FLYING POSTMAN PRESS

あさぎーにょ、日常を彩る魔法の言葉

発信することで知った、“自分の好き”

──あさぎーにょさんのポップな世界は、どんなものがルーツになっていますか? 例えば映画だったり…。

あさぎーにょ それがあまりないんです。自分の世界ができあがっていった過程のことを言うと、ファンの方が見つけてくれたところが大きいなと思います。もともとはそれほど「個性がある」と言われるほうではなかったんです。でも8年ほど前にYouTubeやSNSの発信を始めると、みんなから「へんてこだよね」とか「ポップだよね」というコメントをもらうようになって、自分にはそういうところがあるんだと教えてもらって。

──ファンの方からのフィードバックで気づいていったと。

あさぎーにょ みんなに自分のことを伝える時に、どうしてこれが好きなのかとか、どんな気持ちでこれを選んだのかなど自分の気持ちをアウトプットしていくと、私はこういう性格だからこれが好きなんだとか、こういう信念があるからこれを選ぶんだということが明確になってきました。「カラフルなものが好きだね」と言われて、「確かにこの色は好きだけど、こういう色は好きではないんだ」と伝えるうちに、“あれ? どうしてこの色は違うんだろう? 私はやわらかいあたたかみのあるものが好きだから、ビビッドな色よりもやわらかい色味の組み合わせのほうが好きなのかもしれないな”とか、“ブレない軸を持っていたいという気持ちがあるから、ワントーンではなく少し差し色が入っているバランス感が好きなのかな”とか考えて。それが洋服の素材だったりインテリアの質感のバランスにも落とし込まれているのかなと思います。

──色味などは、ご自身の“好き”が見え始めてから意識して勉強されたのでしょうか。

あさぎーにょ いえ、それがまったくなんです。もともと古着だったりあたたかみのあるものはすごく好きで、やわらかい色味だったり色鮮やかなものも好きだったのですが、自分の中の“好き”が引き出されたというか、見つかって具体化されてきたのかもしれないです。だからアウトプットすることで、自分が人に何かを与えているようで実は私がめちゃくちゃ与えてもらっていたんです。

──インプットするために意識的にいろいろな作品に触れるということもないですか?

あさぎーにょ 意識的にしていることはあまりないですね。特定の好きなものというのもなくて。ただ、小学生の頃から携帯を持っていて、中学の頃からはmixiもやっていたSNSっ子なので、SNSからインプットしているのかもしれません。今はSNSは国内外問わず、TikTokやInstagramのリール、YouTubeショートや中国のSNSも、結構ずっと見ています。おすすめ投稿も見ているので、AIにかなりキュレーションされています(笑)。あと外国に行くことは大きなインプットになっています。


ワクワクの連鎖が個性を生んでいく

──<ワクワクを抱きしめよう>というPOPPYのコンセプトが生まれた経緯も聞かせてください。

あさぎーにょ このコンセプトが見つかったのは4年前くらいなんです。YouTuberやインフルエンサーとして活動していく中で、私は何をめざしてこの活動をしているのか、自分が迷ったり悩んだ時に立ち上がる力になる指針が欲しくて。

──自分が立ち返るためでもあるコンセプトですね。

あさぎーにょ もともと音楽がやりたくて上京して、自分が何がしたいのかわからなくなりながらも、上京してきたんだから一生懸命やるしかないし、甘ったれたことを言っちゃダメだって自分に鞭を打ってやっていた時期がありました。結構ネガティブにもなっていて。そんな時にテレビで観た『魔女の宅急便』で、主人公のキキが空を飛べなくなってしまった時に、相談した絵描きのウルスラが“そんな時はやめる。散歩をしたり、景色を見たり、昼寝をしたり、何もしない。そのうち急にやりたくなるんだよ”といったことを言っていて。そのセリフを聞いて涙が出ました。私も休んでもいいのかなって。

──キキにご自身が重なったんですね。

あさぎーにょ 単純なことなのですが、すごく感動して。そこでいったん立ち止まってみようと思ったんです。立ち止まった時に自分は何がしたくなるのかなと思ったら、家の近所の八百屋さんで初めて出会った野菜の食べ方を聞いたり、目の前の小さなことが楽しくなって。次はちょっと絵でも描こうかなって。もともと絵を描くのは好きだったので、自分で絵を描いてLINEスタンプを作って販売してみたりして。すると買ってくれる人もいて、そこからSNSやYouTubeも始めてみようかなと繋がって。

──次々と…。

あさぎーにょ はい、自分の好きなものが音楽しか見つけられていなかった頃は、がんばんなきゃと思って路上ライブをしたりしながらまったく余白がなかったのですが、YouTubeを始めて、少しずつお洋服にも興味が出てきて、ワクワクの連鎖が始まりました。どんなに小さくてもいいから目の前のワクワクを抱きしめたことによって、どんどん好きなものが増えていって、それを追いかけていくうちに自分らしさになったり個性と言われるものになっていきました。だから個性は後からついてくるものなのだと思っています。

──あさぎーにょさんご自身が、このコンセプトに救われた?

あさぎーにょ そうなんです。このコンセプトが見つかってから悩みは一気になくなって、小さなことでつまずいたとしても、このメッセージを届けるために必要なつまずきだったなと思えるようになりました。やるべきこと、やらなくていいことも明確になりました。そこでこれがみんなに伝えたいことだなと思ったんです。

──ファッション、YouTube、さまざまに広がる活動はすべてこのメッセージに繋がっているんですね。

あさぎーにょ 私のYouTubeは自分の些細な日常の切り取りですが、例えばクリスマスやバレンタインなど、ともすれば通り過ぎてしまいそうなイベントを自分が楽しんでいる姿を発信したり、たとえ失敗してもワクワクを抱きしめように繋がるような展開になればいいなと思いながら作っています。