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ポン・ジュノ監督作『ミッキー17』

任務は死にゲー、次々死んでは生き返る
“命”使い捨てワーカーvs強欲な権力者
ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』

 『パラサイト 半地下の家族』(2019)で世界の映画ファンを熱狂させたポン・ジュノの最新作『ミッキー17』が、3月28日より日本で公開となる。今度の主人公もやはり、最底辺にいる人間。次々と死んでは生き返るという“死にゲー”を任務とする主人公は、身勝手にして強欲な権力者たちにどう立ち向かうのか。いざ、逆襲の幕が上がる──。


どん底からの逆襲エンタテインメント

 『パラサイト 半地下の家族』において第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール、第92回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞したポン・ジュノが監督と脚本を務めた最新作。エドワード・アシュトンが著した小説「ミッキー7」を原作に、宇宙開拓下において、危険な任務で命を落とすたびに過去の記憶を受け継いで生き返る主人公ミッキーの姿をブラックユーモアを交えつつ描いていく。

 失敗だらけの人生を送る主人公ミッキーは、“何度でも生まれ変われる”夢の仕事を手に入れたはずだった。だが、その実態は身勝手な権力者の命令により、次々と死んでは生き返るという過酷な任務。宇宙開拓を推し進めるブラック企業のどん底で、ありとあらゆる方法で搾取され、死んでは生き返り続けてついに17号となったミッキーの前にある日、手違いで自分のコピーである18号が現れ、事態は一変。ふたりのミッキーは権力者たちへの反撃を決意する。

 17号と18号、ふたりのミッキーを大胆に演じ分けるのは『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)や『TENET テネット』(2020)のロバート・パティンソン。ミッキーのソウルメイトのナーシャを『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(2022)で注目を集めたナオミ・アッキー、ミッキーの悪友ティモを『NOPE/ノープ』(2022)のスティーブン・ユァン。さらに、ミッキーを使い捨てにする強欲なボスとその妻をマーク・ラファロ、トニ・コレットら演技巧者たちが強烈に体現し、映画を盛り立てる。

 半地下どころか、どん底で生きる使い捨てワーカーによる逆襲エンタテインメント。その行き着く果てとは──。


ポン・ジュノの作家性、人間を描く映画

 ポン・ジュノはハリウッド大作を撮ってもやはりポン・ジュノだ。<自分のコピーを作ることができる近未来><移住先を探す人間たちによる宇宙開拓>といったSFの定番モチーフを取り入れつつ、そこが要にはなっていない。やはりいつも通り、登場人物たちを極限状態へと追い込み、その中で人間の本質を浮き彫りにすることに注力している。衝撃的でひねりの効いた展開を次々と繰り出しながら、現代社会が抱える問題を自然な形で物語に潜ませるのもいつものこと。ブラックユーモア、サスペンス、アクションの要素をミックスさせつつ、ジャンルを軽やかに越えていく物語り方も健在だ。ロバート・パティンソン、マーク・ラファロ、トニ・コレットらキャスト陣が、そんなポン・ジュノの世界を楽しみながらノリノリで演じているのも伝わってくる。時折飛び出すクセの強い表現に驚かされつつ、新鮮味を感じること間違いない。

 宇宙を舞台にしながらもスペースオペラにはせず、泥臭い人間の逆襲劇を描いたポン・ジュノ。その作家性を再確認できる、ファンも納得の1本に仕上がっている。


『ミッキー17』

https://wwws.warnerbros.co.jp/mickey17

2025年/アメリカ/137分

監督・脚本 ポン・ジュノ
原作 エドワード・アシュトン「ミッキー7」(早川書房)
出演 ロバート・パティンソン ナオミ・アッキー スティーブン・ユァン トニ・コレット マーク・ラファロ ほか
配給 ワーナー・ブラザース映画

※3月28日(金)より全国公開

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