FLYING POSTMAN PRESS

TOOBOEの楽曲制作の裏側を覗く

緻密に作り込まれたTOOBOE作品は
徹底して向き合い続ける中で誕生する

 音楽クリエイター・johnが作詞・作曲・編曲・歌唱、さらにはイラストや映像をはじめとしたさまざまなクリエイティブ面まで手がけるソロプロジェクト・TOOBOE(トオボエ)。

 前作『痛いの痛いの飛んでいけ』は自身最速でMV1000万回再生を突破するなど、リリースごとに話題を集めるTOOBOEの楽曲制作の背景を、現在放送中のMBSドラマ特区『愛人転生 ―サレ妻は死んだ後に復讐する―』ED主題歌である『きれぇごと』を紐解きながら、深堀り。

 ひとり楽曲制作と向き合いながら期日ギリギリまで完成度を高める、徹底した物作りへの姿勢とともに、自身の音楽を通じてリスナーに伝えたい、音楽制作に込める今の思いが見えてきた。

取材・文:俵本美奈



原作から作品の本質をすくい上げていく

──新曲『きれぇごと』は、MBSドラマ特区『愛人転生 ―サレ妻は死んだ後に復讐する―』のED主題歌にもなっていて、復讐劇の最後にかかるイントロから痛快でかっこいいです。楽曲制作はどのようにされたのでしょうか。

TOOBOE 最近は提供曲なども含めて、依頼していただいてテーマをもらってから作ることが多かったので、その合間でふらっと書いて、『きれぇごと』の卵みたいなのが生まれていたんです。そこにこのドラマの話をいただいて、この曲なら合うんじゃないかなということで原作の転生する要素などを参考にしながらブラッシュアップして仕上げました。

──ほかにドラマに合わせて考えた部分はありますか?

TOOBOE 実写ドラマなので、『心臓』や『錠剤』のようなポップな音作りをし過ぎるときっと浮いてしまうと思ってアレンジはRED in BLUEのギターのぐっちさんに投げて。ちょっと生音のバンド感の強いアレンジにしてもらっています。あとは台詞の後ろでかかることを想定して、ミックスでボーカルを立たせたり、細かいところはドラマに合わせて調整しています。

──一方でカップリングの『プラスチック』はまた違うポップなテイストですが、こちらはどのように作られましたか?

TOOBOE カップリング曲はその時に好きなことを書くというやり方をしています。『プラスチック』のテーマとしては、今ネットを開くと暗いニュースとか辛いニュースが多くて気が滅入ることが増えているので、息がしづらいところから離れてちょっとひとりでゆっくりしたいなという感情からブラッシュアップして作りました。

──カップリングは、TOOBOEさんの今のモードがそのまま入っているんですね。

TOOBOE そうですね。カップリングにはその時々の感情や考えが入っていると思います。だいたいシングルのリリースが決まってからシングルとのバランスを考えて作る感じで、良いのが浮かべば入れるし、浮かばなければ入れないで配信しちゃいます。そこは自由な感じでやってます。

──ドラマの2話ではバーテンダーとしてカメオ出演もされていました。撮影はいかがでしたか?

TOOBOE すごい新鮮でしたね。MVの撮影とは違って、人と人の掛け合いが重要視されている感じがあって。僕は特に台詞とかはなくて、監督から言われたのは「カウンター席の俳優さんにかぶらないでね」というくらいで、バーテンダーのリアルさを頭の端で考えながら動いたりしていました。この先どこかの回でまたちらつく可能性はあるかもしれません(笑)

──ドラマきっかけで新しく入るファンもいらっしゃるでしょうね。

TOOBOE それはうれしいですね。ドラマを観る層のことは考えていて、今回ならドラマの雰囲気とかけ離れないようにMVを実写にしたり、逆にTVアニメ『チェンソーマン』の第4話エンディングテーマを担当させていただいた時はMVもアニメーションにしたり。主題歌から新規で入った人が通りやすい道を作ることは考えています。

──MVについても聞かせてください。

TOOBOE 『きれぇごと』は曲に勢いがあってノリもいいので、ゲーセンというロケーションでどれだけ賑やかに遊べるかみたいなのをやってみました。アイデアはだいたいいつも事務所のスタッフも含めてみんなでいろんなMVをモニターに再生しながら、「こういうのありだよね」とか話しながら考えています。『きれぇごと』に関しては、「最近外で撮ることが多かったので室内で撮るのがいいよね」みたいなところからゲーセンがいいなという話になって、ゲーセンを探しました。

──そこまでは自分たちで構想されるんですね。

TOOBOE そうですね。その辺りまでは僕らでやって、制作会社の方や監督に「こういうところまでは思いついてるんですけど」と伝えて、企画にしてもらっています。考えるのはめちゃくちゃ好きなので、世の中に新曲が出たら「この曲はこういうところがいいよね」とか「こういうところはあまり良くないよね」というのをみんなで考えて分析していますし、そうしたフィールドワーク的なことはずっとしていますね。