FLYING POSTMAN PRESS

にしな、次ツアーに向ける思い

コンプレックスを抱えながら
みんなで開放し合う空間にしたい

 9月4日に新曲『plum』を配信し、11月に5都市6公演の<ZEPP TOUR 2024「SUPER COMPLEX」>を回るにしな。ツアータイトルにある<SUPER COMPLEX>は、化学用語で「ミトコンドリアの呼吸連鎖」を意味し、実は生きる上でとても大切なものを指すのだとか。「それぞれが抱えてきた劣等感をさらけ出しながら開放し合いたい」と話す次回ツアーへの思いなどを聞いたインタビュー。

 さらに、ワクワクするようなアイデアが次々と飛び出すにしなワールドが、どんなカルチャーから影響されてきたのかについても聞いた。

スタイリング:hao ヘアスタイリング&メイクアップ:Hiroki Eguchi
衣装協力:ジャケット 66000円(G.V.G.V / k3 OFFICE 03-5784-1806) そのほか スタイリスト私物
取材・文/俵本美奈



新キャラは“プラムになったにしな”!?

──9月4日に配信された新曲『plum』の制作の話から聞かせてください。

にしな 最初は私の『FRIDAY KIDS CHINA TOWN』という曲のコードを弾いているうちに何かノリのいい曲が浮かびそうだなというところからスタートしました。ジャスティン・ビーバーの『Peaches』って曲があると思うんですが、ピーチは調べるとスラングで“素敵な人”みたいな意味があって。桃は全部甘くて素敵な人なんだと思うと人のようにも感じて、そこに小さい頃からプラムを食べる時になんでタネのところや皮の周りは酸っぱいんだろうと思っていた疑問が繋がってきて。そこからプラムを擬人化して曲を作ろうと思いました。官能的な感じだったりちょっとひねくれている感じに聴こえる楽曲に仕上がって、素敵じゃないところも自分だし、そういうところも愛してほしいし、愛されるべきという気持ちを根底に書いた曲だったなと、今振り返って思っています。

──桃を選ばずプラムというところにもにしなさんらしさを感じます。編曲にはYaffleさんが入られていますよね。

にしな アレンジャーさんは一人ひとりにカラーがあって、その方によって違うなと毎回感じるんですが、Yaffleさんは私の中でアレンジがすごく素敵で、特に引き算…メロディーや歌う人の声を引き立たせるアレンジがすごく上手だなと思っていて。それって抜くところをちゃんと抜かないと出てこない部分かなと思うんです。今回の楽曲もお願いして上がってきたものを聴いた時に、“わ! ぴったり!”としっくりくる感じがあって、やっぱり天才だなと思いました。

──『plum』のMVもシンプルでおしゃれでありながら、あっと驚く展開があって素敵でした。

にしな MVは江田明里さんに監督をお願いしたのですが、曲とは対照的に映像はシンプルでもいいのかなと思って相談させてもらって。江田さんから何パターンか提案をいただいて、ワンカットで撮りながら、私の顔が突然爆発してにしなのいびつさがどんどん出てキャラクターになっていくという面白い映像にしていただきました。

──あのキャラクターは何者ですか!?

にしな あの子はなんだろう…“プラムになったにしな”なんですかね(笑)

──最近では7月にくじらさんの楽曲にボーカルとして参加した『あれが恋だったのかなfeat.にしな』だったり、ほかのアーティストさんと組む中で見られるにしなさんの色を感じるのも楽しいところです。

にしな くじらくんの曲は歌わせてもらっただけだったので一緒に制作するということはなかったのですが、まず楽曲をいただいた時にすごくいい曲だなと思いました。いただいたデモで歌っている声が良過ぎて、これを私が歌い替える必要はあるのかなというプレッシャーはあったのですが、「ぜひ」と言っていただいたので自分のできることをやろうという感じでした。くじらくんから出る曲はくじらくんからしか出ないし、自分が作り出せない音楽を歌わせてもらえるのはとても幸せなことだなと思っています。

──4月にNHK総合で放送された<tiny desk concerts>の藤井風さんの回にコーラスで参加されていた時も、にしなさんの声の存在感をしっかりと感じました。

にしな くじらくんに関しても風さんに関しても、こちらの良さをちゃんと引き出そうとしてくださっているというか。<tiny desk concerts>の時も風さんの舞台だけど、私やYo-Seaさんが引き立つようにしてくださっていたんじゃないかと思います。コラボさせていただく時って、やっぱり相手の音楽や人間性をリスペクトしないとなかなかハモらないというか、フィールしないなと思っていて。だからより音楽をハートで好きになれる感じがあるんです。向こうからの愛も伝わるし、その分自分も返したいと思いますし、そうした目に見えない感覚ややり取りがあると思います。