FLYING POSTMAN PRESS

最強の陰陽師・安倍晴明、始まりの時

1100年の時を超えてスクリーンに蘇る
最強の呪いに挑む若き学生・安倍晴明
今、ヒーローが生まれる

 4月19日(金)より公開中の映画『陰陽師0』は、実在した<最強の呪術師>安倍晴明の若き日を描いた1本。青春映画であり、バディ探偵ものであり、新感覚のアクションを楽しめる映画でもあり。GW中の鑑賞にぴったりなエンターテインメント・ムービーを紹介する。



そもそも陰陽師って?

 そもそも陰陽師とは何者なのか。陰陽師とは、天文や気象観察、暦の作成、時間の測定に始まり、吉兆を占ったり、呪いや祟りから都を守ったりしていた人々であり、国家公務員だった。その成り立ちは奈良時代から平安時代にかけて、と伝えられている。現代人としては占い師、あるいは呪術師が国家公務員だったという事実には驚いてしまうが、亡き人の怨念が不穏な出来事を起こしているという占いの結果で遷都が決まっていた時代だ。人々が怨霊に怯え、死は穢れとされていた時代において、陰陽師は必要不可欠な存在だったワケだ。

 『陰陽師0』の主人公・安倍晴明は史実に残る人物。921年2月21日に誕生し、花山天皇や一条天皇、藤原道長のもとで働き、85歳でこの世を去るまで生涯現役だった最強の陰陽師と伝えられている。

 そんな晴明が、同じく実在の人物であり、雅楽家として名高い貴族の源博雅と共に怪奇事件を解決していく姿を著した夢枕獏による人気小説シリーズ「陰陽師」が本作の原作なのだが、描かれているのは原作にはないオリジナルの物語だ。

 天才と称されるほどの呪術の才を持つも、陰陽師になる意欲も興味もない人嫌いの変わり者であった若き日の晴明は、貴族の博雅から皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の真相究明を頼まれる。衝突しながらも共に捜査する晴明と博雅だったが、ある学生の変死をきっかけに平安京をものみ込む陰謀に巻き込まれていく。

 脚本と監督を担うのは原作小説シリーズの長年のファンであり、いつかは自身の手で映像化することを願っていた佐藤嗣麻子。その佐藤監督を信じた原作者の夢枕獏が、「今、『陰陽師』を映画化するなら監督はこの人に」と作品を託し、晴明の<始まりの物語>を映画で織り上げることとなった。


『陰陽師』シリーズ初の青春映画

 原作小説の主人公・晴明は40歳前後、成熟した大人の男性として描かれている。一方、『陰陽師0』の主人公・晴明は27歳。呪いや祟りから平安の都を守る陰陽師を育成する学校兼省庁の<陰陽寮>で学ぶ学生という設定だ。

 実際に陰陽師として活躍できる人間はひと握りとあって、<陰陽寮>では日々激しい競争が繰り広げられている。だが本作の主人公・晴明は出世争いなんてどこ吹く風。陰陽師になる気はさらさらなく、頭にあるのは自身の両親を殺した者を見つけ出し、復讐することのみ。孤高の天才として周囲には煙たがれており、ひとことで言うと浮いている。

 そんな晴明が生涯の相棒となる存在に出会い、共に苦難に立ち向かい、運命を決める一歩を踏み出すまでを描いた本作。晴明は天才だが完全無欠などではなく、迷ったり、心が折れかけたりもする。その心の動きが丁寧に描かれるため、観進めるほどに自然と晴明に肩入れし、心を寄せることになるはず。そして、“特別な若者の特別な物語”などではないと気づくはずだ。未熟な若者がもがきながらも成長していく姿に共感し、胸打たれる、青春映画の王道を往く1本に仕上がっている。


最高&最強なバディが事件に挑む


 本作のストーリーラインは前述の通り。晴明と博雅が力を合わせて<初めての怪奇事件>の真相を解き明かそうと奮闘することとなる。

 晴明を演じるのは山﨑賢人、博雅を演じるのは染谷将太。山﨑が演じるクールで風変わりな晴明と、染谷が演じる実直で心あたたかい博雅は事あるごとに衝突するが、“正反対の者同士は惹かれ合う”を実証しているかのようでもある。晴明>博雅という一方的な力関係のようでいて、博雅の真っ直ぐさが迷える晴明の寄る辺となったり、ふと博雅が漏らしたひとことが難題突破の鍵となったりと、実は力関係は同等というのが面白い。事件の謎を解き明かしていく過程もふたりの掛け合いも見ものな、バディ探偵ものとしても楽しい1本となっている。和製ホームズ&ワトソン、ここに誕生。“ふたりで最高で最強”なバディに注目を。


スリリングで雅な『陰陽師0』流アクション

 本作において晴明と博雅は人間のみならず、“この世ならざる者たち”とも戦うことになる。最高峰のVFX技術を駆使して作り出された“この世ならざる者たち”のビジュアルには目を奪われること間違いない。そして、改めて山﨑賢人のアクションに魅了されるはず。

 映画『キングダム』シリーズ(2019〜)をはじめ、これまで多くの大作で期待を裏切らぬアクションを展開してきた山﨑だが、本作でもすごいものを見せてくれる。持ち味であるダイナミックさ、スピード感、キレはもちろんのこと、今回はそこに“雅”まで加わった。晴明が戦う姿を舞い踊る姿と見紛うほど、その姿は美しい。

 陰陽師の真骨頂である呪術も、本作のアクションシーンをさらにユニークなものとしている。佐藤監督から呪の作成と作品全体の呪術監修を託されたのは、呪術や風水、民俗学の深い知識を持つ作家の加門七海。その加門が古文書や中国道教の呪文や印などを参考にしつつ考案した本作オリジナルの呪を、山﨑は見事に習得した。難敵を前にして呪文を唱えつつ、10本の指と関節を巧みに組み合わせて印を結んでいく晴明は必見。胸を躍らせながら楽しんでほしい。

 さらに、忘れてはならないのが博雅の笛。戦いの場で音楽がどう生かされるのか、それは観てのお楽しみ。ひとりでは乗り越えられない壁も、ふたりで力を合わせれば乗り越えられる。そんなことを博雅の笛が伝えている。


『陰陽師0』

https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/

2024年/日本/113分

脚本・監督 佐藤嗣麻子
原作 夢枕 獏「陰陽師」シリーズ(文藝春秋)
出演 山﨑賢人 染谷将太 奈緒 安藤政信 村上虹郎 板垣李光人 國村 隼/北村一輝 小林 薫 ほか
配給 ワーナー・ブラザース映画
※全国公開中

©2024映画「陰陽師0」製作委員会