CINEMA
ハロウィンに観たいホラー映画
“怖いが楽しい”ティム・バートンの世界 斬新なファウンド・フッテージ・ホラー ハロウィンを盛り上げるホラー映画
ホラー映画が続々公開されるハロウィンの季節。なかでも注目の2本、ティム・バートンの最新作『ビートルジュース ビートルジュース』と、オーストラリア発ファウンド・フッテージ・ホラー『悪魔と夜ふかし』を紹介する。
ティム・バートン全身全“霊”の最新作 ハロウィンの夜、ビートルジュース降臨
『シザーハンズ』(1990)、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)、『ビッグ・フィッシュ』(2003)と、数々の名作を手がけてきたティム・バートン。ジャンルもSF、ファンタジー、伝記と幅広いが、ホラー・コメディもお手のものだ。とりわけ、『ビートルジュース』(1988)は“キモいがかわいい、怖いが楽しい”ティム・バートンの世界を満喫できる原点のひとつとして愛されている。その『ビートルジュース』の35年後を描く続編『ビートルジュース ビートルジュース』がハロウィンを前にお目見え。
推定年齢600歳、死後の世界で“人間怖がらせ屋” を営むビートルジュースを演じるのは前作に引き続き、マイケル・キートン。さらに、前作ではビートルジュースに見初められた少女、本作では娘を持つ母親となったリディアにウィノナ・ライダー、リディアの母・デリアにキャサリン・オハラと、オリジナルのキャストが続投。加えて、リディアの娘・アストリッドにNetflixオリジナルシリーズ『ウェンズデー』(2022)で脚光を浴びたジェナ・オルテガ。バラバラにされた体をホチキスで繋ぎ合わせて復活したビートルジュースの元妻・ドロレスにモニカ・ベルッチ。そのほか、リディアの婚約者・ローリーにジャスティン・セロー、ドロレスとともにビートルジュースを追うウルフにウィレム・デフォーと、多彩なキャストが集結している。
ハロウィンの夜にリディアの娘アストリッドが死後の世界へとさらわれ、リディアは結婚することを交換条件に、ビートルジュースに娘の奪還を依頼。死後の世界と人間界を股にかけたハチャメチャ大騒動が今、始まる――。全身全“霊”のティム・バートン・ワールドにどっぷり浸かりつつ、その果てなきイマジネーションに胸を躍らせたい。
point of view
第一にビジュアルが“らしい”。ティム・バートンのこだわりで、CGをほぼ使わずに作られた本作。クリーチャーもセットも衣装もすべて手作りの味があり、ポップでカラフル。それでいて不気味さとダークさも兼ね備え、視覚的に唯一無二のものとなっている。
キャラクターも“らしさ”全開だ。無邪気さと傷ついた心を併せ持ち、愛嬌があるのと同時に哀愁も漂わせる、それがティム・バートン作品のキャラクターの定番のあり方。本作にもそんなキャラクターが多数登場する…と言うより、そんなキャラクターしか出てこない。歪さが魅力となったキャラクターたちが大集結し、意外とスケールの大きいドタバタ劇を繰り広げる本作には、“愛すべき変人たちのアベンジャーズ”的な楽しさがある。
もはや大御所のティム・バートンだが、22本目の監督作は初期衝動に満ちている。多少構成が粗かろうが、悪ノリしていようが、そんなことはどうでもいい。今、またティム・バートンの初期衝動に触れられてただただうれしい。そう思える1本に仕上がっている。
『ビートルジュース ビートルジュース』
https://wwws.warnerbros.co.jp/beetlejuice
2024年/アメリカ/105分
監督 | ティム・バートン |
---|---|
出演 | マイケル・キートン ウィノナ・ライダー キャサリン・オハラ ジャスティン・セロー モニカ・ベルッチ ジェナ・オルテガ ウィレム・デフォー ほか |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
※9月27日(金)より全国公開
©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
ハロウィンの夜、史上最恐の放送事故 戦慄のオーストラリア発ホラー
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(2022)を生んだオーストリア映画界から、またしても刺激的なホラー映画が生まれた。脚本・監督・編集を担ったのは、『モーガン・ブラザーズ』(2012)で注目されたコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。1970年代の深夜番組の収録現場を舞台に、生放送中に起きた惨劇をファウンド・フッテージ・ホラー(※怪異に見舞われた撮影者が残した映像の体裁をとるホラー)スタイルで描き出す。
深夜番組の司会者の主人公を演じるのは、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)のポルカドットマン役で知られるデヴィッド・ダストマルチャン。『ブギーマン』(2023)などのホラー映画でも独特の存在感を放ってきた俳優が、深夜番組司会者の可笑しみと哀しみ、さらには野心と狂気を鮮烈に表現している。
ハロウィンの夜、ある深夜番組が全米を震撼させた――。ポルターガイストや悪魔憑きといった超常現象の波状攻撃に息も絶え絶え、クライマックスを迎える頃にはノックアウト寸前に。オーストラリア発ホラーが、ハロウィンに浮かれる日本の映画ファンを震え上がらせる。
point of view
ハロウィンの夜にオカルトライブショーを実施するという、いかにも深夜番組らしいキワドイ設定がいい。その上、番組のゲストとして登場するのは霊能力者や超常現象懐疑論者、超心理学者、悪魔憑きの少女と、ヤバイ匂いがプンプンする人たちばかり。予想は違わず、最初から最後までヤバいことしか起こらない。
演出がまたいい。『エクソシスト』(1973)、『キャリー』(1976)などに影響を受けたというコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。クラシック・ホラーの名作にあるような大胆な発想、斬新なカメラワーク、おぞましくも美しい映像の質感が本作にはある。加えて、ファウンド・フッテージ・ホラーのスタイルを選んだのが大正解。まさに深夜番組の観覧者のひとりとして、目の前で次々と起こる超常現象を目撃しているような気分に。その臨場感が恐怖をさらに増幅させている。
ハロウィンの夜を舞台にしたホラー映画は数多く存在する。新しいものは生まれにくくなっているのが現状だが、本作にはオリジナリティがあり、新しいと感じられる。ハロウィン・ホラーの新たな可能性を示す1本がここに。
『悪魔と夜ふかし』
2023年/オーストラリア/93分/PG-12
監督・脚本・編集 | コリン・ケアンズ キャメロン・ケアンズ |
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出演 | デヴィッド・ダストマルチャン ローラ・ゴードン フェイザル・バジ イアン・ブリス イングリット・トレリ リース・アウテーリ ほか |
配給 | ギャガ |
※10月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国順次公開
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