FLYING POSTMAN PRESS

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
宇宙の果てで出会った唯一無二のバディ
互いの故郷のため、最後の賭けに挑む

 世界的ベストセラー小説を原作とした映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が3月20日(金・祝)より公開となる。物語の中心にいるのは、中学校の科学教師と小さな異星人。映画史に類を見ないバディに笑い、涙し、夢中になること間違いない。



80億人の命を懸けた一か八かの勝負

 原作は、映画『オデッセイ』(2015)の原作小説「火星の人」を著したアンディ・ウィアーによる同名ベストセラー小説。著者本人が刊行前に同小説の原稿をライアン・ゴズリングに送り、ゴズリングはその壮大な物語にたちまち魅了され、実写映画化を熱望。『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズ(2018~)の製作を手がけ、その手腕が高く評価されるクリエイターコンビ、フィル・ロード&クリストファー・ミラーの監督起用をスタジオに働きかけ、見事に実現させた。さらに、プロデューサーに『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズの立役者のひとりであるエイミー・パスカル、脚色に『オデッセイ』を手がけたドリュー・ゴダードと、一流のクリエイターたちが集結。ゴズリングは主演のほかプロデューサーも務め、プロジェクトの中心を担っている。

 未知の原因によって太陽エネルギーが奪われるという異常事態が発生。このままでは数十年で地球は凍りつき、全人類80億人は滅亡してしまう──。この未曾有の危機を回避しようと、世界中の叡智がエヴァ・ストラット(ザンドラ・ヒュラー)のもとに集結。調査を進めると、この現象は宇宙全体に及んでいたが、11.9 光年先にただひとつ無事な星があることを発見。人類に唯一残された道は宇宙船でその星へと向かい、謎を解明することだった。そんなヘイル・メアリー(※一か八かの意)プロジェクトに半ば強制的に抜擢されたのは、中学の科学教師ライランド・グレース(ライアン・ゴズリング)。80億人の命を懸け、片道切符で宇宙へと送り出されたグレースは、同じく故郷の滅亡を阻止するためひとり宇宙をさまよう“小さく勇敢な異星人”ロッキーと出会う。科学を共通言語に意思疎通を成功させたグレースは、すべてが異なるロッキーとの間に揺るぎない信頼を築いていき、やがてふたりはかけがえのないバディになっていく。かつてない友情の先で、ふたりが辿り着いた答えとは──。


中学教師と異星人バディが宇宙を救う

 原作者のアンディ・ウィアーは本作を「世界を揺るがす結果を伴うバディムービー」と言い表す。言葉も常識も、生まれ育った星も異なるふたりが出会い、“故郷を救う”というひとつの共通項だけで固く結ばれていく。

 地球人を代表するのは、ライランド・グレース。中学校で子どもたちに科学を教える、ごく普通の人だ。グレースはスーパーヒーローでも宇宙飛行士でもない。ヒーロー願望があるわけでもないし、もともと勇敢というわけでもない。それでも彼は、半ば強引に送られた宇宙の果てで時間をかけて成長し、大きなことを成し遂げていく。彼ひとりの力だけでそこに辿り着けたわけではない。宇宙の果てで出会ったかけがえのないバディと共に歩みながら成長し、あきらめず挑み続けることになる。

 そのグレースのバディは、小さく勇敢な異星人のロッキー。ロッキーのビジュアルを想像しながら原作小説を楽しんだファンにとっても、“未知との遭遇”シーンには胸が躍るはず。詳しくは観てのお楽しみだが、グレース命名の“ロッキー”にふさわしい存在だということだけは伝えておきたい。

 グレースの得意分野は科学、ロッキーの得意分野はエンジニアリング。主にグレースが理論を立て、ロッキーがそれを形にしていく。ひとりでは、あるいはひとつの国家、ひとつの星では解決できないほど問題が大きい時には、力を合わせるしかない。ふたりはお互いに思いやり、共感し合い、足りない部分を補い合い、自分ひとりでは絶対に成し得なかったことを成していく。地球人と異星人のカルチャーギャップに笑いつつ、ふたりが辿る友情の軌跡には感涙必至。自分とは異なる存在を受け入れ、心を開き、力を合わせることの大切さが胸に沁みる。


物語る映像と音楽──圧巻の映画体験

 前述の通り、本作の主題は“異なるふたりの友情”にある。その友情を物語るための手段として映像、音楽がしっかりと機能している。いずれもアカデミー賞受賞経験のある撮影監督グレイグ・フレイザーと、VFXスーパーバイザーのポール・ランバートは、前提がファンタジーだとしても、アプローチは感情的にも物理的にもリアルであろうと心がけたという。観る側が主人公のグレースに感情的に同調できるよう、大規模な宇宙映画としては珍しく、手持ちのシングルカメラを採用し、俳優との近しさを重視して撮影。さらに、物理的によりリアルになるようにとグリーンスクリーンの代わりにLED背景を採用。同時にスペクタクルとのバランスも備えるためにIMAX形式での撮影を選択した。物語の世界が視界の外側まで広がり、物語の中に入り込んでいるかのように感じられるはずだ。

 アカデミー賞ノミネート経験のある作曲家ダニエル・ペンバートンが手がけた劇伴も印象的なものとなっている。ミニマルな音から始まり、グレースがロッキーに出会い、世界が広がっていくのに合わせ、音楽も有機的に広がっていく。宇宙規模の脈動と呼応するようにリズムを刻んでいくさまも面白い。

 「こんな映画には一生に一度しか出会えない。最高の映画体験を約束する」と、ライアン・ゴズリングは語る。ぜひ鑑賞の環境が整った劇場へ。そして、一生忘れられない映画体験を。


『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

https://projecthm.movie

2026年/アメリカ/157分

監督 フィル・ロード&クリストファー・ミラー
原作 アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(早川書房刊)
出演 ライアン・ゴズリング ザンドラ・ヒュラー ジェームズ・オルティス ライオネル・ボイス ケン・レオン ミラーナ・ヴァイントゥルーブ プリヤ・カンサラ ほか
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

※3月20日(金・祝)より全国公開