CINEMA
4月公開:アカデミー賞関連作

4月に日本で公開される 第98回アカデミー賞受賞&ノミネート作
第98回アカデミー賞の授賞式が日本時間3月16日に開催された。『ワン・バトル・アフター・アナザー』が作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、編集賞、キャスティング賞の6冠、『罪人たち』が主演男優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞の4冠を達成。いずれもデジタル配信、ブルーレイ&DVD発売中、劇場で見逃した人はぜひチェックを。
この4月にも、今年の授賞式で注目を集めた作品が続々日本で公開を迎える。間もなく劇場で楽しめる第98回アカデミー賞受賞作&ノミネート作を紹介していく。

第98回アカデミー賞主演女優賞受賞 いかにして「ハムレット」が誕生したか
北アイルランド出身の作家マギー・オファーレルが著した同名小説を原作に、『ノマドランド』(2020)で第93回アカデミー賞において作品賞、監督賞を受賞したクロエ・ジャオが監督、製作総指揮を担ったほか、原作者と共同で脚本も手がけて映画化。第50回トロント国際映画祭において観客賞を受賞したほか、第98回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、キャスティング賞にノミネートされ、主演女優賞を受賞した。
物語の中心にあるのは、数々の傑作を世に残したウィリアム・シェイクスピアの妻アグネス。ウィリアム・シェイクスピアとはどんな息子であり、夫であり、父であったのか。いかにして不朽の名戯曲「ハムレット」が誕生したのか。ふたりの結婚生活を軸に、夫妻の息子ハムネットを巡る波乱に満ちた出来事を、アグネスの視点を通して描き出す。
主人公のアグネス・シェイクスピアを演じ、第98アカデミー賞主演女優賞を受賞したのは、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2022)などでも高く評価されるジェシー・バックリー。夫ウィリアム・シェイクスピアを演じるのは、『aftersun/アフターサン』(2022)、『異人たち』(2023)などで注目されたポール・メスカル。いずれもアイルランド出身、演技力に定評のあるふたりが、惹かれ合い、愛し合い、離れてはまた通じ合う男女を詩的に、かつ真実味をもって演じている。さらに、エミリー・ワトソン、ジョー・アルウィンら実力派たちが主要キャストに、スティーヴン・スピルバーグと『1917 命をかけた伝令』(2019)などを手がけるサム・メンデスが製作に名を連ねるなど、強力な布陣となった。
愛と悲しみが人間に、そして芸術に何をもたらすのか。変容していく愛の物語に胸を揺さぶられる。
point of view
演出、演技、脚本、音楽、撮影、衣装、美術、そのどれをとっても一級品で隙がない。なかでも、ウィリアム・シェイクスピアの妻アグネスを演じたジェシー・バックリーの演技は目を見張るものがある。アグネスは野性味に溢れ、自由奔放で好奇心旺盛、その魂が美しいと感じられる女性だ。彼女の自然との強い繋がりは神秘的と言っていいほど。そんな女性をジェシー・バックリーは全身全霊をかけて演じている。身体的にも精神的にも、すべてを注ぎ込んでいると感じられるその演技。アグネスとして物語に溶け込むあまり、鑑賞中は演技であることを忘れてしまうほどだった。ジェシー・バックリーが体現するアグネスは直感的、かつ理知的とも感じられる。その存在の仕方はクロエ・ジャオの直感性と繊細な観察眼を併せ持った演出とも相性が良く、スクリーンで化学反応が起きているように感じられた。
現実と物語、過去と現在、姿形のあるものとないもの、生と死。それらの境界線が消える瞬間を伝えたジェシー・バックリー。本作が代表作のひとつになることは間違いない。

『ハムネット』
2025年/イギリス/126分
| 監督 | クロエ・ジャオ |
|---|---|
| 脚本 | クロエ・ジャオ マギー・オファーレル |
| 出演 | ジェシー・バックリー ポール・メスカル エミリー・ワトソン ジョー・アルウィン ほか |
| 配給 | パルコ ユニバーサル映画 |
※4月10日(金)より全国公開
©2025 FOCUS FEATURES LLC.

