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藤井道人監督新作、あの日に還る旅

藤井道人×シュー・グァンハン×清原果耶
映画『青春18×2 君へと続く旅』公開へ

 GW中、リアル旅行はできないものの、せめて旅気分だけは味わいたい。そんな人におすすめの“旅する映画”、『青春18×2 君へと続く旅』が5月3日(金・祝)より公開となる。

 本作の監督と脚本を務めるのは藤井道人。藤井監督と言えば、『新聞記者』(2019)をはじめとする社会派映画の名手という印象が先立つが、その実作風は幅広い。『余命10年』(2022)では“余命ものラブストーリー”に丁寧に人間ドラマを織り込み、感傷をあおることなく観客の目から涙を溢れさせ、『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』(2021)、『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』(2023)では実写とアニメーションの垣根を軽々と越えてみせた。今年もNetflix映画『パレード』が話題を呼び、映画作家として勢いに乗っている。

 『青春18×2 君へと続く旅』はそんな藤井監督の初の国際プロジェクト。国際的映画人のチャン・チェンが、台湾で人気を博したジミー・ライの紀行エッセイ「青春18×2 日本慢車流浪記」の映画化を企画し、藤井監督との仕事を切望して実現したという。アジア全域で活躍するシュー・グァンハンと清原果耶が主演を担い、胸を揺さぶるふたつの旅と、18年の時を超えて繋がる初恋の記憶を描き出す。


point of view

 本作ではふたつの旅が描かれる。ひとつは、清原果耶演じるバックパッカーのアミの台湾旅行。シュー・グァンハン演じる高校生のジミーがバイトするカラオケ店でふたりは出会う。スクーターにふたり乗りして台湾の街を駆け抜けたり、一生忘れられない映画デートをしたり。限られた時間を共に過ごしながら、ジミーは感性豊かで天真爛漫なアミに恋をする。“ここではないどこか”へと旅立ち、そこに生きる人と出会い、世界がグンと広がっていく。アミの台湾旅行には青春期の旅の醍醐味がギュッと凝縮されている。

 18年後、大人になり、ある大きな挫折を経験したジミーはアミが生まれ育った日本へと旅立つ。アミから届いたハガキを手にして東京から鎌倉、名古屋、新潟、そしてアミの故郷の福島へ。それはジミーにとって切なくも美しい初恋の記憶を辿る旅となり、自分を見つめ直す旅ともなる。

 ストーリーラインはオーソドックスとも言えるものだが、丁寧で的確な演出、情感豊かな演技、ドラマティックで美しいカメラワークが相まって、ありふれてなどいない、特別な1本に仕上がっている。

 よくある青春の1ページはこれ以上ないほど輝き、仕事に忙殺されて人生迷子になってしまうという、多くの大人にとって身に覚えのある瞬間もしっかりと重みと痛みを伴って届けられる。『余命10年』がそうであったように、観客はいつしかアミとジミーの物語に激しく胸揺さぶられ、最後にはほろりとひと滴、切なさと幸せに満ちた涙を流すことになるはず。青春恋愛ロードムービーの秀作がまたひとつ生まれた。


『青春18×2 君へと続く旅』

https://happinet-phantom.com/seishun18x2/

2024年/日本・台湾/123分 

監督・脚本 藤井道人
出演 シュー・グァンハン 清原果耶 ほか
配給 ハピネットファントム・スタジオ

※5月3日(金・祝)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開

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