることとなる。
父と息子それぞれを成長させる週末のミッション。がんばるふたりを応援しつつ、その行く末を見守りたい。
『ぼくとパパ、約束の週末』
2023年/ドイツ/109分
監督 | マルク・ローテムント |
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出演 | フロリアン・ダーヴィト・フィッツ セシリオ・アンドレセン アイリン・テゼル ほか |
配給 | S・D・P |
※11月15日(金)より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほかにて全国公開
©2023 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH