FLYING POSTMAN PRESS

エンタテインメントな初夏映画

名(メェ~)探偵は、沈黙しない羊たち
前代未聞の迷(メェ~)宮ミステリー

 昨年末に公開された予告編が日本のSNS上でバズりまくり。ドイツ出身のレオニー・スヴァンが著した小説「ひつじ探偵団」を原作に、3DCGアニメーション映画『ミニオンズ』(2015)をピエール・コフィンと共に監督したことで知られるカイル・バルダが監督を務めて実写映画化。ある日、大好きなご主人が殺され、そのご主人からミステリーの英才教育を受けた“沈黙しない”羊たちが、ご主人の死の謎を解明しようと捜査に乗り出す。

 羊をこよなく愛する(だが、殺される)ご主人のジョージを演じるのは、ヒュー・ジャックマン。羊たちに怪しまれる犯人候補の人間たちに、エマ・トンプソン、ニコラス・ガリツィン、モリー・ゴードン、ホン・チャウら個性と実力を併せ持った面々が。さらに、羊たちの声を演じるキャストも実力派揃い。頭脳明晰なリーダー・リリー役のジュリア・ルイス=ドレイファス、孤高の存在であるセバスチャン役のブライアン・クランストン、抜群の記憶力を誇るモップル役のクリス・オダウド、群れの平穏を保とうとするリッチフィールド卿役のパトリック・スチュワートらが妙演を披露している。

 殺人事件の被害者は羊飼い。その殺人事件の犯人を見つけ出すべく名探偵が現れる……と、ここまではどこかで聞いたことのある話。その名探偵が、もふもふのかわいい羊たちだとしたら話が変わってくる。“沈黙しない”羊たちが探偵役を務めるミステリーなんて最高か。実際、最高に楽しい映画に仕上がっている。トーンやテイストは実写版の『ピーターラビット』シリーズ(2018~)に近いものがあるかもしれない。羊たちのビジュアルはかわいらしさとリアルさを兼ね備えていて、キャラクターは個性豊かだ。羊でありながらその言動は人間味に溢れ、それでもやっぱり“羊らしい”言動もちょこちょこ飛び出し、時には笑いを、時にはサプライズをもたらしている。

 ミステリー・コメディとして気軽に楽しめる1本であると同時に、描いていることは意外にも深い。例えば、“群れ”の中で生きていく難しさや、死をどう受け止めたらいいのかということ。羊たちの姿を観ながら深くうなずいて共感し、学びを得る瞬間もあるはずだ。

 果たして、名(メェ~)探偵たちは犯人を見つけ出し、ご主人の無念を晴らすことができるのか? 前代未聞の迷(メェ~)宮ミステリーが今、始まる。

『ひつじ探偵団』

https://hitsuji-tanteidan.jp

2026年/アメリカ・イギリス/109分

監督ン カイル・バルダ
脚本・原案 クレイグ・メイジン
原作 レオニー・スヴァン「ひつじ探偵団」(早川書房刊)
出演 ヒュー・ジャックマン エマ・トンプソン ニコラス・ガリツィン モリー・ゴードン ホン・チャウ ほか
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

※5月8日(金)より全国公開


クイズ番組の最終盤、衝撃の0文字解答
知略と情熱がぶつかるクイズ・ミステリー

 直木賞作家の小川哲が著した同名ベストセラー小説を原作に、『ハケンアニメ!』(2022)や『沈黙の艦隊』シリーズ(2023~)などを手がける吉野耕平が監督を務めるほか、おかざきさとこと共に脚本も担って映画化。クイズ番組の最終問題で、問題が1文字も読まれないうちに早押しボタンを押し、解答者のひとりである本庄絆が正解する。その不可解な“0文字解答”の謎を、本庄の対戦相手だった三島玲央を主人公に据え、解き明かしていく。

 豊富なクイズ知識と論理的思考を併せ持つ三島玲央を中村倫也、“0文字解答”をやってのけた本庄絆を神木隆之介、番組を盛り上げるためなら手段を選ばない総合演出の坂田泰彦をムロツヨシ。3人の演技巧者たちが繰り広げる、熱くてスリリングな頭脳戦から目が離せない。 なぜ本庄絆は問題を1文字も聞かずに正解できたのか? やらせ? 不正? それとも魔法? ミステリーとしても人間ドラマとしても秀逸な1本が誕生した。

 『ハケンアニメ!』などで証明してきた吉野耕平監督の“画で伝える力”が、本作でも威力を発揮している。映画の冒頭からして見ものだ。クイズの解答者たちの思考の迷宮を鮮やかに可視化したシーンを観た瞬間、物語へと引き込まれていった。もちろん、“画で伝える”ためには俳優の確かな演技力も必要不可欠なのだが、そこは中村倫也、神木隆之介、ムロツヨシと各世代の実力派揃い。それぞれが演じる人物が抱えるジレンマや葛藤を、細やかに的確に表情や仕草に乗せて伝えている。クイズを解答する者たちと、彼らを演出する者との駆け引きも見もので、三島VS本庄、三島VS坂田などと、組み合わせを変えながら繰り広げられる頭脳戦は実にスリリングだ。

 さらに印象的なのが、“なぜ0文字解答はなされたのか?”という問いの答えを探しながら、いつしかクイズ番組にかかわった人々の人生へと繋がっていく様子。クイズと、クイズにかかわる人々を描いた1本。答えを探し続ける人々の人生の物語を楽しみたい。

『君のクイズ』

https://yourownquiz.toho-movie.jp/

2026年/日本/119分

監督 吉野耕平
脚本 おかざきさとこ 吉野耕平
原作 小川 哲『君のクイズ』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演 中村倫也 神木隆之介 ムロツヨシ ほか
クイズ監修 QuizKnock
配給 東宝

※5月15日(金)より全国公開

©2026 映画『君のクイズ』製作委員会