FLYING POSTMAN PRESS

胸アツ月映画×ロマンス×コメディ

スカーレット・ヨハンソン<凄腕PR>
チャニング・テイタム<NASAの責任者>
世界が目撃したのはリアルかフェイクか

 人類が初めて月面に着陸したのは1969年7月20日のこと。アメリカが開発した宇宙船アポロ11号による偉業であり、船長のニール・アームストロングが月面に最初の一歩を踏み下ろす様子はテレビで生中継され、全世界を熱狂させた。だがその後、“その生中継映像はフェイクだったのでは?”という都市伝説めいた説がささやかれることに。記念すべき7月20日の前日に日本で公開される映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は、その噂から着想を得て製作されたもの。人類が歩いたのは月の上か、それとも──?



人類初の月面着陸に関する噂から誕生

 月着陸船イーグルから一歩、また一歩と月面へと近づき、ついに月面に降り立った宇宙飛行士のニール・アームストロングは、こう口にした。「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ(That’s one small step for a man, one giant leap for mankind)」。そんな様子をテレビを通して見守ったのは5億人以上と言われるが、リアルタイムでは見られなかった若い世代でも、一度はその映像を目にしたことがあるだろう。もしもその映像がフェイクだったとしたら…? その噂にインスパイアされて、本作は誕生した。監督は、プロデューサーとして『フリー・ガイ』(2021)などを手がけるほか、監督や脚本家としても活躍するグレッグ・バーランティ。スカーレット・ヨハンソンが主演のみならずプロデューサーも担い、その手腕を発揮している。

 アメリカとソ連が激しい宇宙開発競争を繰り広げていた1960年代。物語の中心には、スカーレット・ヨハンソン演じるPRマーケティングの凄腕・ケリーと、チャニング・テイタム演じるアポロ11号の発射責任者・コールがいる。美しく華やかなルックスと巧みな話術、知略をもってNASAのスタッフはもちろん、世界中の人々を軽やかに欺いていく<セールスのプロ>のケリー。対するコールは、人類が月に降り立つという偉業を必ず成し遂げると信じて、真面目に実直に努力し続ける職人。ふたりは正反対と言っていい。だからこそ、たびたび衝突する。だが、その中で相手の情熱に触れて心を開き、やがては協力し合うように。だがその矢先、ケリーはウディ・ハレルソン演じる政府関係者のモーより衝撃のミッションを与えられる。失敗した時のために月面着陸のフェイク映像を撮影せよ、というミッションを。

 と、ここまでの情報から“陰謀説を描く映画なの?”と、思う人も多いかもしれない。だが、本作はそういった類のものではない。<月面着陸のフェイク映像を撮影する極秘プロジェクト>をフックに、かかわる人々を対立構図でスリリングに、ロマンスとユーモアもふんだんに交えて描きつつ、最終的にはプロフェッショナルたちの献身と情熱に焦点を当てる。つまり、フェイクを逆手にとって真実を伝える映画と言える。

 不可能と思えることを<信じる人>と、それを人々に<信じさせる人>。ふたりが行き着く先にあった予想外のドラマとは──。


“月”映画+ロマンティック・コメディ

 本作は、アメリカの有人宇宙飛行計画に携わったプロフェッショナルたちの献身と情熱をスリリングに感動的に描くものであると同時に、ふたりの人間が親密になっていく姿を映したものでもある。『ライトスタッフ』(1983)、『アポロ13』(1995)、『ドリーム』(2016)、『ファースト・マン』(2018)など、有人宇宙飛行計画にかかわる人間たちの好奇心や情熱を描いた映画は多くあるが、ロマンティック・コメディとして観ても楽しい、というのはこれまでになく新鮮だ。全編に笑いとときめきの要素がちりばめられている。

 スカーレット・ヨハンソン演じるケリーは、マーケティングとブランディングの天才だ。月面着陸や宇宙飛行士たちは彼女にとって“売りもの”であり、俳優を雇ってNASA職員としてインタビューを受けさせたり、ブランドとタイアップして宇宙飛行士たちにそのブランドのものを身につけさせたり、宇宙開発事業に税金を注ぎ込むことに難色を示す政治家を見事な口説き文句で落としたりと、次々と型破りなPRを展開していく。

 目的が手段を正当化するというケリーのやり方は、実直な職人であるチャニング・テイタム演じるコールにとっては理解できないものだ。いまだかつてない偉業を成し遂げること、挑戦すること自体に重きを置くコールは、PRに時間を割くのはもったいないと思っている。結果、対立が生じることになる。

 考え方や性格が正反対のふたりが衝突し合う中で互いの本質を知り、いつしか惹かれ合っていく。その流れはロマンティック・コメディの王道を往くものだ。また、スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム共に、ラブストーリーもコメディもお手のもの。ふたりの丁々発止のやり取りにたびたび笑わせられ、ふと見つめ合った瞬間にはその親密さに胸が高鳴ること間違いない。

 もうひとり、忘れてはならないのが影の実力者である政府関係者のモー。ウディ・ハレルソンがミステリアスかつ、ウィットに富んだ人物として演じるモーの暗躍により、ふたりの恋はしっちゃかめっちゃかに。期せずして“恋の盛り上げ役”となるモーにも注目しつつ、楽しんでほしい。


『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』

https://www.flymetothemoon.jp

2024年/アメリカ/132分

監督 グレッグ・バーランティ
出演 スカーレット・ヨハンソン チャニング・テイタム ウディ・ハレルソン ほか
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

※7月19日(金)より全国公開