SPECIAL ISSUEMUSIC
国境をも飛び越えるAyumu Imazu
こだわりはあるが、凝り固まらない
国境をも越えるAyumu Imazuの音楽
NYと日本を拠点にしながら英語・日本語を自在に使いこなし、作詞・作曲・ダンスの振り付けまで手がけるグローバルアーティスト、Ayumu Imazu。今年1月に配信した『Obsessed』は海外のアーティストたちが次々とダンス動画を上げるなど、TikTokで大バズり中。さらに3月に配信した新曲『BANDAGE』も話題。今のAyumu Imazuを形作る要素について深堀りしてみた。
14歳で渡米している経歴から、勝手に尖った印象をイメージしていたら、大きく裏切られた。肩の力が抜け、リラックスして話す姿勢、時折見せる屈託のない笑顔まですべてが自然体。音楽制作に徹底したこだわりはあるが、決して凝り固まらない。これが次世代なのかと思わされる、しなやかな強さに、この先どこまでも可能性を見せてくれそうな期待が高まった。
曲には触れてきたものすべてが表れる
──1月リリースの『Obsessed』が国内外のアーティストからも注目を集める中、3月には新曲『BANDAGE』がリリースされました。こちらはドラマ「恋をするなら二度目が上等」のED主題歌でもあります。
Ayumu Imazu(以下Ayumu) ドラマのお話をいただき、書き下ろしました。最初はもしかしたらドラマの雰囲気に合わないかなとちょっと心配だったところもありましたが、放送を見てみると作品にバッチリ合っていてほっとしています。
──毎話ドラマの先行きが気になる場面で『BANDAGE』のイントロが流れてさらにハラハラさせる感じが絶妙でした。前作『Obsessed』とはまた大きく違う印象です。
Ayumu 『Obsessed』は、ごく自然にできた曲というか。サビのワンフレーズのメロディーと歌詞が頭の中で同時にポンと出てきて、それをボイスレコーダーで録って、家に帰ってギターを弾いてコードをつけて、完成させたんです。本当に自然な流れでできた楽曲でした。
──『Obsessed』の反響は世界に広がっています。AyumuさんはZ世代代表と言われることも多いと思いますが、国境やジャンルを軽く越えていく感覚は、意識されているところもありますか?
Ayumu 自分がZ世代ということを考えたことはないですが、こういう音楽はこうあるべきみたいな感覚が壊れてきていることは、すごくいいことだと思っています。人はどうしても物事に名前をつけたがりますが、それがもうできなくなってきているぐらい、いろんな作品が出てきているので。僕も音楽を作る時は、ある程度のジャンル感はありますが、自分が今まで見てきたものや感じてきたものが無意識に出てくるものだと思っていて、あまり考えずに作るのがいちばん自分らしさが出るのではないかなと思っています。
──“表現する”ことについては、ご自身の中でどのように捉えておられますか?
Ayumu 曲作りは、自分の気持ちをいちばん表現できるものだと思っています。ライブは、どちらかと言うといつも音楽を聴いてくださるファンの方々と一緒に音楽を楽しみたいという気持ちが強いんです。もちろんかっこいい演出をしてかっこいい表現をしたいという思いはあるのですが、表現するという意味でいちばん力を入れているのは、やはり作詞と作曲の部分です。自分の思い描く形にしたくて、表現の仕方や歌詞の言い回しにはとてもこだわります。歌う時は、それらを気楽に楽しんでいる感覚です。
──とはいえ、ライブでもサウンド面や照明などの演出まですべてご自身で見ていらっしゃいます。ご自身の世界観はどのように作られていますか。
Ayumu 自分のイメージするものが強くあるので、そういったイメージを作り込むためにも、人に任せるところはもちろん任せますが、自分でできるところは自分で行うようにしています。これまで聴いてきた音楽から受けたものは大きくて、小さい頃からダンスレッスンで無意識で聴いていたニュージャックスイングというジャンルだったり、HIP HOPでブラック・アイド・ピーズなどの音楽は今の僕のルーツになっています。
──幼少の頃から触れてきたダンスミュージックの影響が大きいんですね。
Ayumu 6歳でダンスを始めた時は、母親にダンススタジオに連れて行かれただけだったのですが、負けず嫌いだったので、発表会などがあると、“絶対に自分がセンターで踊る!”という気持ちでがんばって、そこから今まで続けてきました。きっと目立ちたがり屋で、注目を浴びるのが好きだったんでしょうね。
いつでも自分が変化できるようにしている
──アーティストとしていちばん大事にされていることは何ですか?
