CINEMASPECIAL ISSUE
神尾楓珠×桜田ひよりの初共演映画
目の力に刺激を受け、心を動かされた
──役柄についてはいかがでしょう。神尾さんは丈流の人物像に、桜田さんは美優の人物像に共感できるところはありましたか。
神尾 丈流は就職を控え、将来に対してなんの希望も持てないでいる大学生です。僕も高校生の時、丈流と同じような感情になったことがありました。高校卒業後の進路をどうしようと考えた時、将来に期待はしていないものの、周りに負けたくはないという気持ちもあって。丈流が葛藤する様子にはすごく共感できました。
桜田 美優は丈流とは違い、夢に向かってがんばっている人です。でも、美優は自分が好きなことをしているはずなのに、ちょっとしたことで挫けてしまったり、失敗してイライラしている自分にもっとイライラしてしまったり。私も好きでこの仕事をしているはずが、壁にぶち当たってもどかしく思ってしまうことがあります。だから、美優のそういうところにはすごく共感しました。
──それぞれ、相手の演技に刺激を受けることもありましたか。
神尾 ひよりちゃんは本当に目が強いです。引き込む力が強いというか。このまま目が合い続けていたら吸い込まれてしまうんじゃないかと思うぐらいでした。また、スイッチが入った時のひよりちゃんの目の力はさらにすごくて。例えば、丈流と美優がカフェでギクシャクしてしまうシーンの目の力はすごかったです。
桜田 “今、いちばん顔を見たくない相手と話さないといけない”というシーンで。美優としては煮えきらない気持ちを抱えつつ、丈流に早く帰ってほしいという気持ちもありつつで向き合っている。それで、すごくにらんだことを覚えています(笑)。でも、神尾さんこそ目がとても印象的でした。美優は真っ直ぐに人の目を見るタイプですが、丈流は人と目が合ってもすぐに逸らすタイプ。だからこそ丈流と目が合い続けるカフェのシーンでは、“やっと目が合った”感がありましたね。自分の内側まで見られているような気がしてハッとしましたし、心が動かされました。
──偶然の力を感じる物語でもあります。おふたりは“偶然が思いがけないところに連れていってくれた”という経験はありますか。
神尾 僕は芸能事務所のオーディションを受けてこの世界に入ったんですが、オーディションの時は本当に何もできなくて、受からないだろうと思っていたんです。でも、その芸能事務所の社長がたまたまオーディション担当者のデスクに置かれていた僕の履歴書を見ることになって。それで、「こいつ所属させる」と言ってくれたんです。
桜田 へぇ!
神尾 当時僕はサッカー部で、坊主が原則だったんです。だから履歴書の写真は坊主の伸びかけみたいな頭で写ったものだったんですが(笑)、その芸能事務所の社長としては逆にそれが良かったみたいです。
桜田 私は犬との出会いかな。たまたま入ったお店で、入ってきたばかりの子犬がお披露目される瞬間に立ち会うことができたんです。ひと目見た瞬間に心臓を持っていかれました。抱っこさせてもらったら、その子との暮らしがはっきりと想像できて。あれは偶然が起こした奇跡的な出会いだったなと思います。