CINEMASPECIAL ISSUE
津田寛治が<俳優・津田寛治>役
計算ではなく、無意識でできればこそ

──<俳優・津田寛治>が数学者の役を演じることになり、マネージャー・九味星子(中村祐美子)の前で夢中になって数学の面白さを語るシーンがあります。話しながら飲み物を飲み、ほとんど台詞が聞こえないことがあり、非常にリアルな会話だと思いました。おそらく、話しながら飲む、というのは脚本のト書きにはないものですよね?
津田 書かれていなかったです。もうあれは無意識ですね。そう言えば以前、國村隼さんとご一緒した時に同じようなことを思ったことがあります。話しながら目をかいたりするのが本当にリアルだし、タイミングから何から完璧だなと思って國村さんにどうやっているのか聞いてみたんです。そうしたら、「いや、意識してやってないから。勘弁して」と(笑)。確かにそうなんですよね。全部を計算してやったら、それはもう意味をなさない、ただ余計なことになってしまう。若い頃は全部を計算し、めちゃくちゃ恰好いい芝居をしてやろうと思ってました。でも、それでは似て非なるものにしかならないと、いつしか気がついた。無意識でできればこそ、なんですよね。あのシーンは意識していなかったです。ただ、気持ち良く酔っている状態だということはあったかな。長年一緒にやっているマネージャーさん相手に、飲みながらリラックスしてしゃべっている。それぐらいでした。

──2.5次元の作品に<俳優・津田寛治>が出演し、主演のRENTO(一ノ瀬竜)と意見をぶつけ合うさまも印象的でした。どちらの意見にもうなずけるものがあって。
津田 そうなんですよね。RENTOの言っていることは意外と芯を突いているなと僕も思っていました。浅はかでも間違ってもいないと。むしろ、<俳優・津田寛治>の言っていることを聞いて、“何言っているんだ、こいつはまだまだ素人だな”と思ったりしたぐらいです。例えば、『本番こそいい練習』というRENTOの言葉は一理あると思いましたね。あと、ホン読みの時にRENTOだけが感情をまったく入れずに台詞を読む描写もありましたけど、実際にそういう奴がいたら、僕だったら“面白いな、こいつ”と思うでしょうね。“こいつが主役ってなんかいいな。この作品、面白くなるかも”って思うかもしれない。

──RENTOは、観客が喜んでくれたらそれが正解という考えの持ち主でもあります。
津田 それも正しいと思います。
──例えば、“受け手がどう思うか”を、出演作を選ぶ際の基準のひとつにするようなことは?
津田 それはまったくないです。僕はどんな役でも挑戦したいと思うんですよ。
──断ることはないですか。
津田 例えば、すごくいいホンでいい役なんだけど、これは自分がやらないほうがいいんじゃないかと思ったりすることはあります。それで実際に、「僕じゃないほうがいいと思いますよ」と、お返事したり。気持ちとしてはどの役でもやりたいものの、自分じゃないほうが作品のためだと思ったりすることはたまにあります。
──<俳優・津田寛治>はどの役も断らないですね。月に18本も出演作を掛け持ちしている、という描写もあります。
津田 <俳優・津田寛治>は芝居中毒になっているんですよね。芝居なしでは呼吸さえできない、みたいな状態なんだろうな。この人の芝居の仕方は危険だなって思いますね。やっぱり、準備期間は絶対に必要なんですよ。準備しないとクオリティが下がってしまう。尋常じゃない数の作品を縫っていくと、どうしても満足のいかないものを発表していく機会が増えてしまう。それを繰り返せば、もうそれでいいということになってしまうので。芝居中毒になっている自分に任せてどんどん仕事を決めていくというのは危険です。芝居好きと、芝居中毒とは、また違うものだということですね。