Ayumu いちばん大事にしていることは、「自分はこれだ」と決めつけないことかもしれません。音楽って時代の流れもあるし、それにいつでも付いていけるように、自分をちゃんと持ちつつ、柔軟にやっていきたいと思っています。最初はなりたいアーティスト像のようなものもあったのですが、自分も変わるし、ファンの方が求めるものも、時代が求めるものも変わっていくから、ソロでアーティスト活動を始めてからは特に、頑固になったらいけないなと思うようになりました。
──徐々に変わってきたんですね。
Ayumu そうですね。変えたと言うより、調整してきたという感覚かもしれないです。ここはあまり気にしなくていいなとか、ここはちょっと気にしたほうがいいかもみたいなものが積み上がって、という感じですね。そうすることで、今の自分はこう思っているというフレッシュさが出るのかもしれません。
──ほかにもご自身に影響しているものはありますか。
Ayumu NYの街並みだったり、空気感もすごく影響していると思います。街の香りだったり空気。曲を書く時にもそうしたイメージから生まれることもあって、日本で作る曲とアメリカで作る曲にも違いが出てくるのが面白いです。
──14歳から約3年半、NYにアーティスト留学に行かれて、帰国後もまたNYを拠点にしようと思われたのはどういった思いからですか?
Ayumu NYに行って即興ダンスにハマり、さらにダンスが好きになって高校2年で帰国しました。そこから1年半か2年ほどは日本にいたのですが、高校を卒業して、自分でお金を貯めてもう一度NYに戻ってからはやっぱりNYがいいなと思い、NYを拠点にしながらNYと日本を行き来するようになりました。
──AyumuさんにとってはNYのほうが居心地が良かったのでしょうか。
Ayumu 居心地の良さもありますし、自分がアーティストとして刺激を受け、いちばん成長できる場所なのだと思います。今NYでは曲作りなど制作を中心に、日本に帰ってきた時はライブや撮影を中心に行っているのですが、NYって本当にいろいろな人たちがいて、いろいろなことをしてみんながんばっている街なので、僕もありのままでそこにいることができるというか。日本だとどうしても気を張ってアーティストのままでいるという感覚なのですが、NYだとまずひとりの人間として成長して、それがアーティスト活動にも影響している感じです。
NYの自宅の近くのタイ料理をリピート中
──FLYING POSTMAN PRESSのコンセプトは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>なのですが、ほかにもNYの街からライフスタイル面で影響を受けたことはありますか?
Ayumu それはたくさんあります。アメリカの方々はストレートにものを言う人が多く、自分の意見を持っていないと相手にされないところもあるので、性格的な面でも影響を受けたと思います。あとは、みんなジムに行くんです。ほんとにみんな。高校生とか大学生も、男の子も女の子も。ジムの数も多くて、価格も誰でも行けるように設定されているので、自分も行くようになりました。
──ご自宅で音楽はかけておられますか?
Ayumu 部屋の中で流す時もあれば流さない時もあります。たまに音楽を聴きたくない時もあるし、特に見るわけではないのですが、テレビをつけて音だけ聞いている時もよくあります。外を歩く時も、聴く時もあれば聴かない時もあります。音楽をかけると音楽の世界にグッと入ってしまうので、イヤホンはつけているけどあえて音楽は止めて、今自分はここで何をしているのかに意識を向ける時もあります。
──ご自身の生活の中でのこだわりはありますか?
Ayumu 居心地の良さは自分の中で結構大切にしているかもしれないですね。特にNYと日本を行き来しているから、落ち着ける場所がなくなってくるんです。だからこそ、自分が安心できる場所を作っておくことは大事だなと思っています。NYの家は、少し散らかっているくらいが居心地がいいです。よく引っ越しをするんですが、住む場所が新しくなると、家の周りに自分の好きなところを見つけるのが好きで、ごはん屋さんもそうだし、息抜きをするためにすぐに行けるような場所をまず探します。
──NYでもお気に入りの場所がありますか?
Ayumu NYだと家の近くに好きなレストランがあるんです。タイ料理のお店なのですが、そこはいつも日本から帰るとその日か次の日には食べに行きます。ほかにも中華料理のテイクアウトのお店とか、好きなお店がいくつかあって、リピートしています。日本では引っ越しをすると、必ず近くの銭湯を探します。あとは牛丼屋かな(笑)
Ayumu Imazu
2000年、大阪府出身。6歳よりダンスをはじめ、14歳より約3年半アメリカ・NYのアーティスト留学を経験後、活動の拠点をアメリカと日本に置いて活動。2024年1月に配信した『Obsessed』が世界的ヒットを続ける中、3月に『BANDAGE』を配信
digital single 『Obsessed』
配信中
digital single 『BANDAGE』
配信中