ヒュー・ジャックマン×ケイト・ハドソン 歌まねミュージシャン夫婦の感動の実話
アメリカの国民的シンガーソングライター、ニール・ダイアモンド。そのトリビュートバンドを結成し、人気を博した実在のミュージシャン夫婦に着想を得て、彼らの成功と挫折、再起の道のりを、「スウィート・キャロライン」をはじめとするニール・ダイアモンドの名曲の数々と共に描き出す。
監督と脚本を務めたのは、『ハッスル&フロウ』(2005)や『ブラック・スネーク・モーン』(2006)などを手がけるクレイグ・ブリュワー。ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012)で第85回アカデミー賞において主演男優賞にノミネートされたヒュー・ジャックマン、『あの頃ペニー・レインと』(2000)で第73回アカデミー賞において助演女優賞にノミネートされたケイト・ハドソンが初共演を果たし、主人公のミュージシャン夫婦、マイクとクレアを情熱的に演じている。ケイト・ハドソンは本作の演技が高く評価され、第98回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。
戦争で受けたトラウマとアルコール依存症を乗り越えた先で、ついに成功を収めた男と、彼と固い絆で結ばれた女。つまずいて転んでも必死に立ち上がり、愛と夢と互いを信じ続けた夫婦の姿に胸が熱くなる。
point of view
クレア役のケイト・ハドソンがキャリアハイの演技を披露している。第一に、これほどの歌唱力があったとは。その歌声には人生の経験が乗り、エモーショナルで心に響くものになっている。ミュージシャンとしての成功を夢見ながら、ふたりの子を持つ女性として日々の暮らしに追われるクレア。ケイト・ハドソンは長年の苦労がその容姿に、言動に見て取れる中年女性をリアルに体現している。クレアの悲しみ、胸の痛み、情け深さ、強さが伝わってきて、心を動かされ、魅了された。とりわけ、クライマックスのソロ歌唱シーンは見事。そこで彼女が響かせた歌声、浮かべた表情、吐き出した息がクレアの胸のうちを雄弁に物語っていた。アカデミー賞の演技部門にノミネートされたのは、『あの頃ペニー・レインと』以来のこと。改めて、演技者として圧倒的な魅力を示したケイト・ハドソンに拍手を送りたい。

『ソング・サング・ブルー』
https://gaga.ne.jp/song_sung_blue/
2025年/アメリカ/133分
| 監督・脚本 | クレイグ・ブリュワー |
|---|---|
| 出演 | ヒュー・ジャックマン ケイト・ハドソン マイケル・インペリオリ エラ・アンダーソン キング・プリンセス ハドソン・ヘンズリー ほか |
| 配給 | ギャガ ユニバーサル映画 |
※4月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
©2025 Focus Features LLC. All rights reserved.

フランス発の手描きアニメーション映画 荒廃した世界で出会った少年少女の冒険
気候変動により荒廃した2075年の地球を舞台に、時を超えて空から降ってきた少年アルコと、荒廃した世界で生きる少女イリスが出会い、アルコが生きていた未来へと繋がる虹の道を探す旅に出る様子を手描きの2Dアニメーションで描き出す。
本作で長編監督デビューを果たしたのは、フランス出身の作家でアニメーターのウーゴ・ビアンヴニュ。“虹色のマントが空を切り裂き、光と水分が時空を開く”というイメージを核にスケッチからスタートして構想を固め、3年かけて絵コンテを作成。その後、フェリックス・ド・ジブリがそのイメージを言葉へと翻訳として脚本の形に。構想から完成まで5年の歳月をかけた本作は、その独創性が高く評価されて2025年アヌシー国際アニメーション映画祭でクリスタル賞(長編部門グランプリ)を受賞したほか、第98回アカデミー賞長編アニメーション賞にもノミネートされた。ナタリー・ポートマンがプロデュースを務めるだけではなく英語吹き替え版のボイスキャストも担うなど、本作の創造性を広く知らしめようとする映画人は多数。インディペンデント作品でありながら国際的な注目を集める作品となっている。
point of view
本作は手描きの2Dアニメーション作品であり、インディペンデント作品でもある。3DCGとフランチャイズを主軸とする作品が多数を占める現在、懐かしさと新しさの両方を同時に感じられるものとなっている。
ウーゴ・ビアンヴニュのアニメーションのスタイルには、さまざまなものが混在している。ヨーロッパのアニメーションらしく線は繊細で、日本のアニメーションを思わせるダイナミズムも備えている。キャラクターはシンプルに、背景は緻密に。自然現象は登場人物の感情を伝えるものとして描かれている。
アニメーションは“動き”だったと、改めて本作を観て思い至った。子どもたちの“動き”に、彼らが世界をどう見つめ、どう感じているのか、そのすべてが表れていた。普段、3DCG作品を多く観ている人たちにとっては、飛び込むのに少し勇気がいるかもしれない。でも、思いきって飛び込んだその先には、アニメーションの面白さが詰まった世界が待っている。アニメーションで“冒険する”ひとときを。

『ARCO/アルコ』
2025年/フランス/88分
| 監督・脚本 | ウーゴ・ビアンヴニュ |
|---|---|
| 脚本 | フェリックス・ド・ジブリ |
| 声の出演 | オスカー・トレサニーニ マーゴット・リンガード・オルドラ アルマ・ホドロフスキー スワン・アルロー ルイ・ガレル ヴィンセント・マケーニュ ウィリアム・レブギル ほか |
| 配給 | AMGエンタテインメント ハーク |
※4月24日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
