FLYING POSTMAN PRESS

宮川大聖が語る最新作『Little Riot』

挫折の中で書いた前作から1年半
己の限界から先へと踏み出す

 10月より7都市を巡る全国ツアー<宮川大聖 LIVE TOUR 2024「BLACKOUT」>を敢行中の宮川大聖が、『光/Sparkling Love』から約1年半ぶりとなるミニアルバム『Little Riot』を11月6日にリリースする。

 “音で暴れたい”という気持ちで制作に向かったという本作には、それぞれ異なる音色をまとった全6曲が収録。新曲として収録された『UNLIMITED』は、前作『光』の続きとも言える曲だという。音楽で初めて味わった挫折の中で求めた救いの光、そして、自らの限界に抗い、さらに先へと進もうとする現在…。宮川自身の1年半が詰め込まれたようなこの1枚について、詳しく話を聞いた。

ヘアメイク/小林麗子(dot)
スタイリスト/三島和也(Tatanca)
取材・文/俵本美奈



“音で暴れる!”から生まれた『Little Riot』

──まずは約1年半ぶりのリリースとなるミニアルバム『Little Riot』について、タイトルに込められた意味から聞かせてください。

宮川 今回は1年半ぶりのリリースということで久しぶりに音で暴れたいなという気持ちがあって、“Riot”というワードを入れたいと自分の中でずっと考えていたんです。そこに、ミニアルバムなので“Little”を付けて、“Little Riot”にしました。これまでいろんなジャンルの曲を歌ってきましたが、また新たなジャンルの曲も取り入れた、いろんな楽しみ方ができるアルバムにしたいなと思って制作しました。実際は自分が思っていた以上に色とりどりの楽曲が揃って、音で暴れるということを体現できたなと感じています。

──1曲目には新曲『Elysium』。こちらは作詞作曲をボカロPの不眠症さんがされています。

宮川 僕自身、不眠症さんが作るサウンドにすごく惹かれていて、中でもジャジーなサウンドがかっこいいなという印象だったので、そういうテイストの曲をぜひ書いていただきたいとお願いしたんです。いただいたデモが、自分が想像していたクオリティを遙かに超えためちゃくちゃかっこいい音源で、さらに制作のモチベーションが上がりました。

──『Elysium』が1曲目の始まりから音で攻めていく感じがとても良かったです。

宮川 今回曲順にもかなりこだわっていて、『Elysium』はやっぱり『Little Riot』を楽しむ上で、いちばん入り口にふさわしい曲かなと思ったので1曲目に入れました。

──2曲目に『ユートピア』、そして『Sparkling Love』と続き、次に新曲『ナイトステップ』です。こちらは作曲をMori Zentaroさんが担当されています。

宮川 Mori Zentaroさんは過去に2曲(『Null』『蒼い夜』)でご一緒させていただいていて、僕自身Moriさんの楽曲がすごく好きなので今回もお願いさせていただきました。ただ、『ナイトステップ』が届いた時は、これまであまり自分が通ってこなかった雰囲気の楽曲だったので、正直戸惑ったというか。

──どうやって歌おうか、みたいな?

宮川 そうです、自分が声を乗せて完成した音源のビジョンがまったく見えなくて。そこで、いただいたデモ音源を何度も繰り返し聴いて、Moriさんがどのニュアンスを大事にしているかを自分の中で解釈していきました。自分がデモを作る時も、大事にしたい部分は歌い方を変えたり、その部分だけちょっと歌詞っぽい言葉を入れたりするんです。だからそうしたニュアンスを読み取って、そこはできるだけ尊重して崩さないようにしようと思いました。レコーディングにはMoriさんも来てくださって、ここをこう歌うともっとかっこよくなるよと教えていただいたり、ご本人にディレクションをしていただきました。

──宮川さんの声が乗った『ナイトステップ』について、Moriさんから何か言葉はかけられましたか?

宮川 ありがたいことにお褒めの言葉をいただきました。レコーディングが進んでいくにつれてMoriさんチームもどんどんノリノリのムードになって、「デモ音源にはなかった音も入れてみよう」とか「このコーラスを入れたらいいんじゃないか」とか、逆に「ここの音はあえて外しちゃおう」といったやり取りもあって。とても刺激的な空間でした。

──では5曲目の『UNLIMITED』は? こちらは作詞作曲を宮川さんが手がけられています。

宮川 『UNLIMITED』は僕がストックしている音源から再発掘した曲のひとつです。自分で作詞作曲するとなった時に、過去のリリース曲を全部聴き返して、リリースしていない自分の中でボツになった曲も聴き返していきました。なぜボツになったのか、何が足りなかったのかなどを考えながらストックしてある音源を探す中で、“なんだこの曲、めちゃめちゃかっこいいな”となったのが、『UNLIMITED』だったんです。作った当時はあまり自分の好みではなかったというか、おそらく自信がなくてお蔵入りになったんだと思うのですが、久しぶりに聴いた時に“『Little Riot』にぴったりじゃん!”と思って。重厚感のあるラップが特徴で、サビになると突然疾走感をまとうところが面白く、音で暴れるというテーマに沿っているなと思いました。

──まさに出るタイミングを待っていた曲…そんなことってあるんですね。

宮川 曲を作る時って、クリエイターモードのスイッチが入っているので、どんどん追求してしまうんです。凝り性なので、ここはもっと良くなるんじゃないか、まだ手の施しようがあるんじゃないかと思って完成に至らないことがあって。

──そんな宮川さんがどこで完成のジャッジをするのかも気になります。

宮川 今自分にできる最大限を出してはいるので、その最大限を出せた時点でとりあえずオッケーにしています。でも、“明日はもっといい曲が書けるんだろうな”という感覚で作業を終えるので、「完成」とはならないんですよね。だから、「オッケー」という感じ(笑)

──それ、常にモヤモヤを抱えていて苦しいですね。

宮川 苦しんでます(笑)。でも自信が持てないまま出して、ライブで何度も歌っていくうちに曲が成長していくこともあって。改めて聴くと“自分ってこんなに真っ直ぐな歌を書けたんだ”と感動することもあります。当時は真っ直ぐ過ぎてつまらないと思っていた歌詞が、その真っ直ぐさも大事だったんだなと感じたり。

──そうなんですね。凝り性なのは昔からですか?

宮川 昔からです。でも何かを作るというのが好きで、苦しいよりもやっぱり楽しいが勝っちゃうんです。