FLYING POSTMAN PRESS

だから、このシリーズ映画は面白い

愛せる主人公、期待を上回るアクション
外さないシリーズ映画、良質な続編

 映画がヒットすれば続編が作られるものだが、続編を成功させるのは実は難しいものだ。その点、この春公開される続編2本は成功例。ロマンティックコメディとクライムアクション、シリーズのファンの心を掴んで離さないポイントとは。



大人気ロマンティックコメディ第4作
ブリジット・ジョーンズが生きる“今”

 ヘレン・フィールディングによる世界的ベストセラー小説シリーズを原作としたロマンティックコメディシリーズの第4作。主人公はいつも通り、レネー・ゼルウィガーが演じるブリジット・ジョーンズ。第3作では思いがけず妊娠し、コリン・ファースが演じる最愛のマーク・ダーシーと紆余曲折の末にゴールイン。その後、ふたりの子どもに恵まれ家族で幸せに暮らしていたが、予期せずマークを喪い、悲しみに暮れながらも、やがては今を受け入れて一歩前へと歩み出すブリジットの姿が描かれる。

 ブリジットの新たな恋の相手としてキウェテル・イジョフォー、レオ・ウッドールが参加するほか、第1作・第2作でブリジットがマークとの間で揺れたダニエル役のヒュー・グラントがシリーズに復帰。さらに、『To Leslie トゥ・レスリー』(2022)を手がけたマイケル・モリスが監督を務め、コメディとロマンス、人間ドラマをバランス良く織り込んでいく。

 『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)から20余年。いつだって笑いとときめき、勇気を届けてくれたシリーズの集大成がここに。ブリジット・ジョーンズの止まっていた時間が今、再び動き出す。


point of view

 主人公のブリジット・ジョーンズを20年以上演じ続けるレネー・ゼルウィガーは本シリーズについて、「仲間たちと紡いできたこのシリーズは私自身の数十年と人生経験の記録でもある」と語る。確かな演技力を持つレネー・ゼルウィガーだが、ブリジット・ジョーンズを演じる時には説得力がいっそう増すように思えるのは、演じ手と役柄の人生経験が重なり、物語の中に真実の瞬間がいくつも生まれるからなのだろう。

 ブリジット・ジョーンズは純真無垢な女性ではない。頭が良くて思いやりもある。でも同時に大酒飲みで毒も吐き、誘惑に負けてダメだとわかっていることもしてしまう。だからこそ、観る側は彼女に共感できる。ダメなところもあるけれど愛すべき友だちを見守るように、ブリジットの失敗と成長の日々を見守ってこられたわけだ。

 今回もやはり、ブリジットを見守りながら胸が締めつけられるような思いになれば、ときめきもし、もちろん、笑わせてももらえる。でもそればかりではない。50代になった彼女は人生の深みを体現し、シリーズ史上最大の感動を届けてくれる。そして、観る側はブリジットの物語の真髄を見ることになるはず。今の自分を受け入れて生きていくことが大切と、いつだって彼女はその身をもって教えてくれていたのだと。

 ブリジット・ジョーンズに共感できるのは女性たちだけではない。今の自分を受け入れて生きていきたいと願うすべての人に響く物語がここに。


『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』

https://bridget-jones-movie.jp/

2025年/イギリス・アメリカ/125分

監督 マイケル・モリス
出演 レネー・ゼルウィガー キウェテル・イジョフォー レオ・ウッドール コリン・ファース ヒュー・グラント ほか
配給 東宝東和

※4月11日(金)より全国公開

©2024 UNIVERSAL STUDIOS, STUDIOCANAL AND MIRAMAX



大ヒットアクション『ベテラン』第2作
悪人を罰する犯人は殺人鬼かヒーローか

 韓国で1340万人の観客を動員したクライムアクション『ベテラン』(2015)の9年ぶりの第2作。『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021)や『密輸 1970』(2023)を手がけるリュ・スンワンが第1作に続いて監督を務め、『ソウルの春』(2023)などに出演するファン・ジョンミンが主人公である凶悪犯罪捜査班のベテラン刑事ソ・ドチョル役として続投。さらに、凶悪犯罪捜査班に加わる新人刑事パク・ソヌ役に注目の俳優チョン・ヘイン。犯罪と戦うベテラン刑事と犯罪を憎む新人刑事がタッグを組み、前作よりパワーアップしたアクションを繰り広げていく。さらに、凶悪犯罪捜査班のメンバーとしてオ・ダルス、チャン・ユンジュ、オ・デファン、キム・シフ、アン・ボヒョンら韓国の個性豊かな俳優陣が集結し、抜群のチームワークを発揮する。

 第1作でソ・ドチョル刑事が立ち向かったのは巨大財閥。今回は、法の網をすり抜けた悪人たちを粛正する報復殺人を繰り返す犯人と対決する。善悪の境界線を揺るがす犯人にベテラン刑事はどう立ち向かうのか。それぞれの正義がぶつかり合う様子に興奮が止まらない。


point of view

 アクション映画の続編は、アクションシーンを前作以上のものにできるかが成功の鍵を握る。その高いハードルを見事に乗り越えた本作。ベテラン刑事役のファン・ジョンミンは、キャラクターの個性が乗った熱くて骨太なアクションを披露。新人刑事役のチョン・ヘインは、意外性に満ちた動きと鋭いキレ味で楽しませてくれる。

 カメラワークも印象的だ。前作より臨場感に満ちたその視点。あえて極端な位置に人物を配したり、フレーム内の全人物にフォーカスを合わせたりと、トリッキーな演出も取り入れつつ、スリルと人間ドラマを増幅させている。

 主人公が戦う理由もシリーズのファンを引きつける大切な要素になる。今回はいわば、正義のための戦いだ。追う側と追われる側、それぞれが信じる正義をぶつけ合わせることとなる。心あるアクションに心動かされること間違いない。


『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』

https://veteran-movie.com/

2024年/韓国/118分

監督 リュ・スンワン
出演 ファン・ジョンミン チョン・へイン アン・ボヒョン オ・ダルス ほか
配給 KADOKAWA KADOKAWA Kプラス

※4月11日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開

©2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED