CINEMASPECIAL ISSUE
奥野瑛太が語る『心平、』と俳優業
わかった気にならないことが大事
──FLYING POSTMAN PRESSは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>をコンセプトに展開しています。映画やドラマを送る側にいる奥野さんは、創作する上で何を大切にしていますか。
奥野 創作していないって思っています(笑)。僕自身が「創作している」と勘違いしてしまうことが危ういなと。わかった気になるのは楽でしょうけど。日々何かを無自覚に摂取していて、それがひょんなことで表に見て取れて、ある作品にとってはたまたま良い影響があった。「はぁ、良かった〜」くらいです。多分できたと思ってもダメだろうし、わかった気になっちゃうのも危険でしょうし、創作しているっていう意識はもってのほかかもしれません。言葉ひとつとってもそういう感覚でいたいです。普段口にする言葉も、台本で見る言葉も今このインタビューで言っている言葉も、本当に発している通りに他人と共有できているかわからないじゃないですか。その余白が好きです。
──いつまでもわかった気にならないことが大切なんですね。
奥野 そうなのかなと思います。演じながらわかった気になって、「ここは伝わりましたね。じゃあ次の段階に行きます」みたいな感じで積み上げていくと、積み木が崩れるのを待つだけになってしまうというか、そんな単純なことじゃない気がしています。人はもっともっと複雑なことを普段何気なくやっていて、言葉とは別に身体はそれを知っていて、他人もそれを見ていろいろ気づいちゃうものだと。わかったふうに演じているとそれもバレていますからね(笑)。だから一つひとつと向き合い、ただただ充実させていく。それだけ淡々と続けたいとは思っているんですが、なかなか…ものすごく時間がかかることですし、まったく追いつかなくてよく焦っています。
──ずっと答えに辿り着かないからこそ、一生続けたくなる仕事なのでは?
奥野 どうでしょう…。心平は農家さんなのですが、僕の感覚では俳優業と農家さんは似ているところがあるなと。農家さんも、一瞬一瞬充実させている人たちが多いだろうから。僕もそのように仕事をしていけたらと思います。
奥野瑛太(おくの えいた)
1986年生まれ、北海道出身。近年の主な出演作に映画『死体の人』(2022)、『こいびとのみつけかた』(2023)、『バジーノイズ』『碁盤斬り』『湖の女たち』(いずれも2024)、Disney +ドラマ『SHOGUN 将軍』(2024)、ドラマ『RoOT / ルート』(2024)などがある
『心平、』
2023年/日本/105分
監督 | 山城達郎 |
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出演 | 奥野瑛太 芦原優愛 下元史朗 ほか |
配給 | インターフィルム |
※8月17日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開
©冒険王/山城達郎