FLYING POSTMAN PRESS

3月公開:アカデミー賞ノミネート作

アニメーションの未来の幕開け
洪水に見舞われた世界を生きる黒猫
息をのむ85分、壮大で哲学的な映像体験

 監督・製作・編集・音楽を手がけた『Away』(2019)で、アヌシー国際アニメーション映画祭コントルシャン賞ほか数々の映画賞を受賞し、鮮烈の長編デビューを飾ったラトビアのクリエイター、ギンツ・ジルバロディスの長編監督第2作。洪水に見舞われた世界を舞台に、時には流れに抗い、時には流れに身を任せる1匹の猫とさまざまな動物たちの旅路を、一切の台詞なしに描き出す。85分間の圧倒的な映像体験はまたも世界の映画人たちを驚かせ、魅了し、昨年のアヌシー国際アニメーション映画賞では審査員賞、観客賞ほか計4つの賞を受賞。第97回アカデミー賞では長編アニメーション賞、国際長編映画賞にノミネートされ、長編アニメーション賞を受賞した。

 鬼才ギレルモ・デル・トロは「アニメーションの未来の壮大で息をのむような幕開け」と称賛。アニメーション表現に一石を投じる、革新の1本が誕生した。

 全編にわたり台詞はひとこともなく、映像と音楽ですべてを伝えている。主人公は1匹の黒猫だ。世界が洪水に見舞われる中、生きる場所を求めて黒猫は旅立つ。そして、旅の途中で出会った動物たちと力を合わせることを覚え、次々と訪れるピンチを乗り越えていく…というのは、著者が本作を観て勝手に作ったストーリーラインであり、これが正解というわけではない。観る人それぞれが自由に想像を膨らませ、それぞれのストーリーを思い描いたらいい。

 その壮大で美しい映像には、哲学的なメタファーや人生の教訓がちりばめられている。絶望からどう立ち上がるのか。不安や孤独とどう向き合うのか。自分とは違う存在をどう受け入れ、かかわっていくのか。どんな行動の果てに希望はあるのか。どっぷりとその世界に浸りながら、いつの間にか深く思考することになるはず。アニメーションは<映像>と<体験>であり、その表現には限界がないことを教えてくれる1本だ。

『Flow』

https://flow-movie.com/

2024年/ラトビア・フランス・ベルギー/85分

監督・脚本・音楽 ギンツ・ジルバロディス
音楽 リハルズ・ザリュペ
配給 ファインフィルムズ

※3月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開

©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.